じつは筆者である私もそのひとり。けれど、保険の話はなかなかする機会が少ないものですよね。
「金銭的に余裕がないなかで、どの程度お金を回すべき?」
「加入するなら、どんな保険を選べばいいの?」
たった1つの商品を決めるとしても、疑問は尽きません。そこで、私たちと同世代のお金の専門家・横川楓(よこかわ かえで)さんに「20代が知るべき保険のポイント」を伺いました。
必要?そもそも保険って?
20代が陥る「保険の悩みあるある」
―個人的に、多くの方が保険について初めて考える時期は、社会人になったタイミングなのではと思っています。でも、正直、わからないことだらけで…。そもそも、絶対必要なのでしょうか?
やはりそこは考えますよね。20代の方からは「保険に入るべきなのか」という悩みは1番多く聞きます。そもそも必要ないと感じていらっしゃる方も多いですし、医療保険・生命保険がどういうもので、それぞれどのようなしくみなのかを理解できていない方も多いです。
やはり皆さん悩んでいらっしゃるのですね…。20代はそこまで健康に気をつけることもありませんし、なおさら「必要なのか?」と感じてしまいます。
そうですね。ただ、体が弱い方や、弱い自覚がある方は入っておいた方がいいです。じつは私も体が弱くて、早めに入りましたし(笑)。それに20代前半のうちは健康と思っていた方でも、働いているうちに精神を病んで、体を壊してしまうこともあります…。1~2年ごと、自分の体調と共に見つめ直すことも大事だと思います。
なるほど。実は私、最近初めて自分で保険の検討をしたのですが、しくみを理解しようと思っても、まず用語の意味が分からなくて苦労しました。
用語が難しいというのは、保険に限らず「お金あるある」だと思います。お金に関する話は基本は自分で調べて読み解かないといけないのですが、その理解を助けてくれるものとして、金融広報中央委員会の「知るぽると」(shiruporuto.jp)というサイトがおすすめです。
知るぽると! 初めて聞きました。
日本銀行が事務局を務めている「金融広報中央委員会」が運営するサイトです。保険に限らず、住まい・老後についての情報も詳しく記載されています。大学生向けの説明もあるような、非常に分かりやすいサイトなので、お金に関して知りたいことがあったら、まずはこのサイトで基本中の基本を調べるのがおすすめです。
20代の保険加入率は約59%。
ただ、内容を理解している人は少ない
先ほど、20代では「そもそも保険に入るべきかを悩む方が多い」というお話がありましたが、実際のところ、どれくらいの方が保険に加入しているのでしょうか?
実は、20代の加入率が低いというわけではありません。公益財団法人「生命保険文化センター」の「生命保険に関する全国実態調査」によると、20代の保険加入率は約59%との結果が出ています1)。
〈図〉20代・30代の保険加入率
約59%ですか! 個人的なイメージと比較すると、高い印象です。
自分の意思で「保険に入ろう」と思う方は少ないかもしれませんが、ご両親から言われて加入した方は多いと思います。こちらも実際にデータに出ていて、20代が保険に入る「きっかけ」として、男性では約34%、女性では約33%の方が、「家族や友人にすすめられて」と回答しています1)。
〈図〉20代が保険に加入したきっかけTOP3
また、ご両親が自分の入っている保険に子供をそのまま加入させる、という形もあるので、自分の知らないところで入っていたというパターンも多いと思います。
なるほど。加入率は高いけれど、自分で内容を検討したり、理解したりした上で入っているという方は、多くはないのかもしれないですね。
そうですね。自分で検討して、というのは少ないと思います。それに、このようなアンケートや統計の対象として入っていない方も少なくないはずです。保険には入っていないけれど統計から漏れているために反映がされず、結果として実感値よりも高い数値が出ている可能性はあると思いますね。
この調査では約40%の方は保険に加入していないという結果でしたが、20代のうちに保険に入らないことには、どのようなリスクがあるのでしょうか。
正直、20代で突然病気になる方というのは、数で言えば少ないと思います。ただ、今回の新型コロナウイルス感染症のように、いつ病気が流行するか、かかってしまうかは誰にも分かりません。
日本では、予期せぬ病気などで入院してしまった場合でも、公的医療保険制度によって治療にかかる自己負担額は軽くなります。しかし、全額が保障されるわけではありませんし、個室や少人数の病室を希望した時にかかる差額ベッド代や食事代などもかかります。
なるほど。公的な医療保険だけでは全てまかなうことはできないんですね。
その点、民間の医療保険なら、病気がかかった時点で一時金がもらえたり、入院や通院の日数に応じて日割りで給付金がもらえたりするのが強みです。また、保険を検討する時には、病気へのリスクを予測するという意味でも、ご両親などに既往歴を確認するのもおすすめです。
もしもの時を考えると、ついつい保障を手厚くしてしまいたくなるのですが…。「ここまでは保障をつける」と、ラインを決める時のアドバイスはありますか。
保険は保障を手厚くすればするほど高額になってしまうため、まずは自分の収入と相談した上で決めるのが良いですね。特約(オプション)などは後からでも追加できるものもあるので、20代のうちは基本的な疾患のみの保障、お金に余裕ができたらより手厚い保障を追加する、という形でも良いと思います。
損をしないための教養を。
20代が知っておくべき保険の5つの知識
実際に保険に加入するとなった時、考えるべきこと知っておくべきことなど様々あると思います。20代が保険に加入する時、損をしないためにも知っておいた方が良い知識を教えてください。
〈表〉損をしないために知っておきたい5つの知識
保険は高い、というイメージがありますが、1,500円~2,000円程度の商品もあります。商品によって保障内容が異なるため一概には言えませんが、5,000円以下であれば保険料としては安いと言えるでしょう。また、年齢が若い時に加入した方が基本的に費用は安いので、入るのであれば若い方が良いですね。
また、保険には収入の補填の役割があるということも理解しておきましょう。入院をすると収入が途絶えてしまうことになりますが、保険に加入していれば、給付金がもらえます。さらに、先程お話した通りですが、公的な医療保険の範囲外の費用をまかなえるのもメリットです。
掛け捨て保険と貯蓄型保険とを比較すると、お金が返ってくる貯蓄型に比較して掛け捨ては何も良いところがないと思われることが多いです。しかし、掛け捨ての保険でも加入していることで、年末調整で還付金を受けられる場合があります。健康な人でも、ただ支払ってばかりではないことは知っておきたいですね。
掛け捨てと貯蓄型では保険料に大きな差が出るので、それぞれのしくみを理解しておくことも重要ですよ。
妊娠・出産を考える前には、必ず保険の検討を
20代は特に女性にとってライフステージの変わり目になる機会があり、気をつけることも多い時期だと思います。そこで、20代女性が保険に加入する時に気をつけるべきポイントや、保険を知ることによるメリットはどのようなことがあるか教えてください。
確かに、女性には妊娠・出産と男性とは違うイベントがあるので、保険を選ぶ時にも考慮する必要があります。
子宮の病気にかかってしまったり、出産が帝王切開になったりしてしまうと、その後に医療保険に加入しようとしても難しい場合があったり、通常よりもお金をかけないといけなくなってしまう可能性が高いです。妊娠・出産を考える前には、保険を入ることを検討した方がいいですね。
ただ、実際に妊娠・出産をするのは女性とはいえ、保険に関しては男女問わず知っておいて欲しい知識です。結婚をしたあとのイベントは、金銭的に言えば、家計の話になりますよね。家計をサポートするという意味でも、男性にも知っておいてほしいです。
保険とは「将来の自分にあげるお金」
今回私自身が保険を検討してみて、自分だけで調べるのにはどうしても限界があり、もっと身近な人と保険の情報交換できるようになれば、より前向きに取り組めるのに…と感じました。どうしたら気軽に情報交換できるようになるでしょうか。
保険のこと自体なかなか話題にあがる機会がないので、自分自身も話題にすることがないという人がほとんどかと思います。だからこそ、情報が不足していて、みんな実は知りたいと思っているのに、知ることができない状況。むしろ多くの人が情報交換したいと思っているはずです。保険の話をしたいと思うのであれば、まずは自分から積極的に話題に出していくことで、周りの人も話やすくなると思いますよ。
ありがとうございます。それでは最後に、これから保険を選ぶ方へ、アドバイスをお願いいたします!
20代のみなさんの中は、「保険に1万円使うのであれば、今は好きなことに使いたい」という方もいらっしゃると思います。私自身、今しかできないことを楽しむのは非常に大事だと考えているので、その気持ちを諦めることは推奨しません。
ただ、もし将来への不安が少しでもあるのであれば、1万円のうち2,000円を、保険に回してみてはいかがでしょう。趣味や楽しみは「今の自分」が得をすること、保険は「将来の自分」が得をすることです。
今の自分にどれだけ使って、将来の自分にどれだけ渡すか。「保険は将来の自分にあげるお金」という考え方をすると、少し関心を持ちやすくなるかもしれません。
コロナウイルスのことがあったように、どのような病気が流行して、いつ自分がかかるかというのも分からないものです。健康に少しでも不安があるのであれば、安価なものでも良いので、検討しておくことが大事ですよ。
この記事の著者
ながた さや
ウェブライター。1993年生まれ。新卒でIT企業のエンジニアとして勤務後、2018年9月からフリーランスのウェブライターとして活動を開始。SEO・取材を中心に、美容・旅行・ITなど様々なジャンルの執筆を行っている。
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