「夫の扶養から外れたら保険証の色が水色からピンク色に変わったし、カードタイプだったのに薄い紙タイプになった…」「転職したら保険証の色が水色になった…」など、転職や結婚のタイミングで保険証の種類が変わり、色やタイプも変わったという経験をお持ちの方は多いのではないでしょうか。保険証の種類が変わると、そこから何かがわかってしまうのではないかと不安になることもあるかと思います。

また、「保険証の色を見れば職業や役職がわかる」という声を聞くことがありますが、これは本当なのでしょうか。

じつは、保険証の色やタイプから職業や役職を判断することはできません。また、結婚や退職・転職で加入する保険が変わっても、保険証の色は変わらない場合もあります。

この記事では、保険証の色について素朴な疑問を抱える方に向け、ファイナンシャルプランナーのタケイ啓子さん監修のもと、保険証の色に意味があるのか、保険証の色は誰が決めるのか、などについて詳しく解説します。

保険証の色についてすぐに確認したい場合は下記のまとめをチェック!

▼この記事のまとめ

  • 保険証の色に特に意味はない。
  • 保険証によっては一斉更新などで色が変わる。
  • 保険証の色からは職業や役職を特定できない。
  • 保険証の色は保険者が決める。
  • 色に意味はないが、記載されている内容には意味がある。

この記事の監修者

画像: 保険証の種類と色を一覧表で総まとめ! 職業や役職がわかるってホント?

タケイ啓子

ファイナンシャルプランナー。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。

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【一覧表】保険証の種類と色

公的医療保険には社会保険や国民健康保険などの種類があり、発行している保険証の色も様々です。

そこで保険証の種類と運営主体である主な保険者、発行している保険証の色、加入対象者の関係を一覧表にまとめました。

〈表〉保険証の種類と色・保険者・加入対象者

種類主な保険者(運営主体)保険証の色加入対象者
社会保険組合健保
(企業が組織する組合や、同業他社と共同で設立した健康保険組合が運営)
緑、赤、ピンクなど従業員が一定数以上の大企業に勤める従業員と、その扶養家族
協会けんぽ
(全国健康保険協会が運営)
青、水色、オレンジなど主に民間企業に勤める職員とその扶養家族
共済組合
(共済組合等が運営)
黄色、水色など公務員や私立学校の教職員とその扶養家族
国民健康保険市町村国保
(市町村、都道府県が運営)
赤、ピンク、紫など社会保険に加入している人や生活保護を受けている人、後期高齢者医療制度の対象となる人などを除くすべての人
国保組合
(歯科医業など同種の事業又は業務に従事するものが運営)
黄緑など特定の職種について、同種の事業又は業務従事者と、その同一世帯の家族
後期高齢者医療制度後期高齢者医療制度
(都道府県の後期高齢者医療広域連合と市町村が協力して運営)
緑、紫、オレンジなど75歳以上の人もしくは、65歳~75歳未満で一定の障害などを持つ人

社会保険における保険証の種類と色、職業や加入対象者

まずは、社会保険について詳しく見ていきましょう。社会保険にはいくつか種類があり、それぞれの組合や協会などが独自の色・デザインの保険証を発行しています。

代表的な例をもとに、保険証の種類と色、加入対象となる職業を詳しく解説していきます。

【協会けんぽ】青・水色・オレンジなどの保険証

画像: 【協会けんぽ】青・水色・オレンジなどの保険証

全国健康保険協会が運営する社会保険を「協会けんぽ」といいます。「協会けんぽ」が発行する保険証の色は青、水色、オレンジとなっており、加入できるのは民間の企業に勤める会社員とその扶養家族です。

厚生労働省の「平成29年度版厚生労働白書―社会保障と経済成長―」のデータによると、協会けんぽの加入者数は、公的医療保険の中で最も多くなっています1)。また、2020年には4,000万人を超えており、年々増加しています2)

元々、協会けんぽは社会保険庁が運営していましたが、2008年から全国健康保険協会が保険者となって運営することになりました。その際保険者の変更に伴い、保険証の色もオレンジ色から水色へと切替えが行われているため、協会けんぽの加入者でオレンジ色の保険証を所有している方は、加入期間が長いことがわかるでしょう。

なお、全国健康保険協会は、船員として雇用されている方が加入する「船員保険」も運営しています。船員保険の保険証は黄緑などになっています。

【組合健保】赤・ピンクなどの保険証

画像: 【組合健保】赤・ピンクなどの保険証

「組合健保」とは、一定規模の企業が厚生労働大臣の許可を得て運営する社会保険です。「組合健保」の保険証は、赤やピンクなどが多くなっています。

組合健保を運営するには条件を満たす必要があり、ひとつの企業が運営する場合は常時700人以上、複数の会社が共同で設立する場合は、合計で常時3,000人以上の従業員が働いていることが必要です3)

つまり、組合健保の加入対象者は大企業または、そのグループ会社や子会社の従業員である場合が多いと言えるでしょう。

【共済組合】黄色・水色などの保険証

画像: 【共済組合】黄色・水色などの保険証

公務員や私立学校教職員が加入する社会保険は「共済組合」といいます。「共済組合」が発行する保険証は黄色や水色などがあります。

共済組合には、いくつかの種類があり加入対象者が決まっています。以下は地方公務員における主な共済組合の種類例です。

〈表〉主な共済組合の種類と加入対象者4)

種類加入対象者
地方職員共済組合道府県の職員
東京都職員共済組合東京都・区の職員
警察共済組合警察庁、皇宮及び都道府県の警察職員
公立学校共済組合公立学校で働く教職員、都道府県教育委員会及びその所管の教育機関の職員
市町村職員共済組合都道府県の市町村の職員

また、このほかにも国家公務員であれば「衆議院共済組合」や「厚生労働省共済組合」、「文部科学省共済組合」などがあります。

なお、小学校、中学校、高校など公立学校の教員や区役所の職員、警察官などの家族は該当の共済組合に加入します。

国民健康保険における保険証の種類と色、職業や加入対象者

次に、国民健康保険について見ていきましょう。国民健康保険には、市町村国保(市町村国民健康保険)と国保組合(国民健康保険組合)の2種類があります。それぞれが発行する保険証の色、加入対象者について詳しく解説していきます。

【市町村国保】赤・ピンク・緑・灰色・紫などの保険証

画像: 【市町村国保】赤・ピンク・緑・灰色・紫などの保険証

国民健康保険のうち、「市町村国保」は赤やピンク、緑、灰色、紫など様々な色の保険証を発行しています。なぜ様々な色のものがあるかというと、市町村国保は、都道府県や市町村が運営しているため、その自治体により色が決められるためです。また、紙タイプの保険証である場合も多くなっています。

市町村国保の加入対象者は、社会保険に加入している方や生活保護を受けている方、後期高齢者医療制度の対象となる方などを除くすべての方です。自営業者のほか、退職した高齢者や無職者も含まれます。

たとえば、退職後に再就職しない場合や次の会社に入社するまでに空白期間がある場合は、役所で手続きをして国民健康保険に加入する必要があるため、一度は加入したことがある方も少なくないでしょう。

【国保組合】ピンク・黄緑などの保険証

画像: 【国保組合】ピンク・黄緑などの保険証

国民健康保険のうち、「国保組合」が発行するのはピンクや黄緑などの保険証です。「国保組合」とは、歯科医業や土木建築業者など、同種の事業・業務の従事者が組織する組合です。

一般的に法人企業に属していない方は、地域の市町村国保に加入することになりますが、上記のような特定の業種で個人事業を営む方やその従業員は、国保組合に加入することも可能です。

なお、国保組合に加入できるのは従業員が5人未満の事業を営む場合となっています5)

【後期高齢者医療制度】緑・紫・青などの保険証

画像: 【後期高齢者医療制度】緑・紫・青などの保険証

後期高齢者医療制度で交付されるのは、緑や紫、青などの保険証です。

後期高齢者医療制度の保険証は定期的に更新され、都道府県の後期高齢者医療広域連合によって新しい色の保険証が交付されます。また、色と同様に大きさについても、名刺サイズやはがきサイズなど様々な種類があります。

日本の場合、すべての方が75歳になると後期高齢者医療制度の対象となり、それまで加入していた公的医療保険から移行することになります。また、75歳以上でなくても、65歳以上の方で一定の障がいがあると認定を受けた方も対象となっています。

保険証は色ではなく記載された情報に意味がある

画像: 保険証は色ではなく記載された情報に意味がある

ここまで公的医療保険などによる保険証の色の違いについて解説しました。協会けんぽの例など色によって加入期間の目安などがわかる場合もありますが、ほとんどの場合は色が違うからといって、特に意味が変わるわけではありません。また、上記の色はあくまで主な例の紹介となっているので、例外もあるでしょう。

したがって、たまに耳にするような「保険証の色によって職業や役職を特定することができる」ということはありません。しかしながら、保険証に記載された「保険者番号」や「番号」などの情報から、職業や公的医療保険の種類、加入した順番など一定の情報を読み取ることは可能です。

では、一体どのようなことがわかるのか、詳しく見ていきましょう。

「保険者番号」からは、公的医療保険の種類や職業がわかる

画像: 画像:iStock.com/akiyoko

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まず保険者番号とは、保険証の下部に記載されている数字で、社会保険は8桁、国民健康保険は6桁となっています。この保険者番号からわかるのは、公的医療保険の種類や職業です。

特に社会保険の場合、保険者番号から会社員や国家公務員、地方公務員といった職業についての情報を読み取れます。これは、社会保険の保険者番号が下記のルールに基づいて構成されるからです6)

「法別番号(2桁)」+「都道府県番号(2桁)」+「保険者別番号(3桁)」+「検証番号(1桁)」

それぞれの番号の意味は以下のとおりです。

  • 法別番号:被保険者が加入している公的医療保険の種類を表す2桁の数字
  • 都道府県番号:保険者が所在している都道府県を表す2桁の数字
  • 保険者別番号:保険者ごとに振り分けられている3桁の数字
  • 検証番号:保険者番号が正しいかどうかを識別するためのチェック番号1桁。

公的医療保険の種類を表す法別番号からは、勤務先を推測することが可能です。

〈表〉法別番号の主なルール

番号区分推測される勤務先
01全国健康保険協会(協会けんぽ)中小企業の従業員
02船員保険船員
06組合管掌健康保険大企業の従業員
31国家公務員共済組合国家公務員
32地方公務員共済組合地方公務員
33警察共済組合警察職員
34公立学校共済組合/日本私立学校振興・共済事業団教職員
39後期高齢者医療制度後期高齢者

なお、国民健康保険の場合は「法別番号」が含まれないため、勤務先の推測はできません。

「番号」からは入社した順番がわかる

社会保険の保険証に記載された番号は、多くの場合は社会保険に加入した順番を示す数字となっています。そのため、保険証に記載された「番号」を見れば、保険証が発行された順番がわかり、番号が若いほど、社歴が長いと考えられるでしょう。

保険証の色は誰が決める?

画像: 画像:iStock.com/Rostislav_Sedlacek

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保険証の色には様々な色があることがわかりましたが、これらは基本的に健康保険組合や全国健康保険協会、市町村、都道府県などの保険者が決めています。

また、同じ公的医療保険に加入し続けていたとしても、運営の変更や年度更新などの際に、保険者が色を変える場合もあるため、そのタイミングで新しい保険証が送られてくることもあります。特に国民健康保険の保険証には有効期限があり、定期的に更新されるのが一般的です。

ちなみに、保険証には紙タイプとカードタイプがありますが、こちらも保険者が決めています。

色に意味はないが、多くの個人情報が含まれる保険証。取扱いにはくれぐれも注意しよう

ここまで紹介したように、保険証の色に特に意味はなく、読み取れる情報はほとんどありません。しかしながら、保険証に記載された「保険者番号」や「番号」からは、職業や入社した順番などがわかる場合があります。また、当然ですが名前や生年月日、勤務先などの個人情報も記載されているため、くれぐれも取扱いには注意するようにしましょう。

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