でも、せっかく遊ぶなら、同時に“学び”を得たいもの。たとえば、遊びながら「お金」や「経済」について学べるボードゲームはないのでしょうか。
そんなわがままなお願いをした相手は、世界のボードゲームで遊べるカフェ「JELLY JELLY CAFE」のオーナー・白坂翔さん。遊びながら学べるマネー系ボードゲーム4つを選出してもらいました!
お話を聞いた人
白坂 翔(しらさか しょう)さん
1984年生まれ。元自衛隊で元ホストという異色の経歴を持つ。現在はボードゲーム カフェ「JELLY JELLY CAFÉ」のオーナーを務めるほか、将棋カフェCOBINオーナー、マーダーミステリー専門店Rabbitholeプロデューサー、株式会社人狼の代表取締役を務める。
ボードゲームは、お金を最大化するコツを学べる?
(JELLY JELLY CAFÉの)店内にはずらっとボードゲーム が並んでいますが、本当にいろいろな種類のものがあるんですね。
そうですね。「頭脳」を使った実力がモノを言うゲームから、運の要素が強いゲームまで、本当に多種多様です。しかも、頭脳と運の両方が必要なボードゲームも多くて、それが面白いんですよね。
頭脳と運の両方が必要…
そうです。頭脳を使わないと勝てないけど、運も勝敗を左右するという。ボードゲームは、両方のバランスが絶妙なものが多いんです。たとえば、勝った時は「自分の実力」だと思えるけど、負けたら「運が悪かった」で片付けられるような(笑)。僕はそのくらいのバランスが好きですね。
ちなみに今回は「お金」に関しての学びにもなりそうなボードゲームを知りたいのですが、そもそもお金とボードゲームってつながりやすいのでしょうか?
ひとつ言えるのは、ボードゲームは自分の持つ資金やカードの価値を「どうすれば最大化できるか」を考える作品が主流です。自分の資金をどう増やすかといった戦略性は実際の資産管理にも通じるでしょうし、金銭感覚や価値観も養えるかもしれませんよね。順位が明確に決まるのもわかりやすいですし。
なるほど、お金の増やし方やその感覚を養えると。
加えて、先ほど言った「運」の要素もある。頭脳だけではどうにもならないのもポイントでしょう。
現実の人生も、予期せぬトラブルはありますもんね。そういった「運要素」を考慮しながら貯金したり、投資したり……。いろいろと通じる部分はあるかもしれません。
お金に対する自分の考え方や性格もわかりますしね。コツコツ手堅く増やすタイプか、大逆転を狙っていくのか。その人の実際の金銭感覚と紐づくところはあると思います。
【おすすめボードゲーム①】
不動産売買の利益を競う!「フォーセール」
そんな中で、ぜひ白坂さんオススメの「お金や経済に強くなるボードゲーム」を教えてください!
まず紹介したいのは、不動産を売買して利益を競う「フォーセール」です。
不動産の売買ですか?
はい。内容はすごくシンプルで、不動産を安く買って高く売るのが勝利の方程式。反対に、物件を割高で買ってしまえば売る時にマイナスになることもあるし、逆に安く買った物件が思わぬ高額で売れるケースも。利益とはどう出すのか、投資や商売、もっと言えば経済の基本を学べると思います。
具体的にはどんなゲームなんですか?
ゲームは前後半に分かれていて、前半は物件を買う時間。手持ち資金をもとに、物件カードを購入していきます。物件カードは1〜30まで1枚ずつあり、数字が高いほど豪華な物件。それを1ターンごとランダムに人数分並べて、高い金額を提示した人から良い物件を手に入れます。物件カードが全部売れたら前半戦終了ですね。
その後はどうするんですか?
後半戦では、先ほど買った物件を売る時間です。今度は前半戦と逆に、金額の書かれたお金カードをランダムに人数分を並べ、それを得るために手持ちの物件カードを出します。つまり、お金カードの金額で売りたい物件を提示する。一番大きい数字の物件を出した人が、不動産と引き換えにお金を手に入れます。
なるほど。
こうして、最終的に一番お金を持っていた人の勝ちです。もし前半で高い物件を買っても、後半に安値で売ってしまえば利益は少ない。その反対なら利益が大きい。シンプルですが、不動産投資のキモが分かるゲームです。
【おすすめボードゲーム2】
相場を読んで交渉をまとめる「アイム ザ ボス!」
2つめのオススメゲームはなんですか?
他のプレイヤーと交渉して、商談を取り付ける「アイム ザ ボス!」です。プレイヤーには手持ちのカードがあるのですが、そのカードが今この瞬間にどれだけの価値を持つのか、ゲーム内の市場価値がどれだけあるかを察知して、適正な価格で交渉することが重要です。お金の相場観や価値感覚を身につけるのに良いのではないでしょうか。
商談を取り付けるゲームで、なぜお金の相場観が?
プレイヤーは投資家という設定で、自分が止まったマス目で商談を成立させるとお金を得られます。それで一番稼いだ人が勝ちなのですが、商談はタダ(無料)で成立させることはできません。各マス目には商談の条件があり、「Aのカードを必ず参加させること」「4人以上参加させること」などと書いています。
その条件を達成しないと商談は成功しないと。
はい。そして各プレイヤーは商談に参加させる人物カード(A、B、C…)を持っている。すると、「Aを必ず参加させること」という条件のマス目なら、なんとしてもAのカードを持つプレーヤーを説得しないといけないのです。
でないと、商談が成立しませんものね。
そこで、交渉をするプレーヤーは、Aのカードを持つ人にお金を支払います。この時、交渉をされる人は、Aのカードがどれだけの価値を持っているか、どこまでなら商談の主催者がお金を払ってくれて、どこからなら払えず破談になるのか。その金額を見極めながら交渉します。ここに相場観を養う理由があるのです。
なるほど。Aのカードを絶対に参加させたいなら、当然高い金額を要求できますもんね。商談に必要なカードなので。
はい。自分の手持ちカードの価値と、相手のニーズを見極めて、適切な金額を提示する。それが相場観を読む力につながると思います。
【おすすめボードゲーム3】
絵画をオークションで売りさばく「モダンアート」
では3つめのゲームを教えてください。
絵画をオークションで売りさばく「モダンアート」です。最終的に一番お金を持っている人が勝ちで、こちらも絵画の値付けや相場観のセンスを養えます。また、自分がどうお金を稼いでいくべきか、マネー戦略も磨かれるのではないでしょうか。
どんなゲームなんでしょうか。
5種類の絵画カードがあり、プレイヤーに何枚かずつ配られます。その後、1人1人売りたい絵画カードを出しオークションを開催。オークションの手法はいくつかありますが、基本的には一番大きな金額を提示した人がその絵画を落札します。
オークションで稼いだ金額で順位が決まるのですか?
いえ、それだけではありません。ゲームが終わると、オークションで自分が手に入れた絵画カードが手元に残ります。その絵画カードの評価額が最後に決まり、プレイヤーの手持ちのお金に加算されます。つまり、オークションで得た利益と、最終的に持っている絵画の評価額のトータルで勝敗が決まるのです。ただ、絵画の評価額の決め方が面白くて……。
どういうことですか?
5種類の絵画のうち、オークションに出回った枚数の多い(=欲しがる人が多かった)絵画ほど評価額が高くなるのです。プレイしていると同じ絵が何度か出てくるので、プレイヤーはそれを見ながら「この絵は何度も出ているので評価額が高くなりそう」と読んで、オークションで自分が購入するか、購入するならいくらまで提示するか決めるんですね。
まさに読み合い…
絵の評価額が高くても、購入額(オークションでの落札額)が高くなれば、利益は出にくい。戦い方も重要で、最後に持っている絵画の評価額で勝つ人もいれば、オークションで荒稼ぎして勝つ人もいる。戦略がモノを言うゲームです。
【おすすめボードゲーム4】
経営センスで会社を成長させる「ナショナルエコノミー」
では最後に4つめのゲームをお願いします!
はい、経営を学べるボードゲーム「ナショナルエコノミー」です。
経営を学べるとは?
簡単に言えば、自分が持つ会社を経営し、様々な施設を作るなど、より大きく成長させたプレイヤーが勝利します。ここでポイントになるのが、自分の会社で働く「労働者」の存在。労働者をうまく管理しないと、会社の成長に結びつかないのです。
どういうことでしょうか。
労働者が多いほど、プレイヤーがゲーム内でアクションできる量が増えます。つまり、労働者を多く雇えば、事業活動が活発になり会社の成長につながりやすい。しかし、労働者には賃金を払わなければいけないのです。
賃金ですか。
はい。賃金が必要なので、やみくもに労働者を増やすと人件費がかかりすぎて資金繰りが厳しくなる。一方、労働者が少ないとお金はかからないけど会社の成長スピードが遅くなる。どこまで人件費を割くべきか、先を見越して計画を立てないといけないんですね。
まさに経営ですね……。
プレイヤーの中には、序盤はどんどん借金して労働者を増やし、一気に拡大する人もいます。いわゆる“先行投資”ですよね。まさに個人の経営センスが問われるゲームです。
確かにセンスが問われそうです。
ちなみに、労働者を雇っても1ターン目は「研修中」になってアクションできないんです。でも賃金は払わないといけない。ここら辺もリアルです(笑)
不確定要素を抱え、資産の最大化を図る練習にも
なるほど(笑)。どのゲームもおもしそうですし、お金の感覚やセンスを養えそうです。
そうですね。不確定要素を抱えつつ、どう資金を最大化するか、勝つための戦略を立てるかは、実生活にも役立つと思います。たとえば投資も、利益の最大化を目指しますが、このあと投資先の価値が上がるのか下がるのか、そこは不確定要素ですよね。そこを自分で考えて判断する。そんな共通点もあると思います。
確かにそうですね。
しかもボードゲームは、人と対面で行います。相手の表情や仕草を見ながら、より深く駆け引きできる。画面越しのゲームに比べると、そういった意味での「贅沢さ」があるかもしれませんね。
対面の贅沢さ、その通りですね。この機会にチャレンジしてみたいと思います。ありがとうございました!
撮影/玉井俊行
【この記事の著者】
有井 太郎(ありい たろう)
1984年生まれ、長野県出身のフリーライター。今後の人生におけるお金の問題を考え始め、マネー系の取材に挑戦中。ライターという立場を利用し、取材しながら自分の知識も蓄える、一石二鳥戦法で学んでいます。