老後資金を形成する方法として、個人年金保険とiDeCoを活用した方法が知られています。しかし、両者の違いやどちらが自分に合っているかがいまいち分からないという人もいるのではないでしょうか。

この記事では、ファイナンシャルプランナーのタケイ啓子さん監修のもと、個人年金保険とiDeCoの違いを解説します。また、個人年金保険とiDeCoが併用できるのかや税金シミュレーション、年末調整についてもご紹介。個人年金保険やiDeCoの利用を検討している人はぜひ参考にしてみてください。

※この記事は2023年3月24日に公開した内容を最新情報に更新しています。

この記事の監修者

タケイ 啓子(たけい けいこ)

ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。

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個人年金保険とiDeCoの特徴は?

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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個人年金保険とiDeCoは、どちらも老後資産を形成するための私的年金のしくみです。 私的年金制度は公的年金に上乗せできる制度で、任意で加入する年金のことをいいます。それぞれの特徴を解説します。

個人年金保険とは支払った保険料を年金形式で受け取る私的年金

個人年金保険とは、公的年金に年金額を上乗せする目的で、自身で老後の準備をするための民間の保険です。契約時に決めた年齢に達するまで保険料を払込み、払込満了後は保険料に応じた年金を受け取ることができるのが特徴です。

個人年金保険加入中に支払った保険料は、一定の条件を満たせば個人年金保険料控除として所得税・住民税の控除の対象となり、一定金額の控除を受けることができます。

なお、以下の記事では個人年金保険のしくみを詳しく解説しています。気になる人は併せて確認してみてください。

【関連記事】個人年金保険について、詳しくはコチラ

iDeCoとは確定拠出年金法に基づく私的年金

画像: 画像:iStock.com/Yusuke Ide

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一方でiDeCoは、確定拠出年金法に基づいて運用されている私的年金制度です。国民年金被保険者であれば、誰でも加入できます。iDeCoも加入は任意ですが60歳になるまで引き出すことができません。

また、国民年金などの公的年金とは異なり、iDeCoでは老後に受け取れる金額が運用実績によって変動します。iDeCoのメリットは、運用の成績がよかった場合には、運用益を受け取ることができます。さらに、運用の掛金に合わせて高い収益が上乗せされる場合があります1)

個人年金保険とiDeCoの違いは?

画像1: 画像:iStock.com/metamorworks

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個人年金保険とiDeCoについて、以下の4つの観点から比較してみましょう。

それぞれの違いを解説します。

比較①対象となる税制優遇

個人年金保険とiDeCoのどちらも所得控除が受けられますが、その内容に違いがあります。

個人年金保険では、収めた保険料に応じて控除額が決まり、年間で最大4万円が所得から控除されます(新契約の場合)2)。一方、iDeCoでは掛金の全額が控除の対象です3)。さらに、iDeCoの場合は運用益が非課税になります。そのため、税金はiDeCoのほうが抑えられるというメリットがあります。

なお、個人年金保険料控除とiDeCoの税控除については以下の記事で詳しく解説しています。興味のある人は併せてご確認ください。

【関連記事】個人年金保険料控除について、詳しくはコチラ

【関連記事】iDeCoの税控除について、詳しくはコチラ

比較②受け取り時にかかる税金

個人年金保険とiDeCoは、受け取りの際にかかる税金の取り扱いにも違いがあります。個人年金保険を年金として受け取る際は雑所得として扱われ、所得税がかかります。退職後は、公的年金と合わせて確定申告が必要です。

一方、iDeCoの年金には公的年金控除が適用され、年齢と収入に応じて所得が控除されます4)。どれだけの控除を受けられるかについては、国税庁のウェブサイトをご覧ください。

比較③受け取るタイミング

画像: 画像:iStock.com/high-number

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個人年金保険とiDeCoは、お金を受け取る際のルールが異なります

個人年金保険の受け取り開始年齢は、契約時に決めます。希望すれば途中で解約できるケースもあり、柔軟性が高いといえるでしょう。ただし、途中で解約すると多くの場合で元本割れ(※)を起こすので、やむを得ない事情がない限りは解約しないほうがいいでしょう。

一方、iDeCoの場合は原則60歳になるまで受け取れません3)。個人年金保険と異なり、基本的に60歳までは引き出せないので注意しましょう。

※:投資した当初の金額を下回ること。

比較④リスクの有無

個人年金保険やiDeCoは、運用の仕方が違うためそれぞれ考えられるリスクも異なります。

個人年金保険は、あくまで保険商品の一種で将来受け取る金額があらかじめ決まっています。景気が上昇傾向にあっても金利は上がらないため、インフレに弱い点がリスクといえるでしょう。また、繰り返しになりますが個人年金保険を途中解約した場合、基本的には元本割れとなってしまうため注意しましょう。

一方、iDeCoは積み立てた掛金(資産)を自分で運用して増やしていくしくみとなり、投資対象は株式や投資信託です。運用次第では収益を得られる可能性もあるものの、金融商品である以上損をすることもあります。

〈表〉個人年金保険とiDeCoのリスク

項目リスク
個人年金保険・インフレに弱い
・途中解約すると元本割れをする
iDeCo・運用結果次第で元本割れをする

iDeCoのデメリットについては以下の記事で詳しく解説しています。興味のある人は併せてご確認ください。

【関連記事】iDeCoのデメリットについて、詳しくはコチラ

個人年金保険とiDeCoは併用できるの? 控除についても解説

個人年金保険とiDeCoは併用できます。両者を併用すれば、生命保険料控除と、iDeCoの所得控除の両方のメリットを受けられます。詳しくは後述のシミュレーションで解説しますが、軽減されるのは、所得税・住民税です。

iDeCoは、公的年金の加入区分に応じて、拠出できる掛金の上限が異なります。会社員の場合は、公的年金の加入区分に応じて月額1万2,000円~2万3,000円、公務員は月額1万2,000円が上限です。家計に余裕がある場合は個人年金保険との併用も検討するのがおすすめです。

とはいえiDeCoは元本を下回る可能性もあります。個人年金とiDeCoを併用すれば、リスクが分散できるメリットもあるでしょう。

個人年金保険とiDeCoの年末調整・確定申告の手順

画像: 画像:iStock.com/ilkercelik

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個人年金保険やiDeCoに加入すると、年末調整や確定申告を行う際に、所得控除を受けられます。それぞれの手続きの手順を以下にまとめました。

個人年金保険の場合

画像1: 画像:iStock.com/kazuma seki

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個人年金保険料控除の適用を受けるには、毎年10〜11月頃に生命保険会社から送られてくる控除証明書が必要です。ただし、個人年金保険料控除の申請方法は、会社員と個人事業主で方法が異なります。

会社員の場合は、年末調整手続きのために記入する「給与所得者の保険料控除申告書」に、生命保険会社名や控除金額などを記載し、控除証明書とともに勤務先に提出します。一般的に、軽減額は12月か翌年1月の給与とともに還付されます。

個人事業主で確定申告が必要な人の場合は、確定申告書の生命保険料控除の欄に金額を記載し、控除証明書とともに税務署へ提出します。控除された分だけ税額が減り、すでに納めている税額のほうが多い場合は還付を受けることができます。

iDeCoの場合

iDeCoの申請方法も、基本的には個人年金保険の申請手順とほぼ同じです。掛金の所得控除の適用を受けるには、国民年金基金連合会から送られてくる「小規模企業共済等掛金払込証明書」というハガキが必要です。これは、iDeCoの加入者が1年間に支払った(12月末までに払い込む予定額を含む)掛金を証明するものです。iDeCoで年単位拠出を選択して掛金を月別に指定している場合、証明書は10月下旬頃に送付されます。

会社員の場合は、年末調整手続きのために記入する「給与所得者の保険料控除申告書」の、小規模企業共済等掛金控除の欄にある、「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」の項目に、1年間に支払った掛金の金額を記入します。それを控除証明書とともに勤務先に提出します。一般的に、軽減額は12月か翌年1月の給与とともに還付されます。

個人事業主で確定申告が必要な人の場合は、確定申告書の小規模企業共済等掛金控除の欄に金額を記載し、小規模企業共済等掛金払込証明書とともに税務署へ提出します。控除された分だけ税額が減り、すでに納めている税額のほうが多い場合は還付を受けることができます5)

個人年金保険・iDeCoの税金シミュレーション

画像: 画像:iStock.com/kazumaseki

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個人年金保険とiDeCoにかかる税金について、以下の2つのケースのシミュレーションをご紹介します。

それぞれ詳しく解説します。

ケース①所得税率10%・毎月1万円の保険料/掛金の場合

所得税率10%・毎月1万円の場合、どれくらい税金が抑えられるかシミュレーションしてみました。1)2)6)

〈表〉所得税率10%・毎月1万円の保険料/掛金の場合

種類年間控除額年間で抑えられる税金
個人年金保険所得税4万円/住民税2万8,000円6,800円
iDeCo所得税12万円/住民税12万円2万4,000円

個人年金保険とiDeCoでは、それぞれ6,800円と2万4,000円で、年間控除額に大きく差が生じます。iDeCoのほうが税金を抑えられるでしょう。

ケース②所得税率20%・毎月2万円の保険料/掛金の場合

続いて、所得税率20%・毎月2万円の場合の税金シミュレーションを見てみましょう1)2)6)

〈表〉所得税率20%・毎月2万円の保険料/掛金の場合

種類年間控除額年間で抑えられる税金
個人年金保険所得税4万円/住民税2万8,000円1万800円
iDeCo所得税24万円/住民税24万円7万2,000円

上の表からもわかるとおり、所得税率や毎月の積立金額が高いほど、税金を抑えることができます。

個人年金保険が向いている人の特徴

画像2: 画像:iStock.com/metamorworks

画像:iStock.com/metamorworks

では、個人年金保険が向いているのはどのような人なのでしょうか。個人年金保険が向いている人の特徴は以下のとおりです。

それぞれ詳しく解説します。

①貯蓄が苦手な人

毎月コツコツと貯蓄をするのが苦手な人は、個人年金保険が向いているでしょう。個人年金保険なら毎月自動的に保険料が引き落とされるため、貯蓄が苦手な人でも半ば強制的に貯蓄できます。

また、個人年金保険はお金を引き出すためには「解約をしないといけない」というハードルがあるため、途中解約せずに貯め続けることができるかもしれません。

②投資の知識が少ない人

投資の知識が少ない人にも個人年金保険はおすすめです。老後2,000万円問題などをきっかけに、今から老後を見据えて年齢を問わず投資をすることが一般的になりつつあります。

しかし、株式投資や不動産投資などはリスクが高い投資手法でもあるため、不安に思う人もいるでしょう。また、これらの投資で利益を上げるには、ある程度の知識がないと難しい場合もあります。

一方、個人年金保険なら毎月保険料を支払うだけなので、特別な知識は不要ですぐ始めることができるのがメリットといえます。

iDeCoが向いている人の特徴

画像: 画像:iStock.com/Ivan-balvan

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一方、iDeCoが向いている人の特徴は以下のとおりです。

それぞれ詳しく見ていきましょう。

①投資の知識がある人

iDeCoは投資知識がある人におすすめです。一度でも投資経験がある人であれば始めやすい商品といえるでしょう。iDeCoでは投資信託の金融商品を購入できる上に、月5,000円から購入可能という点も始めやすいポイントとなっています。

なお、投資の知識があるなら、変額保険に加入する選択肢もあります。東京海上日動あんしん生命保険の変額保険「マーケットリンク」は、運用成績次第で将来の老後資金を増やせる可能性があります。万が一の保障を確保しながら、より効率的に資産形成をしたい人は、ぜひチェックしてみましょう。

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②60歳まで積み立てを続けられる人

積み立てを60歳まで続けられる人は、iDeCoがおすすめです
iDeCoは原則60歳まで引き出せませんが、続けられる見込みがある人ならば問題ないでしょう。

ただし、途中解約ができない分、急な出費が発生した際の資金の調達先としては期待できません。緊急用の資金は別で用意しておく必要があるでしょう。

個人年金保険とiDeCoの違いを理解して、適切な選択をしよう

画像2: 画像:iStock.com/kazuma seki

画像:iStock.com/kazuma seki

個人年金保険とiDeCoには、税制面や受け取りのタイミング、リスクなどの違いがあります。また、それぞれ向いている人の特徴も異なり、人によっては併用するとメリットがある場合もあります。違いを正しく理解した上で上手に活用しながら、老後資金の確保を目指しましょう。

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