これから「お金」がどれだけ必要か、どのように準備するべきなのか、年齢や家族構成、そしてライフプランの考え方によって、ひとりひとり違いがあるものです。『お金のホント相談室』では、“生涯にわたる良きパートナー”として、現在の家計の状況やライフプランに応じて最適な提案を行っている東京海上日動あんしん生命保険のライフパートナーから、実際にあった提案事例をご紹介していきます。

今回は、会社員のHさん(30歳)からのご相談をライフパートナーの星野 大輔より紹介します。

この記事の著者

星野 大輔(ほしの だいすけ)

東京海上日動あんしん生命保険
広島支社所属のゼネラルライフパートナー
2020年度MDRT成績資格会員 生命保険協会認定FP 相続診断士 住宅ローンアドバイザー。

主に中四国地方の企業にて年間平均60回以上の講演や社員研修の講師業務を請け負い、家計改善・資産形成・住宅購入時の資金計画・自動車の買い替え計画・各種保険・確定拠出年金・相続対策等幅広い分野の個別相談業務も年間平均300件以上こなす。 徹底して無駄を省いた合理的な保障設計と最適な資産運用のバランスを取るプランニングを得意としています。

画像: 画像:iStock.com/ kyonntra ※この画像はイメージです

画像:iStock.com/ kyonntra ※この画像はイメージです

【今回のご相談者】

Hさん:30歳(会社員、第1子妊娠で産休中)
家族構成:夫30歳

世帯収入:約700万円(夫;手取り月収約20万円・妻;手取り月収約17万円〈産休前〉)
家賃:7万円/月
生活費(食費、水道光熱費 等):約20万円/月
貯蓄合計:約500万円(貯金10万円/月)
生命保険:夫婦で合計約1万円/月(会社の団体保険・県民共済等)

第1子を授かり、産休を取得中。できれば子どもはあと2人欲しいと考えており、戸建てのマイホーム購入も検討中。

【ご相談内容】

  • 出産後、育休を経て仕事に復帰する予定だが時短勤務となる見込み。支出が増える一方で、収入が減ることが心配。
  • 今後の働き方についてもアドバイスしてほしい。


近々子どもが生まれるということで、喜び一杯! でも、今後収支のバランスが大きく変化してしまうことが心配…、という新婚のご夫婦からの相談です。

子どもが生まれると何かと支出も増えますので、今より収入が減るということは大きな心配事でしょうね。しかし、収入計画をしっかり立てておくことでそんな心配も回避できるはずです。Hさんに私からアドバイスさせていただいたポイント2点をお伝えします。

【ポイント1】産休中・育児中の収入減と支出増を把握しよう

産休・育休中にお給料が出ると勘違いされている方が少なくありませんが、お給料を出してくれる企業は非常に稀です。しかし、その代わりに、様々な手当てや給付金制度があり、出産・育児にかかるお金をカバーすることができます。

〈表〉産休中・育休中の給付金制度

手当・給付金金額の目安・計算方法
産休中① 出産一時金42万円
② 出産手当金日給×2/3×産休で休んだ日数
(出産42日前~出産56日後)
育休中③育児休業給付金月給の50~67%×育休月数
④ 児童手当5,000~15,000円/月
(所得や子どもの年齢によって異なる)

②③がお給料代わりとして産休・育休中に受け取ることができるお金です。とはいえ、②③はそれまでの給与よりは額は小さくなるため、収支のバランスはこれまでと変わることになります。

さらに、夫婦での生活費に加えて、新たに育児費用がプラスでかかるため、支出は増えるのが一般的です。子どもが生まれてから1年間でかかる平均的な費用は約93万円というデータ1)があります。

子どもが生まれる時には、上記の表の計算方法を用いて、一度、収入と支出のシミュレーションを行ってみると良いでしょう。(Hさんを例にした具体例は、以下でご説明します)

【ポイント2】時短勤務は2〜3割減が目安。ライフプランと共に働き方を考えよう

産休・育休時の計算が完了したら、次に職場復帰された後について考えてみましょう。職場や環境によって変わりますが、時短勤務中の給与の計算式は以下のとおりです。

〈表〉時短勤務中の給与月額の簡易計算法

時短中の給与 =
基本給 × 実労働時間(※1)÷所定労働時間(※2)
(※1)1日の勤務時間 × 1カ月の出勤日数
(※2)8時間 × 1カ月の所定労働日数

たとえば、勤務時間を産休前の8時間から6時間に短縮すると、25%相当が減額となり、ボーナスも給与と同じように勤務時間を短縮した分、減ることになります。また、時短勤務をするにあたって仕事内容や職種にも変化があった場合は、短縮時間分以上にボーナスが少なくなる可能性もありますので注意が必要です。

また、職場復帰するにあたっては子どもを預ける場所が必要となり、そのための費用が発生するということを忘れてはいけません。令和元年10月より3~5歳児の幼稚園・保育所の利用料は無償化されましたが、0~2歳の間は一部を除き無償化の対象外です2)。子ども1人当たりの月額保育料は地域などによって差もありますが約21,000円が平均というデータ3)があります。これらの点を踏まえると、収入減と支出増が想像以上に大きいことがイメージできるでしょう。そのため、「小さな子どもがいるので職場復帰の際は時短勤務」と決めつけず、家事の夫婦での負担やHさんの体調など、環境が許すのであればフルタイムで働くという選択肢もあることは頭の片隅に置いておきましょう。

時短勤務には育児や家事にかけられる時間が増え、パパママにも気持ちの余裕が生まれるというメリットがある一方で、フルタイムと比べると給料が大幅に減ってしまうことを覚悟する必要があります。しかしながら、夫婦ともにフルタイムで働くことで、収入を確保するとともに、協力関係を築いて一緒に子育てをしているという感覚を持てる点でメリットがあるという方も多いものです。ご夫婦で話し合ってみてはいかがでしょうか?

また最近は、コロナ禍で働き方にも変化があり、在宅勤務のウェイトを高めようとしている企業も増えています。勤め先の先輩や同僚から情報収集してみるというのも良いかもしれません。

様々なバックアップ制度を利用して家計にとって、また家族にとって良い選択を検討されると良いと思います。

【ポイント3】 人生の節目こそ、家計の見直しを

職場復帰後の働き方をどのようにするにせよ、当面は収入が減ることは間違いありません。子どもが生まれた後はこれまで想像もしてこなかった出費も発生します。こういったライフスタイルが変わるタイミングでは家計を見直し、適正な収支をキープしていくことを目指しましょう。

家計を見直す時は、一度削減することで長期間にわたって支出を減らすことができる「固定費」の削減から始めることがおすすめです。

〈表〉家計の固定費とは

  • 居住費(家賃・住宅ローン)
  • 公共料金(電気・水道・ガス)
  • 通信費
  • 保険料
  • 教育費 など

たとえば、スマホを大手キャリアのものから格安SIMに乗り換えて月額料金を引き下げる、不要なオプションを解約するといったことは比較的簡単にできる節約法です。

また、を所有していると、駐車場代や自動車保険料、自動車税、ガソリン代など様々な維持費が発生します。車をあまり利用しなくても不便がないとお考えであれば思い切って車を手放すというのもひとつの選択肢でしょう。

さらに、保険の見直しも固定費を削減する大事な手段です。“何となく”で保険に加入し、必要以上に大きな保障を付けていて余計なお金がかかっているといったことは少なくありません。

もちろんこれから子どもが生まれてくる大事な時期ですのでやみくもに保障を削減してはいけませんが、「公的に受けられる保障をしっかり確認したうえで必要最低限の保障に見直す」「貯蓄型の保険を掛捨て型に見直す」「終身タイプから一定期間のみを保障する定期タイプに切り替える」といった方法で保険料を今よりも削減できるかもしれません。

Hさんへのご提案内容

さて、上記の3点を踏まえて、Hさんへのアドバイスとご提案内容をお伝えします。

(1)産休・育休時のシミュレーションのご提示

Hさんの産休前の手取り月収は17万円です。現在(産休中)、そして育休に入った場合の支給額を計算してみましょう。

〈表〉Hさんが産休・育休中に支給されるお金

項目支給金額
①出産一時金42万円
②出産手当金約43万円(※3)
③育児休業給付金育休開始〜180日目:約13万円/月(※4)
181日目以降:約10万円/月(※5)
④児童手当0~3歳未満:1.5万円/月
(※3)日給×2/3×産休で休んだ日数。日給は、支給開始日以前の連続した12カ月の平均報酬金額を30日で割った金額。
休んだ日数は98日で算出。
(※4)平均報酬月額×67%×育休月数。平均報酬月額は、支給開始日以前の連続した12カ月間の平均報酬金額。
(※5)平均報酬月額(※2)×50%×育休月数。

出産前後には85万円ほど、育休中は児童手当も含めると、開始から180日目までは月13万円+1.5万円、180日目以降は月10万円+1.5万円が支給されることになります。

元々の手取り月収から考えると、育休中は月々約3〜6万円の減収が見込まれます。また、プラスされる育児費用を月々約8万円と想定して、育休業中の収支シミュレーションを見てみましょう。

〈図〉Hさん家の収支シミュレーション(育休中)

画像: 〈収入の内訳〉ご主人の月収+ボーナス(6・12月目)、Hさんの育児休業給付金、児童手当 〈支出の内訳〉生活費毎月20万円+子ども関連費用8万円 (注)正確には、育児休業手当の支払いは2カ月に1回。4月1日から育休が始まった場合、「4月1日~4月30日分」+「5月1日~5月31日分」を6月1日以降に申請、その約1週間後に指定口座に振り込まれるため、実際の給付までは3カ月前後かかる。

〈収入の内訳〉ご主人の月収+ボーナス(6・12月目)、Hさんの育児休業給付金、児童手当
〈支出の内訳〉生活費毎月20万円+子ども関連費用8万円
(注)正確には、育児休業手当の支払いは2カ月に1回。4月1日から育休が始まった場合、「4月1日~4月30日分」+「5月1日~5月31日分」を6月1日以降に申請、その約1週間後に指定口座に振り込まれるため、実際の給付までは3カ月前後かかる。

Hさんが働かれていた時と比べると収支は拮抗しますが、プラスは保てそうです。

ここで一点付け加えておかなければいけない点がHさんの社会保険料に関してです。産育休中には所得がなくなりますので社会保険料は免除になりますが、前年の所得に対してかかる住民税は自分で支払う必要があります。

年収300万円であれば、3カ月ごとに3万円程度、年間では12万円程度になります。年間収支に大きな影響を与えるほどの額ではありませんが、こういった小さな違いが積み重なることで収支バランスは崩れてしまうことを意識するようにしてください。

(2)職場復帰後のシミュレーションと、その後の働き方のご提示

次に、職場復帰後の収支シミュレーションをしていきましょう。たとえば、勤務時間を8時間から6時間に短縮した場合、17万円だった手取り月収は、約15万円となります。また、ボーナスもそれに準ずる形で少なくなるでしょう。

一方、上記で説明した通り、子どもを預ける必要があるため、月々の保育料がかかります。これらの収支を概算すると、以下のとおりです。

〈図〉Hさん家の収支シミュレーション(時短勤務の1年目)

画像: 〈収入の内訳〉夫の月収+ボーナス(6・12月目)、Hさんの給与、児童手当 〈支出の内訳〉生活費毎月20万円+子ども関連費用8万円+保育料2.1万円

〈収入の内訳〉夫の月収+ボーナス(6・12月目)、Hさんの給与、児童手当
〈支出の内訳〉生活費毎月20万円+子ども関連費用8万円+保育料2.1万円

手元に残るお金は、育休中とそこまで変わりません。しかしながら、第2子・第3子も考えている場合、今後Hさんの収入はさらに低くなることが予想されますし、ご自宅の購入も考えていらっしゃるなら、余裕資金を十分に確保しておくことはとても大切です。

難しいかもしれませんが、場合によっては、子どもが3歳になるまでの保育料がかかる間は実家に預けて、3歳になってから幼稚園・保育所を利用するという選択肢もあります。

このように具体的にシミュレーションを行うことで、収支の観点からどのような働き方が望ましいか、利用できる環境要因がないかを見つける材料とするよう、アドバイスを行いました。

(3)ライフステージの変化に伴う、保険・資産運用のご提案

そして最後に、家計の見直しの一環として、上記で告げたスマホ代の削減方法、自動車費用の見直しに加えて、保険の見直しを提案しました。

これまでHさんは夫婦で約1万円の民間保険に加入されていましたが、今後子育て資金が増大することやご夫婦の老後資金を確保することの重要性を考えると、保険や投資などの金融商品への加入はある程度手厚くした方が望ましいでしょう。ご提案したのは、下記のとおりです。

① 医療保険:病気やがんに手厚く備える
収入が減少する中で、万が一病気やがんにかかった場合にかかるお金を保険でカバーすることを考え、夫婦ともに医療保険・がん保険への加入をおすすめしました。なお、長引く入院にも備えられるよう、ある程度充実した特約を付加することも肝心です。

〈表〉医療保険・がん保険の内容

項目月々の保険料保障内容
医療保険6,000〜7,000円入院日額5,000円
がん保険3,000〜4,000円診断給付金100万円

② 死亡保険:ご主人の万が一の事態に備える

収支シミュレーションでもおわかりの通り、ご主人に万が一のことがあった場合、ご家族の家計は苦しい状況になります。そのため、ご主人は死亡保険にしっかり加入しておくことをおすすめしました。なお、死亡のほか、病気等で働けない状態になった場合でも、保険金の支払いがある商品がベターです。ご提案した商品は下記の通りですが、足りない分は加入済の団体保険と公的保障でカバーすることを想定しています。

〈表〉死亡保険の内容

項目月々の保険料保障内容
収入保障保険(就業不能保障付)3,000〜4,000円月額10万円(死亡または所定の就業不能状態になった場合)

③ じぶん年金つくり:老後資金を今のうちから貯めておく

老後資金のすべてを公的年金だけで賄うことは難しいとご存知の方もいらっしゃるでしょう。また、今後Hさんご夫婦は第2子・第3子もお考えです。もし、Hさんが船業主婦になられた場合、(Hさんの)厚生年金分が減額され、老後の年金支給額が減る恐れがあります。そのため、今のうちから賢く老後資金を作ると良いでしょう。Hさんご夫婦には、節税効果があり、運用方法を自身で選択できることから、比較的安定運用を行いやすいiDeCoをおすすめいたしました。

〈表〉資産運用の内容

項目月々の掛金備考
iDeCoご主人…1万円
Hさん…5,000円
・確定申告により、掛金すべてが所得控除の対象になる

妊娠出産や子どもにかかるお金と合わせて、Hさんの今後の働き方も検討しましょう

子どもの出産は大きなライフイベントであるとともに、マネープランを見直す大きな転機でもあります。

支出だけでなく、一家の収入も大きく変わりますので、家計の一部分だけでなく全体をしっかりと俯瞰して今後のマネープランを立てることで、より充実した生活が実現できるのではないでしょうか。
出産というライフステージの変化の時、ぜひ家計全体を見直してみましょう。なお、厳密なシミュレーションやプランニングには、お金の専門家の手助けがあると、より良いプランニングを行うことが可能になると思います。もしご興味があれば、無料相談を利用してみてください。

募集資料番号:20-KR13-K008

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