「iDeCoの加入中に転職したら、iDeCoはどうなるの?」「転職先に企業型確定拠出年金(企業型DC)や確定給付企業年金(DB)がある場合は、iDeCoは継続できない?」転職に際して、そんな疑問を抱えている人もいるのではないでしょうか。

この記事では、ファイナンシャルプランナー・山中伸枝さんの監修のもと、転職時のiDeCoの選択肢と手続き方法を解説します。

iDeCoの制度などについて、知りたい人は以下の記事で紹介しているので、併せてご覧ください。

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この記事の監修者

山中 伸枝(やまなか のぶえ)

ファイナンシャルプランナー。株式会社アセット・アドバンテージ代表取締役。「FP相談ねっと」代表、一般社団法人公的保険アドバイザー協会理事なども務める。著書に、『ど素人が始めるiDeCo(個人型確定拠出年金)の本』(翔泳社)、『50歳を過ぎたらやってはいけないお金の話』(東洋経済新報社)など。

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iDeCo加入中、転職する場合はどうすればいい?

画像: 画像:iStock.com/maruco

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iDeCoに加入している人が転職する場合、なんらかの手続きが必要なのでしょうか。ここでは、iDeCo加入中に転職した時の手続きの有無と、手続きせず放置した場合について解説していきます。

iDeCoは継続できるが、手続きが必要

転職をする場合、iDeCoはそのまま継続することが可能です1)。ただし、登録情報の変更届を提出するなどの手続きが必要になるため、できるだけ早く手続きを行いましょう。

また、iDeCoで積み立ててきた年金資産は手続きをとることで持ち運ぶこと(ポータビリティ)が可能になります。必要条件を満たせば、転職先の企業型DC、確定給付企業年金(DB)などに年金資産を移換することも可能です。ただし、いずれの場合も金融商品を現金化した上で移すことになります

転職後、変更届や移換をせずに放置した場合のリスク

転職後、手続きが遅れたり、放置してしまったりした場合は注意が必要です。詳しくは後述しますが、iDeCoの拠出限度額は国民年金の加入区分によって異なります。そのため、転職先により加入区分が変わると、掛金上限額を超えて掛金を積み立ててしまうことがあります。上限を超えた分は返金されますが、その際に手数料1,048円がかかります。また、移換手続きをしなかった場合も同様です。

iDeCoを継続する場合は、拠出限度額の変更に注意

転職先に企業型DCや確定給付企業年金(DB)などがある場合、iDeCoをそのまま継続したいと思っても、これまでと掛金の拠出限度額が変わる可能性があります。拠出限度額は以下のように、国民年金の加入区分のほか、企業年金の有無や種類によっても異なります2)

〈表〉iDeCoの上限額(拠出限度額)

加入資格拠出限度額(月額)
第1号被保険者
(フリーランス、自営業者)
6万8,000円
(※1)
第2号被保険者
(会社員、公務員など)
勤め先に企業年金がない人2万3,000円
企業型DCのみに加入している人2万円
DB(※2)と企業型DCに加入している人1万2,000円
(※3)
DBのみに加入している人1万2,000円
(※3)
公務員など
第3号被保険者(専業主婦〈夫〉)2万3,000円

※1:国民年金基金または国民年金付加保険料との合算枠。
※2:ここでいうDBは確定給付企業年金のほか、厚生年金基金、石炭鉱業年金基金、私立学校教職員基金を含む。
※3:2024年12月以降2万円に変更。

なお、掛金の変更はiDeCoの登録情報の変更届を提出する時に行うことができます。

【ケース別】iDeCo加入中に転職や退職をした場合の手続き方法

画像: 画像:iStock.com/takasuu

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iDeCoの加入中に転職や退職をした場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。ここでは、7つのケース別に手続き方法を紹介しますので、参考にしてみてください3)

以下でそれぞれについて詳しく説明します。

①転職先に企業年金がない場合

転職先に企業年金がない場合、加入者としてiDeCoを継続することになります。その場合、運営管理機関に以下の登録情報の変更届を提出する必要があります。

フリーランスの人や自営業者が就職した場合には、国民年金の加入区分が変わるので、「加入者登録事業所変更届」の代わりに「加入者被保険者種別変更届」を運営管理機関に提出します。

なお、加入者から運用指図者(※)になることも可能です。その場合は運営管理機関に「加入者資格喪失届」を提出します。

※:掛金の積み立てを行わず、年金資産の運用の指図のみを行う人のこと。加入者資格がない人や、本人の希望で加入者資格を喪失し、運用指図者となることも可能。

②転職先に企業型DCがある場合

企業型DCとは、会社が掛金を負担し、加入者本人が運用を行う私的年金制度です。会社によっては、会社の掛金に従業員が上乗せして掛金を振込みできるマッチング拠出が可能です。

転職先に企業型DCがある場合は2つの選択肢があります。ひとつめは、転職先の企業型DCとiDeCoの併用です。この場合、企業型DCでマッチング拠出をしないこと、事業主掛金が年単位拠出となっていないことが条件となります。

iDeCoを継続する手続きは、「①転職先に企業年金がない場合」と同じです。なお、前述のとおり企業型DCに加入した場合は、iDeCoの掛金の上限額が2万円になるため、iDeCoの継続手続き時に併せて変更しておきましょう。

併用する場合、iDeCoは運用指図者として運用のみを継続するという選択もあります。手続き方法は、運営管理機関に「加入者資格喪失届」を提出します。またその際は企業型DCでマッチング拠出をすることが可能です。

ふたつめの選択肢は、転職先の企業型DCにiDeCoを移換することです。このケースは、iDeCoの加入者の資格を失効させなければいけません。そのためには、加入者資格喪失届」を運営管理機関に提出する必要があります。詳しい手続きについては、転職先企業の担当者に聞いてみましょう。

iDeCoで運用した年金資金を企業型DCに移換する際は、金融機関によっては手数料がかかります。そのため、企業型DCの運用商品がとても魅力的である、といった場合以外には移換はあまりおすすめしません。企業型DCに加入しつつもiDeCoを併用することも可能なので、企業型DCにiDeCoを移換するメリットがあるのかどうかしっかり検討しましょう。

③転職先に確定給付企業年金(DB)がある場合

確定給付企業年金(DB)とは、勤め先と従業員の合意のもと、将来受け取る年金給付額を設定する企業年金制度です。将来受け取れる年金給付額が固定されることが特徴で、掛金の積み立てや資産の運用は会社が行います。

転職先に確定給付企業年金(DB)がある場合も、確定給付企業年金(DB)に加入した上で、iDeCoを継続することができます。iDeCoの掛金上限は、1万2,000円となります(2024年12月以降は2万円)。ただし、勤め先の確定給付企業年金(DB)の額によっては、上限いっぱいまでiDeCoの掛金を積み立てできない場合もあるので、詳細は会社に確認しましょう。

また掛金を追加で積み立てせず、iDeCoの運用指図者として運用のみを継続するという選択もあります。手続き方法は、運営管理機関に「加入者資格喪失届」を提出します。

なお、確定給付企業年金(DB)の規約に「確定拠出年金の個人別管理資産を受入れることが可能」と定められていれば、iDeCoの年金資金を確定給付企業年金(DB)へ移換することもできます。移換できるかどうかは、転職先企業の担当者に確認しましょう。iDeCoの手続きとしては、資格を喪失するため、「加入者資格喪失届」を運営管理機関に提出する必要があります。

④公務員になる場合

加入者としてiDeCoを継続することが可能です。その場合の手続きは「①転職先に企業年金がない場合」と同様です。もちろん、運営管理機関に「加入者資格喪失届」を提出して、運用指図者になることも可能です。引き続きiDeCoを運用する場合は、拠出限度額が月額2万3,000円から1万2,000円(2024年12月以降は2万円)に変わる点に注意しましょう。

⑤フリーランスや自営業者(国民年金第1号被保険者)になる場合

引き続き加入者としてiDeCoを継続することが可能です。ただし、国民年金の加入区分が変わるので、運営管理機関に「加入者被保険者種別変更届」を提出する必要があります。第1号被保険者の月の掛金上限額は6万8,000円です。拠出限度額が会社員だった時とは変わるので、注意しましょう。また、運営管理機関に「加入者資格喪失届」を提出して、加入者から運用指図者に変わることも可能です。

⑥専業主婦(夫)(国民年金第3号被保険者)になる場合

⑤フリーランスや自営業者(国民年金第1号被保険者)になる場合」と同様の手続きが必要です。あるいは、運営管理機関に「加入者資格喪失届」を提出して、運用指図者になることも可能です。

所得税の負担が発生しない程度の年収の専業主婦(夫)になる場合、運営管理機関の手数料額によっては、手数料が運用益を上回ってしまう「手数料負け」という現象が起こる可能性があります。詳しく知りたい人は以下の記事で紹介しているので、併せてご覧ください。

【関連記事】iDeCoで手数料負けしない方法を解説!損しないために大切なこと2つ

⑦国民年金任意加入被保険者になる場合

この場合も「⑤フリーランスや自営業者(国民年金第1号被保険者)になる場合」と同様の手続きが必要です。運営管理機関に「加入者資格喪失届」を提出して、運用指図者になることも可能です。なお、拠出限度額が月額2万3,000円から6万8,000円に変わります。

iDeCo加入時の転職に関する「よくある質問」

画像: 画像:iStock.com/Abu Hanifah

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最後にiDeCo加入時の転職に関する「よくある質問」に回答します。

Q1.転職後、派遣や契約社員になった場合もiDeCoに加入できる?

派遣社員や契約社員でもiDeCoに加入することは可能です。拠出限度額は所属する企業に企業型DCや確定給付企業年金(DB)などがあるかどうかにもよるので、担当者に確認しましょう。

Q2.iDeCoは転職すると加入年数がリセットされる?

iDeCoの加入期間は通算されるので、転職してもリセットはされません。ただし、iDeCoから企業型DCや確定給付企業年金(DB)に移換する場合には投資は中断されすべて現金化されるため、それを見込んで事前にポートフォリオの変更をしましょう。

Q3.転職時に無職期間が発生する場合、加入中のiDeCoはどうなる?

引き続きiDeCoを運用することが可能です。ただし、年金被保険者の区分が第2号被保険者から第1号被保険者に変わるので、「加入者被保険者種別変更届」を運営管理機関に提出する必要があります。

Q4.数カ月先に転職予定の場合、手続きはいつすればいい?

前述のように、転職先の企業によって手続きは異なります。場合によっては転職先の企業に記入してもらう書類もあるので、手続きは転職後に行いましょう。ただし、企業型DCや確定給付企業年金(DB)に移換する場合は、年金資産が現金化されるので、それを視野に入れてポートフォリオを整理しておくのもよいでしょう。

転職後もiDeCoは継続可能、ただし手続きは早めにしよう

画像: 画像:iStock.com/RollingCamera

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転職後もiDeCoを継続することは可能です。また、条件が合えば企業型DCや確定給付企業年金(DB)にiDeCoの年金資産を移換することもできます。ただし、転職後すぐに加入者情報の変更手続きを行うことが重要です。転職先で加入区分が変わると、掛金上限額を超えて積み立ててしまう可能性があり、返金には手数料が発生するためです。できるだけ早めの手続きを心がけましょう。

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