ふるさと納税を始めようか迷っている人の中には、具体的なメリットや注意すべきデメリットを知りたいという人もいるのではないでしょうか。

そこでこの記事では、ファイナンシャルプランナー・荒木千秋さん監修のもと、ふるさと納税のメリットとデメリットを詳しくご紹介します。併せて、特にどのような人がふるさと納税の恩恵を受けることができるのかなども見ていきましょう。

※この記事は2022年11月4日に公開した内容を最新情報に更新しています。

この記事の監修者

荒木 千秋(あらき ちあき)

ファイナンシャルプランナー。荒木FP事務所代表。10年間の銀行勤務を経て独立。これからの女性が人生を楽しむためには「お金・投資」との付き合い方を変えなければならないと確信し、現在は、大学講師、セミナー、ウェブ執筆、個別相談等を行っている。 著書に『「不安なのにな〜んにもしてない」女子のお金入門』(講談社)がある。

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2024年のふるさと納税に関するニュース

まずは、ふるさと納税に関する最新ニュースをご紹介します。

2023年度はふるさと納税の寄附金が1兆円超え

最近のふるさと納税に関するニュースとして、2023年度の「ふるさと納税」で集まった寄附金総額はおよそ1兆1,175億円。初めて1兆円を超えたことが報告されています1)

また、2023年にふるさと納税を利用して2024年度の住民税の控除を受けた人は約1,000万人にものぼりました。

2025年10月からふるさと納税のウェブサイトでの「ポイント還元」がなくなる

ふるさと納税に関連して、2025年10月からは、自治体が利用者にポイントを付与するふるさと納税のウェブサイトで寄附を募ることが禁止になります2)。自治体がふるさと納税のウェブサイトに支払う手数料の一部がポイントの原資になっており、自治体が本来受け取れる寄附金額が得られていないとみて、総務省が「ポイント還元」を禁止とするルール改正に踏み切ったとされています。

なお、クレジットカード納付の際のカードのポイント付与は継続される予定とのこと。新しい制度のもとで自治体と寄附者にどういった影響があらわれるのか、今後注目を集めそうです。

ふるさと納税とは、応援したい自治体に寄附できる制度

画像: 画像:iStock.com/AH86

画像:iStock.com/AH86

ふるさと納税は、生まれ故郷や応援したい自治体など、好きな自治体に寄附ができる制度です3)。寄附先の自治体を自由に選べるため、必ずしも出身地や居住したことのある地域である必要はありません。

最低限の条件として「自己負担金の2,000円」を支払う必要がありますが、ふるさと納税の寄附金のうち、その2,000円を超える金額については、所得税の還付や住民税の控除を受けられます

つまり「寄附金額−2,000円」分の税金が軽減されます。

また、寄附する側が寄附金の使い道を指定できたり、寄附先からの返礼品として自治体の名産品などをもらえたりするのも、ふるさと納税ならではの大きな特徴です。

〈図〉ふるさと納税のしくみ

画像: ふるさと納税とは、応援したい自治体に寄附できる制度

なお、2023年10月のルール変更・改正より、自治体の必要経費に含まれる項目が増え、返礼品は地場産品に限ることになりました。また、インターネットなどでの広告に関して、“割引”や“増量”など、返礼品を誇張したり、寄附者を誘引したりするような宣伝方法への規制がさらに厳しくなりました。さらに、2024年10月からは返礼品として宿泊券を提供する際、1泊5万円/人の上限が適用されるように。ふるさと納税はあくまで自治体に寄附を行う制度であることを今一度認識させることがルール変更・改正の主旨です。

ふるさと納税は年間を通じて受け付けており、その年の申込期限は12月31日までです。ふるさと納税の申込期限については、以下の記事で詳しく解説しています。併せて読んでみてください。

【関連記事】ふるさと納税の申込期限について、詳細はコチラ

ふるさと納税の5つのメリット

画像1: 画像:iStock.com/YusukeIde

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ここからは、ふるさと納税の5つのメリットについて詳しく見ていきましょう3)

①所得税の還付と住民税の控除を受けられる

画像2: 画像:iStock.com/YusukeIde

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ふるさと納税の寄附金は、自分の控除の上限額までに収めることで、合計寄附額から2,000円を差し引いた金額について所得税の還付や住民税の控除を受けられます。自己負担分の2,000円を除いて、金銭的な負担がかからない点もメリットといえるでしょう。

なお、控除の上限額は個人の収入や家族構成によって異なるため、あらかじめシミュレーションしておくことが大切です4)

②寄附する自治体を自分で選べる

前述したように、ふるさと納税では、寄附する自治体を自由に選べます。そのため、応援したい自治体がある人にとってはメリットの大きい制度となっています。

自分の生まれ育った地域はもちろん、好きな地域や災害復興を支援したい自治体などを、ふるさと納税を通じて応援することができます。

③寄附した自治体から返礼品がもらえる

画像: 画像:iStock.com/dontree_m

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ふるさと納税で寄附した自治体からは、その地域の名産品などの返礼品がもらえます。

たとえば、ブランド米や銘柄牛、名物料理の食べ比べセットや産地直送の野菜や果物などの返礼品を、自己負担額の2,000円で受け取ることが可能です(寄附金額に応じてもらえる返礼品は異なります)。

返礼品の内容も自治体によって様々なものが用意されており、食品以外にも工芸品や日用品などがあります。

返礼品の中に欲しいものがある人なら、所得税の還付や住民税の控除を受けつつお得に手に入れられるため、メリットも大きく感じられるでしょう。

④寄附金の使い道を指定できる

ふるさと納税では、自分の寄附金の用途を指定することもできます。ふるさと納税の寄附金の使い道は、その自治体の環境保護や文化遺産の保護、子育て支援や福祉支援など様々です。

ふるさと納税の寄附先に迷った時は、気になる自治体の寄附金の使い道をチェックしてみましょう。

⑤クレジットカードのポイントが貯まる場合がある

ふるさと納税の各種ウェブサイトでは、寄附金の支払いにクレジットカードの利用が可能です。そのため、契約しているクレジットカードによっては寄附額に応じてポイントを貯められる場合があります

ふるさと納税のウェブサイトによっては、指定のクレジットカードを使うことでよりお得にポイントが貯まる場合もあるので、気になる人はあらかじめ確認しておきましょう。

ふるさと納税を最大限に活用する方法

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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ここからは、ふるさと納税を利用する上で知っておくべき情報や、自分にぴったりな返礼品の選び方などをご紹介します。最大限、ふるさと納税を活用したいという人はぜひチェックしてください。

ワンストップ特例制度で確定申告の手間を省く

ふるさと納税の税金還付・控除の手続きの方法には「ワンストップ特例制度」というものがあります5)。この制度を利用すると、確定申告をしなくても控除の手続きを完了できます

寄附する自治体数が少ない人、通常なら確定申告を行わない人、またはこれまで確定申告をしたことのない人も、ワンストップ特例制度を選んだほうが手続きは簡単に感じるはずです。

なお、ワンストップ特例制度で申請したあと、医療費控除などのために確定申告をすると、ワンストップ特例制度の申請が無効になってしまうので、注意しましょう。

ワンストップ特例制度の手続き手順については以下の記事で解説していますので、併せてご覧ください。

【関連記事】ワンストップ特例制度の手続き手順について、詳細はコチラ

所得控除を受けるために、スケジュール管理に注意する

ふるさと納税の寄附金がその年の所得控除に反映されるためには、12月31日までに寄附を完了する必要があります。受領日は支払い方法によって異なる点に注意しましょう。

締め切り日を守るために、つぎの2点について確認しておきましょう。

【年末までに確認しておきたいこと】

  • 支払い方法の確認:クレジットカードや銀行振込、ペイメントサービスなど、支払い方法によって入金処理が遅れることがあるので、年末ぎりぎりに寄附する場合はクレジットカード決済がおすすめです。
  • 自治体の営業日確認:12月後半は自治体の対応が遅くなる可能性もあるので、問い合わせや発送スケジュールの確認が必要です。

ふるさと納税の各手続きの期限などについて、以下の記事で解説しているので併せてご確認ください。

【関連記事】ふるさと納税の各手続きの期限について、詳細はコチラ

世帯に合った返礼品を選ぶ

ふるさと納税の返礼品を選ぶ際には、支援したい自治体はもちろん、ライフスタイルや家族構成に合ったものを選ぶという視点もあるといいでしょう。

●一人暮らしの場合

一人暮らしの場合、あまり大量の食品を受け取っても消費しきれないことが多いので、量より質や利便性を重視するとよいでしょう。

(例)

  • 少量で質の高い食品:高級肉や海産物、旬のフルーツなど、少量で贅沢に楽しめるものを選ぶとよいでしょう。
  • 保存が効く食品:冷凍食品やレトルト食品、缶詰など保存が効くものも便利です。長期間楽しめる点がポイントです。
  • 日用品や家電:調理器具や小型家電など、実生活で役立つものもおすすめです。

●4人家族の場合

家族全員で楽しめるものを中心に、ボリュームやコストパフォーマンスを重視することがポイントです。

(例)

  • 大量の食品:お米、肉、魚、野菜など、家族全員で消費できる食品が適しています。特に大容量の肉や魚の詰め合わせなどが便利です。
  • 家族で楽しめるスイーツやデザート:アイスクリーム、ケーキ、和菓子など、家族でシェアできる甘いものも好評です。
  • 旅行や体験型返礼品:家族で利用できる宿泊券やテーマパークのチケットなど、家族での思い出作りに役立つ返礼品も魅力的です。

●高齢夫婦の場合

量よりも質や健康を意識した選び方を心掛けるとよいです。また、長く楽しめるものや、日常生活で便利に使えるものが好まれるでしょう。

(例)

  • 健康食品やヘルシーな食品:健康を気遣って、糖質や塩分が抑えられた食品、または栄養価の高いもの(果物や野菜、発酵食品など)を選ぶのがよいでしょう。
  • 特産品や贅沢なグルメ:普段手に入らない地域の特産品や、ちょっと贅沢な和牛や高級魚介など、食卓を豊かにする品物がおすすめです。
  • 工芸品や日用品:お箸や食器といった地元の工芸品や、高品質なタオルといった日用品など、日々の暮らしの質を高めてくれる返礼品がおすすめです。

ふるさと納税でメリットを得られる年収の目安は150万円以上

画像: 画像:iStock.com/kazumaseki

画像:iStock.com/kazumaseki

ここからは、ふるさと納税と年収の関係を解説します。ふるさと納税をしてメリットを得られる人の収入の目安は年収150万円以上独身、共働きの場合)」です。これには、ふるさと納税の「寄附金限度額」が大きく関わっています。以下で詳しく見ていきましょう4)

ふるさと納税には「寄附金限度額」がある

ふるさと納税は、年収に応じて寄附できる金額が異なります。自分の年収の寄附金限度額は、各種のふるさと納税関連のウェブサイトのシミュレーションなどを活用して調べてみましょう。

ここでは、ふるさと納税でメリットを得られる年収の目安となっている「年収150万円の場合」について解説します。

年収150万円の場合の寄附金限度額

画像3: 画像:iStock.com/YusukeIde

画像:iStock.com/YusukeIde

年収150万円で、独身または共働きの場合は、ふるさと納税の寄附金の限度額の目安は約8,000円となります。

ふるさと納税では自己負担分として2,000円かかるため、寄附金は2,000円以上でなければなりません。

ふるさと納税には、応援したい自治体に寄附ができるなどのメリットがあるものの、返礼品のメリットはやはり享受したいところでしょう。そういった人にとっては、自己負担分の2,000円が返礼品の現金価値を下回らないと、商品として購入したほうが安くなってしまいます

ふるさと納税の返礼率は、寄附金額の30%が上限と決まっているため、寄附金額×30%で2,000円を下回る分岐点の目安が年収150万円、寄付限度額でいうと約8,000円」となるのです。

なお、実際には、年収や家族構成などにより寄附金の限度額は異なります。返礼品の金額が自己負担分の2,000円を下回らないかをチェックしてみるといいでしょう。

収入が高いほど寄附額の使い道が広がる

ふるさと納税は、収入が高い人ほど寄附額の上限が高くなり、寄附金の使い道が広がります4)

●年収400万円の人(独身または共働きの場合)

寄附金の上限額の目安は4万2,000円となります。

●年収1,000万円の人(独身または共働きの場合)

寄附金の上限額の目安は18万円となります。自治体によっては高額の返礼品を用意しているので、このように上限額が高いほうがより選択肢が広がります。

定年退職して収入は公的年金のみの人は注意が必要

画像: 画像:iStock.com/JohnnyGreigi

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ふるさと納税をした年に定年退職した場合、翌年6月に支払う住民税や所得税は前年のものなので、その年はふるさと納税の限度額や税金の還付・控除額はそれまでと変わりません。

ただし、その翌年は注意が必要です。再就職する場合や年金以外の収入がある場合は問題ありませんが、65歳以上の人で所得は公的年金の収入のみで150万円未満の場合、寄附可能上限額が0円となるため、ふるさと納税をしても経済的なメリットは生じません6)。ふるさと納税は「寄附」なので、制度を活用することはできますが、税金の還付や控除にはつながらず、全額自己負担となる点に注意しましょう。

自分の控除額の上限を知っておこう

控除対象になるふるさと納税の寄附額は、総所得金額の40%が上限となります。控除額の上限を超えた分については、自己負担になってしまうため注意が必要です。

ふるさと納税の5つのデメリット

画像: 画像:iStock.com/gyro

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ふるさと納税はメリットが多い制度ですが、人によってはデメリットに感じられる点もあります。ふるさと納税で注意したい5つのデメリットも見ていきましょう。

①自己負担金として2,000円がかかる

ふるさと納税では、寄附額にかかわらず、必ず自己負担金として2,000円がかかります。返礼品の内容や返礼率なども考慮して、損することのないよう注意しましょう。

②減税や節税にはつながらない

画像: 画像:iStock.com/narith_2527

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“納税”というキーワードから、「ふるさと納税は減税や節税につながる」と思っている人もいるかもしれません。しかし、ふるさと納税は、直接的な減税や節税効果はありません

ふるさと納税はあくまでも寄附であるため、税金の負担が軽減されるわけではないのです。寄附を通じて自治体にお金を納めて、控除によってそのお金が戻ってくる、というしくみを理解しておくことが大切です。

③控除限度額を超えると自己負担になる

ふるさと納税で控除を受けられる金額には上限があります。寄附金のうち、控除限度額を超えた部分は控除の対象外となり、自己負担扱いとなる点にも注意しましょう。

控除限度額は、その人の年収や家族構成、ローンの有無などによって変動します。自分の控除限度額は、各種のふるさと納税関連のウェブサイトのシミュレーションなどを活用して把握しておきましょう。

④返礼品には国が定めた規制がある

画像: 画像:iStock.com/show999

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ふるさと納税の返礼品には国が定めた規制が設けられており、つぎの2つの条件を満たしている必要があります7)

  • 返礼率は寄附金額の3割以下である
  • 返礼品は地場産品である

返礼率や返礼品の内容によっては、自己負担の2,000円を下回ることもあり、必ずしも恩恵を受けられるとは限りません。

【関連記事】ふるさと納税をしないほうがいい人について、詳細はコチラ

⑤確定申告などの手続きが必要

画像: 画像:iStock.com/west

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ふるさと納税をして所得税の還付や住民税の控除を受けるためには、原則として確定申告などの手続きが必要です。

ふるさと納税自体は、1月1日から12月31日まで、年間を通して申し込みを受け付けています。しかし、寄附後は確定申告などの手続きを期限内に行う必要があり、手続きをしないと控除は受けられません。通常、確定申告は寄附した翌年の2月から3月に行います。

なお、一定の条件を満たすと、「ワンストップ特例制度」という制度を利用でき、確定申告よりも手軽に手続きを済ますことができます。詳しくは以下の記事からご確認ください。

【関連記事】ワンストップ特例制度の手続き方法について、詳しくはコチラ

ふるさと納税はメリットが豊富! 自分の控除限度額に応じて活用しよう

画像: 画像:iStock.com/SARINYAPINNGAM

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ふるさと納税には多くのメリットがある一方で、注意点もあります。しかし、自分の控除限度額を踏まえて寄附したり、控除を受けるための手続きについて事前に把握しておいたりすることで、お得にふるさと納税を活用することができるでしょう。自分の収入を踏まえてシミュレーションなども活用しながら、ふるさと納税を始めてみましょう。

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