この記事では、税理士の植野正子さん監修のもと、確定申告で保険料控除する方法を解説。保険料控除のしくみや対象者、申請の手順について詳しくご紹介します。
この記事の監修者
植野 正子(うえの まさこ)
税理士。植野正子 税理士事務所代表。税理士業と並行して執筆活動も活発に行なっており、著書に『個人事業の始め方 手順と届出・経理』『これだけは知っておきたい「副業」の基本と常識』(ともにぱる出版)など多数。
保険料控除は「支払った保険料が所得額から控除されること」
保険料控除とは、支払った保険料が所得額から控除される制度です。生命保険や共済など多くの人が加入している保険の保険料支払額が控除されます。
詳しくは後述しますが、保険料の控除は「新制度」「旧制度」の2種に分類されます。それぞれ金額や条件が異なるため、申請をする際には加入保険がどちらの制度に当てはまるか確認しましょう。
保険料控除は「物的控除」に分類される
前提として、所得控除には「人的控除」と「物的控除」の2種類があります。人的控除とは、主に人に対しての控除で、個人的な事情について一定の控除を設けるものです。一方、物的控除とは、主に支出に対する控除で、家事上の支出や損失について一定の控除を設けているものです。
保険料の支払いは支出に該当するため、物的控除に分類されています1)2)。各控除の具体例は、以下のとおりです。
〈表〉人的控除・物的控除の分類
人的控除の例 | 物的控除の例 |
---|---|
扶養控除 寡婦控除 障害者控除 勤労学生控除 基礎控除 配偶者控除 配偶者特別控除 | 医療費控除 寄付金控除 雑損控除 小規模企業共済などの掛け金控除 社会保険料控除 生命保険料控除 地震保険料控除 |
参考資料
保険料控除の3つの対象
保険料といっても、どの保険が控除の対象になるかわからない人もいることでしょう。ここでは保険料控除の対象となる支払いについて解説します。保険料控除の対象になるのは、以下の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
①一般生命保険料
一般生命保険料は、控除の対象となる代表的な保険料です。一般生命保険料に該当する主な保険の商品は、以下のとおりです。
- 死亡保険
- 養老保険
- 学資保険など
一般生命保険料の控除の対象者は、契約者本人だけではありません。契約した人の配偶者・6親等内の血族(※1)・3親等内の姻族(※2)も該当します3)。しかし、保険期間が5年未満の契約の貯蓄保険や貯蓄共済、外国生命保険会社と国外で締結した保険などは対象外です。
※1:親族の範囲。 自分を中心とした場合、はとこ(「またいとこ」とも)、玄姪孫(兄弟の4世代後)、自分の6世代後の子どもなどが該当。
※2:曽祖父、曾孫、伯父伯母(叔父叔母)、甥姪が該当。
参考資料
②個人年金保険料
個人年金とは、国民年金・厚生年金以外に、自身で行う民間の積み立て型の年金を指します。個人年金保険料を支払えば、資産形成をしながら節税も可能です。
個人年金保険料を控除するには「個人年金保険料税制適格特約」をつける必要があります。特約を付けるための条件は、以下のとおりです。
①年金の受取人が契約者かその配偶者である
②被保険者と受取人が同じである
③払い込みが10年以上行われている
④受け取り開始が60歳以上かつ受け取り期間が10年以上である(確定年金・有期年金の場合)
⑤上記①〜④を満たさない契約変更をしない
⑥個人年金保険料税制適格特約だけを解約しない
なお、過去に払い込みをした保険料が対象かどうかは、保険会社の支払い証明書などで確認できます。
③介護医療保険料
「介護医療保険」とは、入院・通院に伴い給付金を受け取れる保険です。平成24年の新制度から控除の対象となっているため、平成23年の最終日以前に契約した旧制度の保険は対象外となります4)。
介護医療保険の対象は、主に以下の3つです。
①がん保険
②医療保険
③介護保険
しかし、介護医療保険の中でも契約が5年未満である貯蓄系の保険・共済は対象外です5)。また、保険受取人が一般生命保険と同一人物である必要があるなど、条件があるため契約内容をしっかり確認してみてください。
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保険料控除の計算方法は新契約と旧契約で異なる
保険料控除の計算方法は、前述したとおり、新契約と旧契約で異なります。平成24年以前に契約しそれまでの制度(旧制度)が適用された保険を「旧契約」、平成24年1月1日以後に契約した保険を「新契約」と分類しています。以下では、新契約・旧契約別に保険料控除の方法をご紹介します。
新契約の保険料控除の計算方法
前述のとおり、平成24年1月1日以後に契約した保険は、新契約に該当します。国税庁のデータをもとに計算式をまとめました6)。
〈表〉新契約の年間の保険料支払い額の計算方法
年間の保険料支払い額 | 所得控除の計算式 |
---|---|
2万円以下 | 支払った保険料の全額 |
2~4万円 | 支払った保険料 × 1/2 + 1万円 |
4~8万円 | 支払った保険料 × 1/4 + 2万円 |
8万円以上 | 4万円 |
なお、旧契約の保険も契約している場合は、保険料の計算式が異なります。旧契約の支払いが6万円以上なら、旧契約のみの保険料控除となります(最高5万円まで)。6万円以下なら、それぞれの保険料を計算し、合計した額(最高4万円まで)を控除可能です。
参考資料
旧契約の保険料控除の計算方法
平成24年以前に契約した保険は、旧契約に分類されます。国税庁「生命保険料控除」をもとに計算式をまとめました6)。
〈表〉旧契約の年間の保険料支払い額の計算方法
年間の保険料支払い額 | 所得控除の計算式 |
---|---|
2万5,000円以下 | 支払った保険料の全額 |
2万5,000~5万円以下 | 支払った保険料 × 1/2 + 12,500円 |
5~10万円以下 | 支払った保険料 × 1/4 + 25,000円 |
10万円以上 | 5万円 |
新契約同様、保険料控除を行う方法は金額によって変化するので、上記の表を参考に計算をしてみてください。
確定申告で保険料控除を受ける方法
確定申告で保険料控除をする手順は、以下の3ステップです。
STEP①確定申告書を用意して記入する
STEP②生命保険控除証明書を用意し「契約保険の種類」「旧制度・新制度どちらに適用か」「計算した控除額」を記入する
STEP③控除証明書と確定申告書類を一緒に提出する
控除書類の送信は、郵送・e-Tax(国税電子申告・納税システム)のいずれかで可能です。控除の結果、源泉税など納税していると還付金を受け取れる場合があります。
なお、確定申告の還付金がいつ戻ってくるかについては、以下の記事で詳しく解説しています。興味のある人は併せて確認してみてください。
【関連記事】確定申告の還付金はいつ戻ってくる? 詳しくはコチラ
保険料控除の申請期限
確定申告の保険料控除がいつまで行えるかは、個人の就業状況により異なります。以下では、保険料控除の申請タイミングを、会社員と個人事業主に分けてご紹介します。
会社員の場合は、会社が定めた年末調整の提出期日まで
会社員の場合、会社の定めた提出期限までに書類を提出しましょう。控除に必要な「保険料控除証明書」は、保険会社に登録している住所宛に郵送されます。提出するまで大切に保管しましょう。
会社員の保険料控除手続きは、年末調整の際に行われます。多くの場合は年内期限、最終期日は1月31日までに設定されるでしょう。会社から配られる年末調整の書類のひとつである「給与所得者の保険料控除申告書」の生命保険料控除欄に必要事項を記入し、保険料控除証明書と一緒に提出します。
個人事業主の場合は、確定申告で控除計算を行う
個人事業主が保険料控除を申請できる手段は、確定申告です。会社員と違い、個人事業主は確定申告で保険料控除の書類提出を行います。
確定申告の提出期限は原則3月15日までです。確定申告の際は、保険料控除の申請も忘れないようにしましょう。会計ソフトを使えば、保険料控除をするかどうかを確認できるので忘れずに申請できます。なお、忘れてしまった場合は、翌年の確定申告期限までに請求をすれば控除できます。
確定申告の保険料控除で知っておきたい3つのポイント
確定申告で保険料控除を行う際に、知っておきたいポイントは以下の3つです。
それぞれ詳しく解説します。
①控除額の上限は新契約と旧契約で異なる
保険料控除の金額上限は、新契約・旧契約で異なります。新契約の上限は4万円、旧契約なら5万円です7)。
新契約・旧契約両方の保険に加入している場合は、それぞれの支払額によって上限額が変わります。旧契約の支払いが6万円以上なら5万円、6万円以下なら4万円が上限です。
なお、一般生命保険・介護保険・年金保険料を合算した保険料控除の上限は12万円です。
参考資料
②控除は保険料を支払っている人が対象
保険料控除は、保険料を支払っている人が受けられます。自分が家族の保険料も支払っている場合は、家族分の保険料も併せて控除できます。逆にいうと、自分が保険料を支払っていなければ、自分名義で保険に加入していても保険料控除を受けられません。
子どもや妻など扶養者の保険料控除を申告する場合、本人またはその家族が保険金受け取り対象とわかれば、控除が可能です6)。納税者の家族と認定されるのは、6親等内の血族または3親等内の姻族です。
③途中解約しても控除は受けられる
保険を途中解約した場合でも、控除は受けられます。解約までに支払った金額が対象となるため、自身で計算をして金額を割り出しましょう1)。
申告に必要な書類は、保険会社から10月頃に送られてきます。「解約をしたから控除ができない」と諦めず、支払った保険料の控除を行いましょう。
確定申告で保険料控除を申請して節税をしよう
確定申告で保険料控除を行えば、効果的に節税ができます。保険料の控除金額は新契約・旧契約で異なるため、加入している保険の内容をしっかり理解することが重要です。
個人事業主、会社員ごとに、申告可能な時期は異なります。しかし、会社員で確定申告をしたことがなければ5年以内であれば還付申告が可能です。個人事業主で毎年確定申告している場合は、翌年の確定申告期限までの請求ができます。保険料控除を忘れた場合も、焦らず申告しましょう。
最適な保険選びに迷ったら、「お金のプロ」に相談してみませんか?
このような保険料控除を活用しながら、自分に最適な保険を選ぶためには、万が一の時の必要保障額がいくらになるかを算出する必要があります。しかし、自分だけで行うのは至難の業です。
そんな時は、保険選びとマネープランを当時に行ってくれる「お金のプロ」に相談してみましょう。
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