住宅ローンを利用してマイホームを購入した場合、納めたその年の所得税から一定額が税額控除される住宅ローン控除が利用できます。この制度を利用するためには、初年度のみ確定申告が必要となります。

この記事では、税理士の植野正子さん監修のもと、確定申告で住宅ローン控除を受ける方法を解説します。これから住宅ローンの借り入れを検討している人は、ぜひ参考にしてください。

この記事の監修者

植野 正子(うえの まさこ)

税理士。植野正子 税理士事務所代表。税理士業と並行して執筆活動も活発に行なっており、著書に『個人事業の始め方 手順と届出・経理』『これだけは知っておきたい「副業」の基本と常識』(ともにぱる出版)など多数。

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住宅ローン控除とは

住宅ローン控除とは正式名称を「住宅借入金等特別控除」といい、国の制度としては「住宅ローン減税」と呼ばれることもあります。

合計所得額2,000万円以下の人が住宅ローンを利用した際、住宅ローンの年末残高に対して0.7%が所得税から控除され、納めた税金の一部が戻ってくるしくみです。また、所得税から還付しきれなかった分の控除は住民税からも差し引くことが可能です。

住宅ローン控除制度は2022年4月に改正され、控除期間や借入限度額が変更されました。改正後の概要は、以下のとおりです。

〈表〉住宅ローン控除制度の概要1)2)

控除割合住宅ローン残高の0.7%
適用期限2025年まで
借入限度額
※入居時期が令和4年~5年の場合
新築など
(住宅の環境性能に応じて、3,000万円~5,000万円)
中古
(住宅の環境性能に応じて、2,000万円、3,000万円)
控除期間新築住宅は原則13年、既存住宅は10年

なお、現在すでに住宅ローン控除の適用を受けている人は、これまでの控除率や限度額が継続されます。

確定申告で住宅ローン控除を受けるための手順

画像: 画像:iStock.com/Promo_Link

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住宅ローンの借り入れを行った初年度には、確定申告が必要です。確定申告で住宅ローン控除を受けるための流れを以下の4ステップで解説します。

それぞれ詳しく解説します。

STEP①必要書類を準備する

住宅ローン控除の確定申告手続きには、以下の6つの書類が必要になります3)。不足のないように準備することが大切です。

A:マイナンバーが記載されている書類

マイナンバーカードか通知カード(2020年5月25日以降に発行される場合は、個人番号通知書)を準備しましょう。これらが手元にない場合、マイナンバー記載の住民票の写し、もしくは住民票記載事項証明書で代用可能です。

B:住宅借入金等特別控除額の計算証明書

「その年分の確定申告書の書式」や控除額を計算するための書式で税務署に備え付けられています。国税庁のウェブサイトからもダウンロードすることができます。

C:源泉徴収票(給与所得者の場合)

給与所得者は住宅を購入した年の源泉徴収票を会社から取り寄せましょう。

D:土地・家屋の登記簿謄本

取得した土地や家屋は法務局に登記されているので、最寄りの法務局出張所に申請して入手しましょう。

E:不動産売買契約書や工事請負契約書

住宅を購入した場合は不動産売買契約書、新築工事やリフォーム工事の場合は工事請負契約書の写しを準備しておきましょう。

F:住宅取得資金にかかる借入金の年末残高証明書

住宅ローンを借り入れた金融機関から送られてくる証明書で、年末時点の住宅ローンの残高が記載されています。そのほか必要に応じて認定長期優良住宅、認定低炭素住宅、一定の耐震基準を満たす中古住宅は、それを証明する書類のコピーが必要になります。

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STEP②住宅ローンの控除額を計算する

「住宅借入金等特別控除」の額は、住宅ローンの年末残高合計額をベースに、確定申告する年分を計算します。

2022年1月1日以降の新築のローン減税の条件は「住宅ローンの年末残高に対して0.7%減税」かつ「控除期間13年間」です。その際の計算式は以下になります2)

住宅ローンの控除額 = 住宅ローンの年末残高(最高3,000万円) × 0.7%

減税分は所得税から差し引き、引ききれなかった分は住民税から差し引きます。ただし、住民税から減税できる金額には上限があり、所得税の課税総所得額などの5%(最高9.75万円)です。

STEP③確定申告書を提出する

画像: 画像:iStock.com/Chainarong Prasertthai

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確定申告書を作成し、税務署に提出しましょう。提出方法は郵送や手渡しだけでなく、e-Tax(国税電子申告・納税システム)でも手続きが可能です。

郵送の場合は、必要資料を管轄の税務署に送るだけです。なお、e-Taxを利用する場合は、マイナンバーカードを登録する必要があります。あらかじめ準備しておきましょう。

STEP④還付金が振り込まれる

還付金の振り込みは、おおむね確定申告をしてから2週間~2カ月後に行われます。e-Taxなら通常2~3週間、郵送や手渡しの場合は1~2カ月かかると想定しましょう。

振り込みまでの期間は一律ではなく、税務署での処理状況に左右されます。確定申告の最終期間の3月は繁忙期なので、できるだけ早めに申告を済ませておいたほうがいいでしょう。

なお、還付金が戻ってくるタイミングについて、以下の記事で詳しくご紹介しています。併せて確認してみてください。

【関連記事】確定申告の還付金はどのくらいで振り込まれる? 詳しくはコチラ

住宅ローン控除の適用条件とは

画像: 画像:iStock.com/mphillips007

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新築と中古の住宅では、住宅ローン控除の適用条件が異なります。以下に代表的な条件をまとめました4)5)

〈表〉新築・中古別住宅ローン控除の適用条件

住宅の種類適用条件
新築住宅・住宅取得後6カ月以内に入居し、引き続き居住している
・家屋の床面積(登記面積)が50㎡以上である
・床面積の1/2以上が、専ら自己の居住の用に供される1)
・控除を受ける年の合計所得金が2,000万円以下である
・住宅ローンの返済期間が10年以上である
・配偶者や特定の親族、特殊な関係のある法人からの取得でない
・前年、前々年に居住用財産を譲渡した場合の特例を利用していない
中古住宅中古住宅の場合は、新耐震基準に適合している(1982年以降建築のもの)

新築・中古に限らず、控除を受けるには上記以外の項目を含むすべての項目を満たしていなければなりません。詳しく知りたい人は、国税庁のウェブサイトを確認しましょう。

住宅ローン控除について覚えておきたい5つのポイント

画像: 画像:iStock.com/BrianAJackson

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住宅ローン控除の利用には確定申告が必要ですが、給与所得者の場合、2年目以降は会社の年末調整でも控除を受けることができます。ここでは、覚えておきたい5つのポイントをご紹介します。

それぞれ詳しく解説します。

①会社員なら2年目以降は確定申告が不要である

会社員の場合、2年目以降は住宅ローン控除を受けるための確定申告は不要です。年末調整の際に、会社側で手続きを行ってもらえます。

年末調整の時期になったら、税務署から届く書類や銀行の残高証明書など、必要書類を勤務先に提出しましょう。個人事業主など年末調整の対象外の人は、毎年確定申告を行わなければなりません6)

②借換えにも住宅ローン控除を適用できる

住宅ローンを途中で借換えた場合でも、条件を満たしていれば住宅ローン控除を申請可能です。借換え後に控除できる部分は、返済期間10年以上かつ、最初に借りた住宅ローンの返済のためだと明確にわかることが条件です。

たとえば、借換え前の返済期間も含めた控除期間が10年間で、6年目に借換えをした場合は、残り4年分の控除を受けられます7)

③「ふるさと納税」と併用する場合は控除の上限額に注意する

画像: 画像:iStock.com/pcess609

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住宅ローン控除と「ふるさと納税」を併用する場合、両制度の恩恵を十分に受けられない可能性があります。ふるさと納税は、好きな自治体に寄附した額に応じて住民税や所得税が控除され、返礼品までもらえる制度です8)

住民税の控除限度額は、課税総所得額の7%です。すでにふるさと納税で控除を受けていると、住宅ローンの控除額が減ってしまう恐れがあります2)

ふるさと納税と住宅ローン控除の併用を希望する人は、控除額が上限に達していないかを事前に確認しましょう。

なお、ふるさと納税については以下の記事で詳しく解説しています。興味のある人は併せて確認してみましょう。

【関連記事】ふるさと納税をするのに年末調整の手続きは必要ない!理由と正しい控除方法を解説

④条件を満たせば「すまい給付金」も利用できる

「すまい給付金」とは、消費税率の引き上げによる住宅取得者の負担を緩和するために創設された制度です。住宅ローン控除を受けている人でも、条件を満たしていればすまい給付金の給付対象となります。

申請を行うと、最大50万円の給付金を受け取ることが可能です。ただし、給付額は扶養家族の数などによっても変わります。

給付額はすまい給付金のウェブサイトで試算が可能なので、条件を満たしている人は確認してみてくだい9)

⑤手続きを忘れてもあとから還付申告ができる

もし住宅ローン控除の手続きを忘れてしまった場合は、どうすればいいのでしょうか。確定申告を忘れてしまった場合でも、申告する年分の翌年1月1日~5年後までに申告をすれば、控除が受けられます10)

あとから申請する場合でも、e-Taxでの申告が可能です。手続きを忘れてしまっても、焦らず対処しましょう。

確定申告をして住宅ローン控除を受けよう

画像: 画像:iStock.com/ake1150sb

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住宅ローンの残高は、所得から控除することができます。初年度のみ確定申告が必要ですが、翌年以降は年末調整で手続きを済ませられます。

ただし、ふるさと納税と併用する場合は、メリットを最大限享受できない可能性があるので、注意が必要です。住宅ローンと確定申告のポイントを押さえ、効果的に利用しましょう。

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