そこで、掃除検定士の資格を持つ家事芸人、“家事えもん”こと松橋周太呂さんに、お金をかけずに楽して掃除するテクニックなどを教えてもらいました。そしてそのノウハウをもとに、筆者が実践してみたいと思います。
【教えてくれたのは……】
松橋周太呂(まつはし しゅうたろう)さん
TVや雑誌などで“家事えもん”として活躍。掃除検定士や調味料検定初級を取得。著書『すごい家事−人生の「掃除の時間」をグッと縮める』(ワニブックス)は22万部を突破し、『ほったらかし掃除術』(SBクリエイティブ)など著書は多数。
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“お金をかけずに”ということで、松橋さんが教えてくれたポイントは2つ。1つは、すでに家にあるものを代用すること。もう1つは、100円ショップで売っている商品の活用です。格安でも、十分に活躍してくれる優秀な掃除アイテムはあると言います。その使用例を教えてくれました。
①ガンコな汚れは練りクレンザー×ゴム手袋で磨くべし
「まずは水回りで気になる水あかやカルキの汚れから。素材によっては表面のコーティングを削ってしまうので注意が必要ですが、特に金属やガラス面で効果的なのはクレンザーです。キッチン周りのコゲ落としにはもちろん、水あかなども落としやすいんですよ」(松橋さん/以下同)
クレンザーにも種類があり、松橋さんが推すのは液体ではなくペースト状の練りタイプ。またスポンジなどでこするのではなく、厚手のゴム手袋も一緒に買い、手にはめて直接ゴシゴシするのが効果的なのだそう。
「用途によりますが、頑固なコゲやカルキを落とすなら練りタイプですね。また、スポンジはクレンザーの研磨材の粒を吸ってしまうので、洗浄力が落ちてしまうんです。そこで使えるのが、ゴム手袋。これなら粒を吸わないし、両手の力でダイレクトに広い範囲を磨けるので手早くキレイにできます。これでコンロ回りや調理器具、シンク、蛇口類、洗面台ボウルなどはピカピカになりますね」
筆者はヤカンで実践してみました。確かにこれは、手を濡らしたり汚したりすることなく掃除できるという点でも手軽。また、指先の感覚で焦げが取れたかどうかがわかるのも利点です。そして、100円のクレンザーでも十分汚れが落ちることを実感。途中経過のビフォーアフターを撮ったので、参考にしてください。
②便器のふち裏掃除はカビクリーナーで代用できる
次に教えてくれたのは代用するアイデア。そのひとつとして、トイレ便器のふち裏や黒ずみを正攻法以外で掃除する知恵を教えてくれました。用意するのは、お風呂掃除などで使うカビ用の液体クリーナー。
「先ほどのクレンザー手袋でトイレも掃除できるのですが、できれば便器を触りたくないですよね。そこで活躍するのが、泡が出るタイプのカビクリーナー。便器が乾いている時にシュッシュとやれば、ふち裏が掃除できます。しかも泡が下に流れ落ちてくるので、そのまま水が溜まる部分の黒ずみも落としてくれます。トイレ用の洗剤があればそれに越したことはありませんが、カビクリーナーが一石二鳥の仕事をするのでこれでも十分ですよ」
実践してみると、確かに効き目十分。お風呂などで使うカビクリーナーをトイレ掃除用洗剤としても代用できるというのは、余計な洗剤を買う必要がなく、金銭面でありがたいのはもちろん、収納が少ない家においては省スペースにもなるので、スマートなアイデアでイイと思いました。
カビクリーナーを使う際のコツは、水分で効果が薄まらないよう乾いた状態で使うこと。お風呂の場合は事前にかけておき、自分が入ったときに一緒に流してしまえばOK。ガンコな汚れの場合は、キッチンペーパーに浸したりラップで液体が流れないようにして、洗剤が汚れに長時間触れるようにすると効果的だそうです。
③漂白剤×片栗粉がカビクリーナーになる
さらに松橋さんは、カビクリーナーがない時の代替技も教えてくれました。それは液体漂白剤の活用です。
「お風呂の床ならそのまま漂白剤をかけて、キッチンペーパーに浸したり、ラップで密着させたりして蒸発を防げばOK。ただし問題は、液体漂白剤は泡になっていないということ。サラサラなので、壁面にかけた場合は流れてしまいます。これを解決するのが片栗粉。器に漂白剤と片栗粉を1:1で入れて混ぜ、ジェル状にすれば壁面にも付きやすくなり、ラップなどで密着させれば効果大。シャワーホースのような立体的なモノにも使えますよ」
筆者はシャワーホースで実践。確かに、サラサラだった漂白剤が粘度をもつので立体面にもうまく付着してくれます。その上からラップで巻けば、より効果的に。この技を使えば、ジェルタイプのカビクリーナー代わりになるので、パッキンなどのカビ退治にも使えると思いました。
片栗粉を溶いた漂白剤で注意すべきは、お湯ではなく冷水で洗い流すということ。お湯で流すとより硬いジェルとなり、流れにくくなったり、排水溝などを詰まらせたりしかねないからです。
さらに松橋さんは、簡単にできるお風呂のカビ予防技も伝授してくれました。それは、仕上げに熱湯をかけてカビの原因となる菌を死滅させることです。
「意外かもしれませんが、カビは高温に弱いんです。なので、55℃以上に設定したシャワーを、カビやすい場所に5~10秒かけてあげると予防できますよ。ポイントは5cmぐらいの至近距離でかけること。カビは高温に弱い一方、15~35℃くらいの温度は好きなので、距離が近くないとお湯の温度が下がった状態でかけることになってしまい、逆効果なんです」
④歯ブラシの毛を切れば優秀な掃除道具に変身
代替法はクリーナー以外にもあるとのこと。それがブラシです。そう聞くと、真っ先に思いつくのが歯ブラシではないでしょうか。交換して使わなくなった歯ブラシを掃除用に代用する人はいるでしょう。
松橋さんは歯ブラシ代用時の弱点である、毛の軟性を解決する方法として、歯ブラシの毛を短くカットしてパワーアップさせる方法を教えてくれました。
「歯ブラシの毛でも、短く切れば鉄の毛みたいに硬くなるんです。パッキンとかプラスチック素材には柔らかい毛のほうが傷付けなくていいのですが、鉄などにこびりついた汚れは、ガチガチに改造したこの歯ブラシで戦いましょう。プラスチックの歯ブラシの毛はハサミで切ると飛び散るので、ゴミ箱の奥などで行うようにしてください!」
アドバイスを元に試してみました。もともと捨てるつもりの歯ブラシなので、ためらいもなくジョキジョキできます。カットした歯ブラシは確かに強力な硬さになり、鍋底の汚れ落としに代用できました。また、こちらも練りクレンザーでよりスピーディーに落とせます。
⑤網戸と窓拭きはマイクロファイバークロスで制覇
最後は窓掃除の裏技を聞いてみました。まず、力を入れて拭くと壊しかねない網戸を上手に掃除する方法から。
「もし要らないタオルがあれば用意しましょう。もう少し絞れるという程度まで水分を残してレンジで30~40秒チンすれば、熱で網戸の汚れが落としやすくなります。これはコンロ回りやレンジ内などのベタついた油汚れにも効果てき面。タオルは、使い古した体洗い用のナイロンタオルでもいいですね。洗剤は、重層かセスキ炭酸ソーダ(セスキ炭酸ナトリウム)を水に溶かすか、セスキ水を100円ショップで買えばOKです」
もし要らないタオルがなくて買う場合は、100円ショップでも売っているマイクロファイバークロスがオススメだと松橋さん。
「マイクロファイバークロスのメリットは、繊維が細かくて汚れの吸着率が高いこと。一方、洗えばその汚れもすぐ離れるので、繰り返し使う雑巾としてうってつけなんです。軽く水を含ませるだけで、ちょっとした水あかも削り落としてくれるので、蛇口などの水回りにも使えますよ」
ということで筆者はマイクロファイバークロスと、セスキ炭酸ソーダ水を100円ショップで購入。松橋さんのお話を元に、網戸と窓掃除を実践してみることに。網戸は確かに汚れの吸着率がよく、普通のタオルよりも快適に掃除できました。
続いて窓拭き。まずマイクロファイバークロスとセスキ炭酸ソーダ水を使用して汚れを落としていきます。
このあとは、水拭きをしてセスキ炭酸ソーダ水の白い拭き残りを取り、乾拭きで仕上げをしていきます。ただ、乾拭きするとなると、2種類のクロスが必要となり面倒です。ここで松橋さんが教えてくれたのが、1枚のクロスで済ませるテクニック。
「クロスを半分に折り、ティースプーン一杯分の水を垂らします。それをさらに半分に折り、中央だけほんのわずかに湿らせて拭くと、中央部分では水拭きができ、周囲の部分で乾拭きができるので時短になりますよ。このクロスで水拭きと乾拭きの同時技を行えば、窓掃除は完璧です!」
確かに、これなら1度で水拭きと乾拭きができて楽チン。しかもマイクロファイバークロスの細かい繊維が汚れをしっかり落とすので、これまでより段違いにキレイになりました。
今回は“お金をかけずに”というテーマだったので100円グッズの活用法などを教えてもらいました。もちろん、少しお金を出して専門性の高いアイテムを買えば、いっそう時短でキレイになり、それらをフル活用するコツもあると松橋さん。家事芸人としての知見も、わかりやすい話術もさすがでした。今回教えてもらった5つのネタ、ぜひ今年の大掃除に実践してみてください。
【この記事の著者】
中山 秀明(なかやま ひであき)
グルメ、ファッション、カルチャー分野を得意とする編集プロダクションを経て、現在はフリーのライター、エディターとして活動。雑誌、書籍、ウェブメディアを中心に、編集や撮影を伴う取材、執筆を行っている。また、フードアナリストの資格をもっており、TV、ラジオ、大手企業サイトなどのコメンテーターとして出演することもある。