結婚を前提に恋人と交際しているなどの状況で、今後のことを考えて「同棲」という選択を検討する人は多いでしょう。しかし、二人暮らし用の新居に引っ越すための費用や、日々の生活費は気になるところです。互いに一人暮らしを続けた場合と比べて、支出は抑えられるのでしょうか?

この記事では、ファイナンシャルプランナーの氏家祥美さんに、同棲にかかる初期費用や月々の生活費のことに加えて、費用の割り振りや貯金のルール作りについても伺いました。同棲を考えているカップルは要チェックです!

この記事の監修者

氏家 祥美(うじいえ よしみ)

ハートマネー代表。ファイナンシャルプランナー・キャリアコンサルタント。子育て世帯、共働き夫婦の家計相談に豊富な実績を持ち、「幸福度の高い家計づくり」を総合的にサポートしている。オンラインでの家計相談やマネー研修も実施中。
ウェブサイト

お金のプロとのマッチングサイト
お金のプロとのマッチングサイト

同棲の初期費用っていくらかかる?

画像1: 画像:iStock.com/byryo

画像:iStock.com/byryo

同棲を始めるにあたって、初期費用はどの程度かかるのでしょうか。引っ越しや家具・家電を揃えるとなるとかなりの金額になるのでは……と不安になる方も多いかもしれません。

そこでまず考慮したいのは、2人の同棲前の暮らし方です。お互いに一人暮らしなのか、実家暮らしなのかによって、新居を借りるのか、どちらかの住まいで同棲を始めるのかが異なります。それぞれのパターンで新居の家賃が10万円だった場合の初期費用を算出してみました。

お互い一人暮らし同士だった場合:「引っ越し費用」がポイント

画像: 画像:iStock.com/XiXinXing

画像:iStock.com/XiXinXing

互いに一人暮らしをしていて、同棲を機に新居に住み替える場合は、新居に入居する際の初期費用に加えて引っ越し費用や家具・家電を処分する費用がかかります。

■新居に入居する際の初期費用

  • 前家賃 10万円~20万円(家賃1~2カ月分)
  • 敷金 10万円~20万円(家賃1~2カ月分)
  • 礼金 10万円~20万円(家賃1~2カ月分)
  • 仲介手数料 10万円(家賃1カ月分)
  • 鍵交換費用 1万円程度
  • 火災保険料 1万円程度(2年分)

■引っ越し費用の例(通常期5月~1月/単身(荷物小)の場合)1)

  • ~15km未満(同市区町村程度) 平均3万7,264円
  • ~50km未満(同都道府県程度) 平均3万9,420円
  • ~200km未満(同一地方程度) 平均4万7,857円

●粗大ごみ処分費用の例2)

  • ソファ(2人以上用) 2,000円
  • シングルベッド(ベッドマットを除く) 1,200円
  • ベッドマット 1,200円
  • テーブル(最大辺1.5m未満) 800円
  • 椅子 400円
  • 掃除機 400円

新居に入居する際の初期費用だけでも、40万円~70万円のまとまったお金が必要になります。引っ越し費用も2人合わせると7万~8万円(1人4万円弱)くらいはかかるので、互いに一人暮らしで新居に移り住む場合は、あらかじめ資金を準備しておく必要があるでしょう。

ここで費用を増減させるポイントになるのが引っ越し費用です。引っ越し費用は2人合わせて7万〜8万円と紹介しましたが、これは「通常期」と呼ばれる5月〜1月の場合です。

3月や9月といった進学や異動の多い時期は費用が高くなりやすく、たとえば2〜4月の場合、単身(1人あたり)の相場でも5万〜7万円台になります1)。2人分なら10万〜14万円なので相当費用がかさむことがわかります。

できるだけ、引越し業者の繁忙期を避けられるとベストです。また、複数の引っ越し業者で見積もりをとって比較し、粘り強く価格交渉をすると、予定よりも費用が抑えられる場合もあります。これらのポイントも忘れないようにしましょう。

実家暮らし同士の場合:「家具・家電の購入費」がポイント

画像: 画像:iStock.com/Koji_Ishii

画像:iStock.com/Koji_Ishii

互いに実家暮らしをしている状態から同棲を始める場合は、新居の契約が必要になりますし、新しい家具や家電も一から購入することになるでしょう。

■新居に入居する際の初期費用

  • 前家賃 10万~20万円(家賃1~2カ月分)
  • 敷金 10万~20万円(家賃1~2カ月分)
  • 礼金 10万~20万円(家賃1~2カ月分)
  • 仲介手数料 10万円(家賃1カ月分)
  • 鍵交換費用 1万円程度
  • 火災保険料 1万円程度(2年分)

■家具・家電の購入費の例

  • 家具 10万円程度
  • 家電 20万円程度

家具・家電の購入費を考えると、一人暮らし同士よりも費用がかかる可能性があります。ただ、実家暮らし同士の場合、大きな家具や家電を実家から送る必要がないことがほとんどでしょう。服などの荷物を配送するだけで済めば、その分引っ越し費用を抑えられます。

また、家具や家電をリサイクルショップで買ったり、レンタルやサブスクリプションサービスを利用したりすると、さらに費用を抑えられます。同棲する前に、お得になる方法をリサーチしてみてください。

片方の家で同棲を始める場合:「初期費用ゼロ」の可能性あり

画像: 画像:iStock.com/visualspace

画像:iStock.com/visualspace

新居を借りずにどちらかの家で同棲を始めるのであれば、家具を処分する費用や2人用の家具の購入費などはかかるかもしれませんが、新居に入居する際の初期費用や引っ越し費用はかからない場合が多いです。

もともと一人暮らししていた部屋だと狭い可能性があるものの、お金の面でいうと、もっとも効率的な始め方といえるでしょう。

【おすすめ情報】将来のために貯金を増やしたい…と思ったら、「お金のプロ」に相談してみませんか?

生活費を見直して貯金を増やしたい! 老後資金や教育資金のために家計を整えたいと思ったら、自分にぴったりの「お金のプロ」に相談してみませんか?

「お金のプロ」とのマッチングサイトでは、あなたの性別や年齢、住んでいるエリア、相談したい事項を選択することで、あなたにぴったりの「お金のプロ」を選ぶことができます。

対面だけでなく、オンラインでの相談も行っているので、ぜひ以下から相性のよい人を探してみてください。

お金のプロとのマッチングサイト
お金のプロとのマッチングサイト

同棲の初期費用を節約するポイント

同棲前の2人の暮らし方によって差はあるものの、同棲を始める際には初期費用が数万円~数十万円かかることがほとんどです。その後の生活に余裕を持たせるためにもできるだけ初期費用を抑えたいものですが、どうすればいいのでしょうか。ポイントになる部分を見ていきましょう。

新居に入居する際の費用を節約するコツは“じっくり検討”すること!

画像: 画像:iStock.com/SetsukoN

画像:iStock.com/SetsukoN

最もお金がかかりやすいのが、新居に入居する際の費用です。多くの場合、同棲は好きなタイミングでいつでも始められるもの。だからこそ、じっくりと新居や家具のことを検討することが節約のコツになります。

特に新居選びは1軒だけで決めず、いくつかの物件を比較することが大切です。盛り上がった気持ちに任せてすぐに物件を探し始めるのではなく、先に予算を決めて、住みたいエリアや駅からの距離、築年数などの優先順位をつけて選んでいきましょう。

物件選びで注目すべきポイントは「礼金」と「仲介手数料」。これらは一度支払うと戻ってこないお金なので、少なければ少ないほど節約につながります。礼金や仲介手数料が0円になるキャンペーンなどは、見つけたらぜひ活用しましょう。

また、月々の支払いに関わる部分では「家賃」だけでなく「管理費」にも注意が必要です。中には、家賃は安いのに管理費が高い物件もあります。いざ契約したら想定以上に住居費が高くなった、ということがないように、事前にすみずみまでチェックしましょう。

まずは「マンスリーマンション」を活用するのもおすすめ

画像: 画像:iStock.com/Nuthawut Somsuk

画像:iStock.com/Nuthawut Somsuk

いきなり同棲を始めるのが不安、結婚前のお試し同棲をするということであれば、1カ月単位で借りられるマンスリーマンションに住んでみるのも1つの方法です。最近は、お試し同棲向けの物件も出てきています。

ほとんどのマンスリーマンションは家具・家電付きで、敷金・礼金・仲介手数料が発生しません。通常の賃貸よりも家賃は高めに設定されていますが、初期費用は住みたい期間の家賃だけで済むのが大きなメリット。2人での生活を具体的にイメージするためにも、「まずはマンスリーマンションでお試し同棲」というのは有意義な方法といえるでしょう。

初期費用以外に使える「貯金」も確保しておくべき

初期費用をどうにか捻出できても、同棲を始めるために貯金を使い切ってしまうのは危険です。同棲を始めた直後に失業したり、病気になったりすることがないとは言い切れません。何が起こっても問題がないように、初期費用とは別にそれぞれ3カ月分くらいの生活費を確保しておくのがベストです。

ここまで紹介したポイントを意識し、初期費用をなるべく抑えて、それぞれの貯金を残しておくようにしましょう。

同棲の月々の費用はいくら? 貯金しやすいって本当?

画像: 画像:iStock.com/PonyWang

画像:iStock.com/PonyWang

同棲は一人暮らしよりも生活費を抑えられる、というイメージを抱いている人は多いでしょう。実際はどうなのか、試算してみました。

同棲を始めると貯金額を“2倍”にすることも可能!

■一人暮らしの家計の例

手取り収入25万円の場合

項目金額収入に占める割合
家賃62,500円25%
水道光熱費12,500円5%
通信費5,000円2%
保険料5,000円2%
食費37,500円15%
被服・美容費12,500円5%
お小遣い50,000円20%
その他雑費15,000円6%
臨時支出25,000円10%
貯金25,000円10%

■二人暮らしの家計の例(赤字は収入に占める割合が変化した項目)

それぞれ手取り収入25万円ずつ(計50万円)の場合

項目金額収入に占める割合
家賃100,000円20%
水道光熱費20,000円4%
通信費10,000円2%
保険10,000円2%
食費50,000円10%
被服・美容費25,000円5%
お小遣い100,000円20%
その他雑費25,000円5%
臨時支出50,000円10%
貯金110,000円22%

一人暮らしと同棲を比較すると、家賃や水道光熱費、食費といった支出は単純に2倍になるとは考えにくく、同棲のほうが費用を抑えやすいと言えます。その結果、一人暮らしでは収入の10%しかできなかった貯金が、倍の20%以上に増える可能性が出てくるのです。

2人で結婚資金を貯めるのであれば、一人暮らしを続けるより、同棲を始めたほうが貯めやすいと言えるでしょう。例のように2人で月11万円貯められたら年間132万円貯まりますし、結婚資金という明確な目標があればさらに節約もできるはずです。

同棲中の貯金は“別々に”するのがおすすめ

画像1: 画像:iStock.com/takasuu

画像:iStock.com/takasuu

結婚資金などの目標に向けた貯金を行う場合、2人で1つの口座に貯めてしまいがちですが、実はその方法はおすすめできません。なぜなら、同棲という関係は法律で守られていないからです。

結婚していれば、2人で貯めたお金は離婚する場合に折半になるという法律があります。しかし、同棲にはそういった決まりはありません。2人のお金をどちらかの名義の口座に貯めていると、名義人が保有するお金と見なされてしまうのです。

別れることを想定するのは寂しいかもしれませんが、万が一を考えて、同棲中の貯金は各々の名義の口座にそれぞれ貯めていくといいでしょう。おすすめの方法は、お互いに貯金用の口座を作り、定期的に確認し合うルールを作っておくというもの。貯金をサボらず、お互いに目標に向かって貯金を続けることができるはずです。

同棲中の月々の生活費はどちらがどれくらい出す? もめずに決める方法

同棲中のカップルは、それぞれに収入がある場合が多いでしょう。生活費をどのように出し合うのがいいのかは、気になるところではないでしょうか。

最初のルール作りが肝心。フェアにお金を出し合おう

画像: 画像:iStock.com/Cunaplus_M.Faba

画像:iStock.com/Cunaplus_M.Faba

同棲を始めるうえでまず決めておきたいのが、生活費を出す割合や家事の分担に関する「ルール」です。

「家賃担当、食費・生活費担当」といった分け方にする場合も多いかもしれませんが、ルールを決めておかないと、「収入が多いほうが生活費を出して、収入が少ないほうが家事をする」「食費や生活費を出すほうが家事をする」という望ましくないパワーバランスができてしまいかねません。

先ほどの例のように2人の収入がまったく同じ額というケースは少なく、収入差が生じてしまうのは仕方のないことです。1:1で家賃や生活費を出し合うのが理想ですが、6:4くらいの差をつける分には問題ないでしょう。ただ、なるべくフェアにお金も家事も割り振ることが大切です。「共同生活」という意識で臨みましょう。

「忙しい恋人のために、自分が正社員を辞めて家事の時間を確保する」という方もいますが、同棲のために仕事を辞めたりキャリアダウンしたりするのはリスキーです。なぜなら、同棲関係では恋人の扶養には入れないから。夫婦でどちらかが主婦(夫)になるのであれば税制面で優遇されますが、恋人関係ではそういったメリットはありません。

単に収入が減るだけですし、万が一別れた場合に自分の生活が立ち行かなくなるおそれもあります。お互いに仕事を続けながら同棲生活を営むことを心がけましょう。

生活費は「1カ月ごとに集金」が◎

画像: 画像:iStock.com/Tatomm

画像:iStock.com/Tatomm

生活費は、それぞれの貯金用口座とは別に管理用の口座を1つ作っておくと管理しやすくなります。月に1回、2人で決めた金額を管理用の口座に入れて、その中のお金で家賃や水道光熱費、食費など、生活に関わる費用を捻出するようにしましょう。

生活費を管理するためには、家計簿アプリを使うのがいいでしょう。何にいくら使ったか、いつ出費が増えたかが可視化しやすくなります。結婚生活をシミュレーションするうえでも役立つツールです。

お金のプロとのマッチングサイト
お金のプロとのマッチングサイト

同棲の終わりに向けて考えておくべきことは?

同棲の終わりは2つのパターンが考えられます。結婚するか、別れるか。どちらの結末を迎えるにしても、新たに考えるべきことが出てくるでしょう。同棲を始める前から、少しずつ意識していきたいところです。

結婚するケース:新たな目標に向けて仕切り直し

画像: 画像:iStock.com/kokouu

画像:iStock.com/kokouu

同棲を経て結婚するのであれば、生活はほとんど変わらないでしょう。また、これまで紹介した「別々の口座での貯金」や「管理用口座に生活費をまとめる」といったルールは、結婚後もそのまま継続すると、変わらずに生活を築けます。

同棲中に結婚資金のための貯金をしていたカップルであれば、結婚後は新たな目標に向けて貯金を継続できるとベストです。貯金用の口座は分けたまま、「夫の口座の貯金は住宅購入の頭金」「妻の口座の貯金は将来の子どもの教育費」といった形で役割分担するのもいいでしょう。

別れるケース:資産や物品を分けやすいような工夫を

画像2: 画像:iStock.com/byryo

画像:iStock.com/byryo

同棲を解消する場合に、もっとも注意が必要な点がお金や家具・家電の分け方です。

収入が多いほうが家具・家電の購入費や生活費のすべてを出していた同棲カップルの例を紹介します。いざ別れるとなった時、収入が少ないほうが家を出る代わりに、家具や家電を持っていってしまったそうです。このことが別れた後にもめる原因になり、結果的に弁護士を立てて争うことになってしまいました。

そのような事態を避けるためにも、改めて同棲を始める際の心がけを大切にしましょう。貯金用の口座をそれぞれで分けるだけでなく、家具や家電を揃える際はアイテムの選択も費用の支払いもどちらかに偏らないようにすることがポイントです。たとえば、片方が選んだテレビを買ったら、もう片方が好みのテーブルを買うといったようにすると、仮に別れるとしてもそれぞれ買ったものを引き取るという形で分けられます。

別れるということになったら、なかなか合理的に考えられない部分も出てくるでしょう。ですが、最初からどちらかに負担が偏らないフェアな関係を作っておけば、不要なもめ事を避けることができます。

ズルズルと同棲を続けないために「話し合い」の場をもって

画像2: 画像:iStock.com/takasuu

画像:iStock.com/takasuu

もちろん、結婚を選ぶか同棲し続けることを選ぶかは自由ですが、2人の関係をどうしていくかという話し合いの場を定期的に持つことは大切です。同棲において起こりがちなのは、話し合いの場を持たずにズルズルと同棲を続けてしまうこと。前述したように、結婚すると配偶者の扶養に入れたり、別れた場合も婚姻期間中に2人で築いた財産が折半になったりと、法的に守られる部分が出てきますが、単なる同棲ではこのようなことはありません。

年に1回くらいのペースで、今後の生活や生活費の割り振り、貯金の使い道などを話し合う場をもうけましょう。そうして、同じ方向を向いて生活を築いていけるといいでしょう。

2人の生活を継続するためにも「フェアなルール作り」を忘れずに

画像: 画像:iStock.com/itakayuki

画像:iStock.com/itakayuki

「結婚」という次のステップも含めて、長く2人で暮らすことを想定して同棲を始める方々がほとんどだと思います。だからこそ、関係を維持するために大切なのが、お互いにとってフェアなルール作りをすることです。

互いに支え合う愛情も大切にしながら、お金や生活の部分ではクールになってしくみを作っていけると、良好な関係を長く保っていられるでしょう。同棲を始めるのには勢いも大切ですが、実行に移す際はお金や生活のルールをきちんと話し合うようにしましょう。

This article is a sponsored article by
''.