▶︎連載「あんしん解体新書」の記事はコチラ
今回お話を聞いた人
東京海上日動あんしん生命 企画部・商品開発グループ
岡本直宏
2018年、東京海上日動火災保険入社。関西営業第一部営業第一室で、製薬企業のリスクマネジメントなどを担当後、現職。商品開発、サービス開発・管理などを担当。この10月に結婚式を挙げたばかり。
入社4年目にしてゼロから保険商品の開発を担当
大学院で脳科学を研究していたという岡本。日々、ひとりで黙々と対象に向き合って行う研究よりも、多くの人と関わりながら世の中に貢献する仕事に惹かれて保険業界に入りました。
入社後3年間は製薬会社の営業を担当し、2021年よりあんしん生命の商品開発グループに配属。そこで手がけた保険商品が、「あんしん治療サポート保険」でした。俳優・西島秀俊さんのCMをご覧になった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
『あんしん治療サポート保険』の特徴は大きく2つあります。1つ目は、8つの生活習慣病の入院・手術はもちろん、「通院から保障する」こと。
「『あんしん治療サポート保険』が業界初の商品である理由は、『特定心疾患』と『特定脳血管疾患』を通院の段階からきちんと保障する点です。生命保険会社他社で既に販売されている医療保険でも7〜8種の生活習慣病に対応する商品はあったんですが、『特定心疾患』と『特定脳血管疾患』の通院に関しては、対象外になっていたんです(2023年8月2日時点)」
2つ目のポイントが『早期治療支援特約』。
「これは、お客様が健康診断を受けた、その結果の数値に応じて給付金をお支払いするという特約です。病気の早期発見をサポートすることで1人でも多くのお客様に生活習慣病へ備える意識を持っていただきたいと考えました」
開発のきっかけは「シニアの健康維持」のため
「あんしん治療サポート保険」は生活習慣病のリスクが高いシニアを主な対象とした医療保険です。そもそもどういう狙いでこの新しい保険商品を開発することになったのでしょうか。
「昨今、シニアのみなさんの意識が変わられています。最近は通院での治療が増えており、入院しないと保険金が給付されないタイプの医療保険に加入した方にお話をうかがうと、『入院が遠く感じられる』というお声が多いんです。『保険を全然活用できていない』とおっしゃるんですね。加齢と共に生活習慣病は気になるものの、入院するほどのことはないケースも多いみたいなんです。ですので、入院や手術より前の、通院段階から保障できる商品があれば、よりお役に立てると考えたのが、開発のきっかけです」
実際に厚生労働省のデータを見ると、8大疾病による通院患者の数は、入院患者の約44倍にも上ると発表されています1)。
「生活習慣病の治療を保障する特定疾病治療保険は、すでに業界内では提供されていたのですが、対象疾病すべてで通院治療から保障する商品はまだなく、シンプルに8大疾病による通院に保険金をお支払いできる商品を打ち出しました。
また、気になる生活習慣病への備えとして、病気が発症する以前に、予防できるに越したことはありません。そこで、『早期治療支援特約』をご用意し、併せて、よりわかりやすく保険を活用していただけるよう、『あんしんヘルスケア』という専用のウェブアプリも開発しました」
参考資料
全ての部署が関係者。新商品開発の裏側
では、新商品開発の流れを簡単に説明します。あんしん生命では、年間を通じていくつかの新商品検討が並行して行われます。今回の新商品を担当するのは、7人の商品開発グループメンバーのうち2名。岡本が「あんしん治療サポート保険」の開発メンバーに選ばれたのは、2021年の冬のことでした。
「最初は何も決まっていません。世の中のニーズや医療分野の新たなソリューションなどをリサーチし、まずマーケットを決めるんです。シニア層向けか、若年層向けか、はたまた法人向けか。そしてどんな商品にするか。3カ月ほど費やして、論議を行い、マーケット候補とそれに対する商品案を絞り込んでいきます」
新商品のアイデア出し自体はチーム内だけでも進めることができますが、実際に商品をつくりあげていくには、関係する部署すべてを巻き込むことになります。全社で商品を作り上げる、これこそが商品開発の醍醐味だと岡本はいいます。
「新商品の内容を共有すると、我々だけでは到底気づくことのできなかった課題が次々と浮彫になります。それぞれの業務で第一線を担ってきたみなさんだからこそわかる課題が次々出てくるので、それらを1つ1つどの案が望ましいのか、どういう課題解決の方法があるかを担当部署とともに考えるんです。この課題解決には、関係部の皆さんの知見が不可欠で、多くの人から情報を得ながら、それを集約し、全社最適の観点で、適切に判断していくことが求められます。」
“全社最適”とは、会社やチームなど、組織全体がお客様のニーズに応える商品を開発するという共通の意識を持ち、併せてビジネスモデルが最適化された状態のこと。黙っていて実現するわけではなく、岡本たちのチームが各部署間を行き来して商品の社会的意義を説きつつ“最適化する”ことが、新商品開発の重要な仕事であり、醍醐味なのです。
「なぜ新商品をつくるのか」を我が事として
社内を行き来して、各部署のプロフェッショナルたちと交渉し、最適な解を見つけ出すーー。これは、岡本が研究畑にいたころ望んでいた、多くの人と関わりながら世の中に貢献する仕事。そこで、大切なのは職業的なスキルではなく、新商品に対する想いだといいます。
「ルーティーンだから対応する、担当者だからやる、というようなやり方ではうまくいかないですね。自分たちが、なぜその商品を世に出したいと思っているのか。どういう社会的意義があるのかを、相手が腹落ちできるよう話すことを心掛けています。そうすれば、部署は違っても私たち全員が共通の目的意識を持つことができる。業務量が増えても、難しい仕事が出てきても『よし、やろう!』と思って動くことができるんですよね」
それはつまり、社会課題を自分のこととして捉え、解決を心底望むこと。新商品「あんしん治療サポート保険」をゼロからつくり出す経験を経て、岡本自身も自分ごととして感じることができたといいます。
「この商品のキーワードは、早期治療・早期発見です。プライベートの話になりますが、じつは私の父がステージ4のがんなんです。いま現在は前向きに治療も頑張っているのですが、そこに至るまでに、何年も前から健康診断のよくない数値をずっと放置していた経緯がありまして…。
このようなことは、おそらく全国のいろいろな家庭で起きているんだろうなと思います。この商品が、通院するきっかけになればいいと思いますし、多くのシニアのみなさんの早期治療・早期発見に少しでも役立てばうれしいですね」
そして新商品開発は続く
あんしん生命企画部・商品開発グループには、元・脳科学研究者をはじめ、生命保険営業のエキスパート、ヘルスケア領域のエキスパートなど、バラエティに富んだメンバーが揃っています。そんな多様な能力が組み合わさることで、様々なお客様に求められる革新的な新商品が生み出されるのかもしれません。
「あんしん生命の商品開発は、つねに業界に先駆けているし、その必要があると思っています。何が新しくて、どのように世の中のお役に立つのかは常に問われます。新たな保険商品を通じて様々な方によりよい生活を送っていただけるよう、しっかりと戦力になれるよう、頑張っていきたいですね」
岡本はすでにいま、次の新商品開発に向けて奮闘の日々を送っています。
▼▽ほかのインタビュー記事はコチラ▼▽