今回は、結婚して5年の会社員Kさん(31歳)からのご相談をライフパートナーの近藤信也より紹介します。
この記事の著者
近藤 信也(こんどう しんや)
東京第四支社
エグゼクティブライフパートナー ロイヤルメンバー
2021年度 MDRT成績資格終身会員(TOT)
お金に関する悩みは十人十色。
時代が変化する中、ますます必要となってくるのが将来を見据えた資金計画。
「ライフプランシミュレーションを通じてお客様の人生に寄り添い、安心感を与えたい」
そんな想いで日々、多くの方々からのご相談をお受けしております。
【今回のご相談者】
Kさん:31歳、会社員
家族構成:妻(会社員)、子ども1人(4歳)
世帯収入:約800万(夫500万円・妻300万円)・合計の手取り額は約60万円/月
※年俸制のため、ボーナスは月々の給与に含まれる
家賃:約8万円
生活費(食費、水道光熱費、通信費、教育費 等):50万円/月
貯蓄合計:約200万円
生命保険:未加入
結婚して5年。結婚後すぐに生まれた育ち盛りの子どもの世話に追われ、将来のお金の備えについて気が回っていなかった。夫婦ともに働いているため、忙しさを理由に外食や惣菜等の購入頻度が高くなり、食費が月20万円に達することもある。
【ご相談内容】
- スーパーに併設している保険ショップにたまたま立ち寄り、外貨建て保険と変額保険について話を聞き、興味を持ったが、違いも含めて詳しく教えてほしい。
- まだ生命保険に加入していないので、保険の組み立て方についてアドバイスしてほしい。
Kさんは5年ほど前に結婚され、奥様とお子さん(4歳)の3人暮らし。いわゆる夫婦ともに正社員のダブルインカムで、月々の手取り収入は高めですが、なかなかお金は貯まっていないようです。
日々の暮らしに忙殺されて、食事はほぼ毎日外食やデパ地下での惣菜等の購入で済ませる生活。そのため、毎月の食費が20万円を超えており、エンゲル係数がかなり高くなっています。また、毎月決まった額を貯金する習慣も無いため、生活費以外の余剰金は「いつの間にかなくなっている」という状態です。
家族でショッピングモールに出かけた際に、子どもへのプレゼントにつられて保険ショップで話を聞いたところ、保険の必要性を実感。紹介された商品のうち、特に外貨建て保険と変額保険に興味をもったものの、それらの違いまでは十分理解できず、詳しく教えて欲しいとご相談をいただきました。
また、これを機に、家計の見直しについてもアドバイスをしてほしいとのご希望をいただきました。そんなKさんに私からアドバイスさせていただいたポイント2点をお伝えします。
【ポイント1】資産運用を始める…その前に、ライフイベントに必要なお金を知ることが大切
Kさんは、資産運用もかねて投資性商品である外貨建て保険と変額保険について興味を持っているというご相談です。もちろん資産運用を考えることは、将来を描くために素晴らしいことですが、これまで「お金の計画性」をお持ちでなかったKさんの第一歩は、これからどのようなお金が、どれくらい必要になるのかを知ることです。
今後、Kさん家でお金がかかる大きなイベントは、①子どもの進学と②マイホームの購入です。また、長期的に見ると③Kさんご夫婦の老後生活の備えも必要になります。
① 子どもの教育費「目標は、子どもが18歳になるまでに400万〜500万円」
子どもの教育費は、進路によって大きく異なりますが、仮に大学までオール国公立で進学した場合は約720万円、私立の大学文系に進学した場合は約900万円かかるというデータがあります。特に大学進学時はまとまったお金が必要になりますので、子どもが18歳になるまでに400万~500万円は貯めておきたいところです。
② マイホーム購入「現在と同じ負担で3,000万円クラスの物件は購入可能」
あくまでも概算ですが、仮に、現在の家賃(月額8万円:年間96万円)と同じ程度の負担で、30年の住宅ローンを組むと考えると、3,000万円弱の物件なら購入できるでしょう。また、頭金としてまとまったお金を準備しておけば、さらにワンランク上の物件も選択肢に入れることができます。
③ 夫婦の老後資金「ゆとりある老後には月額36万円が必要」
そして、Kさんご夫婦の老後生活資金ですが、ゆとりある老後生活のためには月額約36万円必要になるというのが平均的なデータとしてあります。この老後生活を支える資金として「公的年金」「退職金」があるわけですが、夫婦2人分の標準的な厚生年金支給額(老齢基礎年金を含む)は月約22万円、自営業等で国民年金だけの場合は月約13万円の支給です。そのため、現役時代に自助努力で地道に積み立てていくことも大変重要なのです。
*老齢基礎年金を含む
出典/厚生労働省「令和2年1月24日報道発表資料(公財)生命保険文化センター令和元年度「生活保障に関する調査」
Kさんご一家の場合、共働きのためお二人での合計で標準的な厚生年金支給額よりも多くなるでしょうが、200万円というKさんの預貯金残高は、正直、心許ないことがわかってくるでしょう。
【ポイント2】先取り貯金で「貯まるしくみ」をつくる大切さを知ろう
そこでまず考えたいのは、貯金ができるしくみづくりです。現在のKさん夫婦は、収入から日々の生活費を差し引いた残りのお金を貯金している状況ですが、先々を見据えて決まった金額を将来への備えに回していく必要があります。
そこでおすすめなのが「先取り貯金」です。「先取り貯金」とは、給与天引きなどを利用して、文字通り必要な貯蓄分を先に別口座に移してしまう手法です。給与振込口座には貯蓄分が差し引かれた金額が残っている状態にして、その範囲で生活するようにすれば使い込んでしまう心配がなくなります。
先取り貯金の方法としては、①金融機関の自動積立預金 ②勤務先の財形貯蓄 ③つみたてNISA・iDeCo ④生命保険 などがあります。Kさんがご関心を持たれている外貨建て保険や変額保険はこれらのうちの④に当てはまるものです。NISAやiDeCoも税制面のメリットがとても大きいので今後活用を検討されると良いでしょう。
【ポイント3】先取りで資産運用を!「外貨建て保険」と「変額保険」の違いを知ろう
ここから、Kさんがご関心をお持ちの「外貨建て保険」と「変額保険」の違いについてご説明します。
外貨建て保険とは?
まず外貨建て保険とは、日本円ではなく外国の貨幣(主に米ドル、豪ドル、NZドル等)で資産を運用する保険商品で、「終身保険」「養老保険」「個人年金」などの種類があります。毎月の保険料を外貨で払い込み、資産の運用益、満期保険金や解約返戻金、その他死亡保険金などが外貨で支払われます。
「外貨で払い込む」「外貨で支払われる」と言いましたが、実際には保険料支払い時は日本円で保険料を払い込んだものを保険会社が外貨に変換してくれますし、逆に保険金が支払われる際も保険会社が日本円に変換してくれます。
ただし、いずれの際にも為替手数料が発生します。保険料支払い時は為替手数料が保険料に上乗せされ、保険金が支払われる際には為替手数料分が差し引かれた金額を日本円で受け取ることになります。一般的な円建ての保険商品では発生しない手数料なので、外貨建て保険に加入する際には考慮しておく必要があります。
もう一点、外貨建て保険は「為替リスク」があるということを理解しておく必要があります。「円」と「外貨」の交換相場である為替相場は様々な要因で変動するため、外貨建て資産を保有していると為替変動により損益が発生します。為替レートは安易に予測できるものではなく、また、自分でコントロールできるものでもありません。
外貨は日本円より比較的金利が高い場合が多く、円資産より大きく成長することが期待できますが、これらのデメリットがあることは理解しておきましょう。
変額保険とは?
次に、変額保険です。変額保険とは、生命保険会社の運用実績により、将来の保険金や解約返戻金の額が変動する保険商品で、大きく分けて一生涯保障が続く“終身型”と、保険期間が一定の“有期型”があります。
一般的な生命保険商品と違って、「投資信託のような運用をする保険」と考えるとわかりやすいかもしれません。「株式型」や「債券型」など、加入の際に積立金をどのように運用をするかを自分で決めることができます。運用実績がよければ保険金(死亡・満期)や解約返戻金が増えますが、逆に悪ければ満期保険金や解約返戻金が減ってしまうこともあります。
ただし、運用実績が悪くなったとしても、死亡保険金については加入時に契約した保険金額が基本保険金として最低保証されます。これらの特徴を踏まえると、「死亡保障は確実に確保しつつ、資産運用もしておきたい」という方には適している商品です。
〈表〉「外貨建て保険」と「変額保険」の違い
外貨建て保険 | 変額保険 | |
---|---|---|
概要 | 外国の貨幣(主に米ドル、豪ドル、NZドル)で資産を運用する保険 | 資産を株式や債券を中心に運用し、運用の実績によって保険金や解約返戻金が増減する保険 |
メリット | 円よりも外貨の方が利回りが高い | ・契約した際の死亡保険金額が保障される ・運用実績が良いと、死亡保険金・満期保険金が増える |
デメリット | ・為替手数料がかかる ・為替リスクがある | 運用実績が悪いと、満期保険金が元本割れする可能性がある |
このように、外貨建て保険と変額保険は、特徴が異なる商品です。どちらにもメリット・デメリットがありますので、それぞれを理解した上で、選択するようにしましょう。
Kさんへのご提案内容
今回、Kさんに対しては、外貨建て保険と変額保険の違いの説明を行いました。説明時、Kさんとしては死亡時の保障と運用要素のある「変額保険」を選びたいと仰っていましたが、より具体的に万が一の時に必要なお金を試算したところ、違う選択肢が見えてきたため、以下のようにご提案しました。
(1)万が一に必要な死亡保障。変額保険ではない方法で
一般的に世帯主の「死亡時」には、現在の収入の7割(=月々28万円)は確保したいところです。しかし、公的年金として支給される基本額78万100円+子の加算22万4,500円1)と、会社員が加入する厚生年金から支給される額約150万円2) を合わせても、年間約250万円(月あたり約20万円)しか受け取ることができないため、今のような生活をすることは難しくなることがお分かりいただけると思います。この不足額を生命保険で準備することが必要になります。
そして、このすべてをKさんが興味をお持ちの変額保険にすることももちろん可能ですが、その場合は保険料の予算を大きくオーバーしてしまいます。そのため、掛け捨て型の就業不能保障保険を活用するのが合理的な考え方となります。死亡もしくは病気やケガで所定の状態となり働けなくなった場合には月額15万円を受け取ることができますので、公的年金と合わせれば現在と同水準の生活を維持することができます。
〈表〉ご提案内容
商品 | 月々の保険料 | 保障内容 |
---|---|---|
就業不能保障保険 | 約6,000円 | ・月額 15万円 ・保険期間、保険料払込期間65歳 |
(2)老後資金を変額保険で。医療保険はまずは貯金で
次に、将来のライフイベントに備える方法です。Kさんがご興味をお持ちの変額保険は、特別勘定の運用実績によって満期保険金額や解約返戻金額が変動(増減)します。また、短期で解約された場合には解約控除等があるため元本割れが発生することがあります。Kさん家の現在の貯蓄状況を考慮すると、子どもの教育資金は確実に積み立てていくことが最善かと思いますので変額保険を教育資金への備えとして活用するのは好ましくないと思われます。したがって、教育資金は、児童手当を確実に貯金していくことで備えることとし、夫婦の老後資金のための備えとして変額保険を活用することをおすすめしました。毎月1万円程度の無理のない保険料、かつ、長期スパンで考えれば運用実績の悪化による元本割れといったリスクもある程度軽減することができます。子どもが大学に進学するタイミングで運用実績が良いようであれば、一部を解約して解約返戻金を教育資金に充てることも選択肢とすることができます。
また、がんへの備え(がん保険)や医療への備え(医療保険)もあるに越したことはないですが、保険に未加入の状態から急激に毎月の保険料が増えてしまうと大幅な家計の見直しが必要になってしまいます。そこで、今回はがん保険と医療保険の加入は見送ることにしました。
〈表〉ご提案内容
商品 | 月々の保険料 | 保障内容 |
---|---|---|
① 就業不能保障保険 | 約6,000円 | ・月額15万円 ・保険期間、保険料払込期間65歳 |
② 貯蓄 | 1万円 | 子ども手当てを全額貯金 |
子育て世帯のマネープランニングは少しでも早いタイミングで行いましょう!
Kさん夫婦は、お互いに独身時代から「毎月のお給料を使い切る」という生活をしており、結婚して5年経った現在もその習慣がそのまま続いていました。今回のご相談をきっかけに、子育てを中心に、これからの長い人生では想定以上のお金がかかることに愕然とされる一方で、「このタイミングで具体的な対策を練れたことで安心感が生まれた」と、ほっと胸を撫でおろされました。
将来への備えがおろそかになれば、結局は将来自分たちの負担が増すことになりますし、子どもにも負担をかけてしまうかもしれません。そんなことにならないよう、「長期的な家計の支出スケジュール」とそれに合わせた「お金が貯まる仕組みづくり」、この2つは特に子育て世帯には少しでも早いタイミングで実施してほしいと思います。読者の皆さんの中にも同じような不安や疑問をお持ちの方がいれば、まずは一度私たちに相談してみませんか?
募集文書番号:20-KR13-K010