就業不能保険とは、ケガや病気で長期間働けない時の生活を、金銭面で支えてくれる保険です。もしもの場合の収入減に備えて加入を検討している人もいるかもしれません。しかし、日本には様々な公的保障があるため、「就業不能保険はいらないのでは?」といわれることもあります。

この記事では、ファイナンシャルプランナーのタケイ 啓子さん監修のもと、就業不能保険はいらないといわれる理由を解説。また、就業不能保険の必要性が高い人の特徴やメリットもご紹介します。

この記事の監修者

タケイ 啓子(たけい けいこ)

ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。

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就業不能保険とは「働けなくなった時の生活を金銭面で支える保険」

画像: 画像:iStock.com/maruco

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就業不能保険とは、ケガや病気で長期間働けない時の生活を金銭面で支えてくれる保険のことです

貯蓄が十分でない人にとって、いきなり収入が途絶えてしまうことは大きな不安でしょう。就業不能保険は、そのような金銭的不安を解消して暮らしていくためにおすすめの保険です。

生活費を補うという性質上、給付金の受け取り方は毎月お給料のように受け取るものが一般的です。また月々の生活費だけでなく、保険商品によっては仕事に就くことができない状態からの復帰後の生活を支える一時金を受け取れる場合もあります。

就業不能保険がいらないといわれる理由は?

画像: 画像:iStock.com/ljubaphoto

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では、「就業不能保険がいらない」といわれることがあるのはなぜでしょうか。主な理由は、公的保障があるからだといわれています。特に会社員であれば、病気やケガで長期間働けなくなった場合、まずは有給休暇を使い、その後は最大1年半にわたって傷病手当金(詳しくは後述)を受け取ることができます1)

傷病手当金とは、健康保険などの被保険者が業務や災害以外の病気やケガで療養のため仕事を休み、給与などがもらえない時に申請・受給できる保険給付です。1日当たりの給料の約2/3が受け取れます。

一方で、自営業・個人事業主の人が同様の状況に陥った場合は、国民健康保険の被保険者となるため有給休暇を取得することはできません。また、国民健康保険には傷病手当金がないため、受給することもできません。

なお、会社員でも月々の給料によっては公的保障だけでは足りないことがあります。このように就業不能保険が必要かどうかは、その人の状況によって大きく変わってくるのです。

就業不能保険の必要性が高い人の特徴

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続いて、就業不能保険の必要性が高い人の特徴を見ていきましょう。以下にまとめました。

それぞれ詳しく解説します。

自営業・個人事業主の人

自営業・個人事業主の場合、国民健康保険に加入します。国民健康保険には傷病手当金がないため、基本的にケガや病気で働けない期間の経済的保障がありません。

また、自営業でも利用できる代表的な公的保障には障害基礎年金がありますが、請求の資格が発生するのは、初診日から1年6カ月後でその間は経済的保障がありません2)

すなわち、会社員と比べ働けなくなると無収入となってしまうリスクが高いといえます。就業不能保険は、そのようなリスクに対処できる保険の筆頭だといえるでしょう。

貯蓄が少ない人

貯蓄が少ない人も、就業不能保険の必要性が高いといえるでしょう。仮に、健康保険の被保険者で傷病手当金を受給したとしても、受給額は給料の約2/3となるため、生活費にかかる不足分を補わないといけません。その場合、十分な貯蓄がなければ公的保障だけで生活をすることは難しいでしょう。

また、子どもが多かったり、住宅ローンなどがあったりする家庭では、毎月固定費が大きいことが予想されます。この場合も、貯蓄が少ないと公的保障だけでは生活が成り立たなくなってしまう可能性が考えられます。リスクヘッジという意味で加入を検討する価値があるでしょう。

就業不能保険の必要性が低い人の特徴

画像1: 画像:iStock.com/byryo

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つぎに、就業不能保険の必要性が低いのはどんな人なのでしょうか。以下に特徴をまとめました。

それぞれ詳しく解説します。

十分な貯蓄がある人

すでに十分な貯蓄があり、収入が途絶えても貯蓄を切り崩しながら生活できる人は、就業不能保険の必要性は低いといえます。自分が必要な月々の生活費を計算し、それに対して貯蓄が十分であるかを判断しましょう。

働けなくなっても十分な収入を得られる人

家賃収入や株式の配当など、働けなくなっても十分な収入がある人も、就業不能保険に加入する必要性は低いといえるでしょう。

また、共働き世帯で、配偶者の稼ぎだけでも生活ができる場合も当てはまります。ただし、この場合も家族構成や必要な支出によって変わるでしょう。

自分の収入が途絶えてしまった時に、生活が成り立つかどうかをシミュレーションすることが重要です。

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働けなくなった時に受けられる公的保障とは?

画像1: 画像:iStock.com/takasuu

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働けなくなった時に受けられる公的保障は、主に以下の3つです。

それぞれ詳しく解説します。

①傷病手当金

前述のとおり、業務外の病気やケガが理由で働けない時は、傷病手当金が利用できます。傷病手当金とは、健康保険などの被保険者が業務や災害以外の病気やケガで療養のため仕事を休み、給与などがもらえない時に申請・受給できる保険給付です。受給するには、健康保険の被保険者である必要がありますが、自営業・個人事業主などの国民健康保険の被保険者は対象となりません。

傷病手当金の受給条件は、連続した3日間を含む4日以上、仕事に就くことができない状態が続いていることです。

また受給期間は、支給開始日から通算で1年6カ月までです。その間に職場に復帰した時期がある場合、その期間は受給期間に含まれません1)

なお、傷病手当金について詳しくは以下の記事で解説しています。気になる人は確認してみてください。

【関連記事】傷病手当金とは? 詳しくはコチラ

②障害年金

前提として、障害年金は障害基礎年金と厚生年金に分かれていて、片方または両方支給されるケースがあります。

国民年金に加入している人は、障害等級が1級または2級などの条件を満たせば障害基礎年金を受給できます。

障害基礎年金3)とは、障害や病気、ケガによって生活や仕事に制限が生じた場合に受給できる年金です。国民年金のひとつである障害基礎年金は、もらえる金額が手厚いことが特徴です。障害等級の認定基準例は以下のとおりです。

〈障害等級の認定基準例〉

1級:発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如し、著しく不適応な行動がみられる人。日常生活への適応が困難で常時援助を必要とする人

2級:発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動が見られる人

また、厚生年金に加入している人は、さらに障害厚生年金を受給できる場合があります。障害基礎年金の1級または2級に該当する障害がある場合、障害基礎年金に上乗せして障害厚生年金が受給可能です。

障害等級が3級に該当した場合は、障害厚生年金のみ受給できます。

〈図〉障害給付について

画像: ②障害年金

③自治体の支援制度

画像2: 画像:iStock.com/takasuu

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各自治体も、仕事に就くことができない状態の人への支援制度を設けています。たとえば、東京都府中市では、以下のような支援制度があります4)

〈表〉東京都府中市の障害者向け手当の一例

手当名称対象者金額
心身障害者(児)福祉手当①身体障害者手帳1・2級、愛の手帳1~3度、脳性麻痺および進行性筋萎縮症の人
②身体障害者手帳3・4級、愛の手帳4度の人
①月額1万5,500円
②月額7,500円
指定疾病者福祉手当東京都難病医療費助成制度の医療券または特定医療費受給者証を持っている人月額5,500円

なお、自治体によって保障内容は異なります。詳しくはお住まいの自治体のウェブサイトなどで確認してみてください。

就業不能保険のメリットは公的保障の不足分をカバーできること

画像2: 画像:iStock.com/byryo

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就業不能保険の大きなメリットは、公的保障の不足分をカバーできることです。国や自治体でも仕事に就くことができない状態の人に対する保障を設けていますが、必ずしもそれだけで生活をカバーできるとは限りません。

病気やケガが長引き働けない期間が続いた場合、毎月の生活費をまかなえなくなる可能性もあります。このようなリスクを軽減できるのが就業不能保険です。

また、金銭面での不安が小さくなれば、病気やケガの治療に集中できるでしょう。

就業不能保険の注意点

画像: 画像:iStock.com/kohei_hara

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就業不能保険を利用する際は、以下の点に注意が必要です。

それぞれ詳しく解説します。

精神疾患は保障対象外の場合がある

うつ病などの精神疾患のある人は、保険会社によっては保障対象外の可能性があります。精神疾患は罹患・回復の判断が難しいことから、公平性担保の観点で保障対象外とされるケースが多くあります。

保険に加入する前に、精神疾患を抱えている人でも加入できるかどうかを確認しましょう。

なお、うつ病などの精神疾患がある人でも加入しやすい保険について、以下の記事で詳しく解説しています。興味のある人は確認してみてください。

【関連記事】うつ病の人は就業不能保険に入れる? 詳しくはコチラ

免責期間中は給付金が受け取れない

就業不能保険には、一般的に免責期間があります。「免責」とは、加入している保険が「保障の責任を負いません」という意味で、この免責期間に該当すると保険による保障は受けられなくなります。

これは給付金を目当てに、すでに自覚症状がある状態で保険に加入する人を防ぐのが目的です。また医療保険のように、入院したらすぐに保障されるわけではありません。自分がどの時期から保障対象になるかを、事前にしっかりと確認するようにしましょう。

なお、就業不能保険のデメリットや注意点に関して、以下の記事で詳しく解説しています。興味のある人は確認してみてください。

【関連記事】就業不能保険のデメリットについて、詳しくはコチラ

就業不能保険を選ぶ時に確認したほうがいいこと

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就業不能保険を選ぶ際に確認したほうがいいことは、以下の4点です。

それぞれ詳しく解説します。

①就業不能保険の給付金で生活費がまかなえるか

まずは、就業不能保険の給付金を受け取ることで、生活費をまかなうことができるかを計算してみましょう。

保険会社にもよりますが、就業不能保険の給付金は月額10万円・15万円・20万円といった区切りで設定されているケースがほとんどです。現時点での貯蓄額や公的保障が使えるかを確認し、月々の足りない金額を割り出します。その不足額を補えるプランを選択するのがおすすめです。

ただし、就業不能保険だけで生活費をまかなおうとすると、保険料が高くなってしまうことがあります。生活のバランスを見てプランを決めることが重要です。

②免責期間はどのくらいか

就業不能保険は一般的に、免責期間が短いほど保険料が高く、長いほど安くなります

免責期間中は、契約上認められる仕事に就くことができない状態に該当した場合であっても、給付金が受け取れません。免責期間中は、給付金が受け取れないためほかの手段で生活費をまかなう必要があります。

また、免責期間が長いものを選ぶと、保険を利用する前に仕事に就くことができない状態から脱したり、生活資金が底をついたりしてしまうかもしれません。保険料や現時点での貯蓄とのバランスを見ることが重要です。

③持病があっても入れるか

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持病があると就業不能保険に入れない場合があります。保険の申込書の持病に関する告知事項欄に、「はい」が付く項目がある場合は加入できない可能性があります。

ただし保険会社の中には、持病があっても問題なく入れる保険もあります。持病の不安がある人は、ファイナンシャルプランナーに相談して、加入しやすい保険などを検討するといいでしょう。

④最低支払い保障期間はどのくらいか

就業不能保険には、最低支払い保障期間が設定されています。

最低支払い保障期間とは、保険期間にかかわらず給付金の支払いが保障される期間のことです。最低支払い保障期間は、商品によって異なるので、契約前に確認しましょう。

なお、東京海上日動あんしん生命の就業不能保険「あんしん就業不能保障保険」や「家計保障定期保険NEO」の場合は、最低2年は給付金を受給できます。

就業不能保険が適用されない3つのケース

画像: 画像:iStock.com/skynesher

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就業不能保険に加入しても以下の3つのケースでは、就業不能保険が適用されません。

それぞれ詳しく解説します。

ケース①保障が開始される前に働けなくなった場合

前述したように、保障が開始される免責期間中に働けなくなった場合、保険は適用されません。生命保険会社と契約した場合、契約上の責任を開始する時期を「責任開始日」といいます。

画像: ケース①保障が開始される前に働けなくなった場合

契約しても「責任開始日」にならないと保障が適用されないため、直近で必要だと感じた保険であれば少しでも早く保険に加入することが大切です。

ケース②申し込みから責任開始日までの期間中に仕事に就くことができない状態ではなくなった場合

申し込みから責任開始日までの期間中に仕事に就くことができない状態ではなくなった場合も、保険は適用されません。保障の条件を満たした場合でも、実際に給付金を受け取るには責任開始日を超えて仕事に就くことができない状態が続かなければなりません。

保険料や自身のリスク許容度のバランスを見て、プランを決めましょう。

ケース③治療を目的としない入院をした場合

治療を目的としない入院をした場合も、就業不能保険は適用されません。美容整形による入院や、自己判断による自宅療養などが当てはまります

ただし、医師の指示による自宅療養の場合は、保障対象となることがあります。どのような時に給付金を受け取れるかを、契約前に確認するようにしましょう。

自営業・個人事業主は就業不能保険の必要性が特に高い

画像: 画像:iStock.com/AndreyPopov

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就業不能保険は、働き方や経済的な状況により、必要な人と不要な人が分かれる保険です。特に、自営業や個人事業主には公的保障が決して大きくはないため、必要性の高い保険といえるでしょう

また、就業不能保険には免責期間をはじめ、様々な条件が設定されています。保険の内容を正確に理解し、自分に必要なプランを選ぶようにしましょう。

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