日本には公的な年金制度がありますが、受給できる金額は人それぞれ異なります。そのため、公的年金だけでは不安であれば、老後の生活資金をほかに確保したほうが安全です。その方法のひとつとして考えられるのが、個人年金保険です。
この記事ではファイナンシャルプランナーのタケイ啓子さん監修のもと、個人年金保険のしくみやメリット・デメリットを解説します。個人年金保険を選ぶ際のポイントもご紹介するので、参考にしてみてください。
この記事の監修者
タケイ 啓子(たけい けいこ)
ファイナンシャルプランナー(AFP)。36歳で離婚し、シングルマザーに。大手生命保険会社に就職をしたが、その後、保険の総合代理店に転職。保険の電話相談業務に従事。43歳の時に乳がんを告知される。治療を経て、現在は治療とお金の相談パートナーとして、相談、執筆業務を中心に活動中。
個人年金保険は私的年金のひとつ
個人年金保険とは、公的年金に上乗せ補填する目的で、自身で老後の準備をするための民間の保険です。契約時に決めた年齢に達するまで保険料を払込み、その後は保険料に応じた年金を受け取ることができるのが特徴です。
個人年金保険に支払った保険料は、一定の条件を満たせば個人年金保険料控除として所得税・住民税の控除の対象となり、一定金額の控除を受けることができます。
個人年金保険と公的年金の違いは?
続いて、個人年金保険と公的年金の違いを見ていきましょう。
公的年金のうち国民年金は、日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人が加入を義務づけられている年金保険です。
一方、個人年金保険は民間の保険会社が扱う保険商品のひとつであり、加入の義務はありません。
日本の年金制度は「3階建て」と表現され、国民年金・厚生年金・私的年金の3つに分けられます。1~2階の公的年金は、国が管理・運営する「国民年金」「厚生年金」や「国民年金基金」が該当し、3階は企業や個人が自分で加入する「私的年金」のことを指します。3階建ては、以下の図のようなイメージになっています。
〈図〉個人年金保険と公的年金のイメージ
個人年金保険の種類は?
保険会社にもよりますが、個人年金保険の種類は「確定年金」が一般的です。確定年金とは、契約時に定めた一定期間(5年や10年など、期間を個人で設定)、年金を受け取ることができる個人年金保険のことをいいます。
期間中は被保険者の生死にかかわらず年金を受け取ることができます。もし、契約期間中に被保険者が死亡した場合は、残存期間に対応する年金、または一時金を遺族が受け取ることができます。
なお、保険会社によっては契約時に定めた年齢から被保険者が死亡するまでの間、年金を受け取ることができる「終身年金」というものもあります。生存している限り年金を受け取ることができる一方で、保険料が高い傾向があります。
個人年金保険はどんなメリットがあるの?
個人年金保険には、大きく3つのメリットがあります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
メリット①生命保険料控除で節税ができる
前提として、民間の保険は加入内容に応じて、生命保険料控除を受けることができます。控除は、「一般生命保険控除」「介護保険控除」「個人年金保険控除」の3つに分類され、年間の支払額に応じてそれぞれ最大4万円、3つで最大12万円となっています。
個人年金保険の保険料は所得控除の対象となるため、節税ができます。控除される金額は以下のとおりです1)。
〈表〉新契約の控除額の計算方法
年間の支払保険料等 | 控除額 |
---|---|
2万円以下 | 支払保険料等の全額 |
2万円〜4万円以下 | 支払保険料等 × 1/2 + 1万円 |
4万円〜8万円以下 | 支払保険料等 × 1/4 + 2万円 |
8万円超 | 一律4万円 |
たとえば、保険料の払込金額が年間8万円を超えており、課税所得が300万円だったとしましょう。この場合の所得税率は10%です。そのため、生命保険料控除による所得税の節税効果は4,000円(4万円 × 10%)です。
なお、個人年金保険の控除の適用条件やコツについては以下の記事で詳しく解説しています。気になる人は併せて確認してみてください。
参考資料
メリット②老後資金づくりができる
貯金が苦手な人でも、個人年金保険を契約すれば着実に老後資金づくりができます。多くの場合、保険料の支払いは口座振替のため、半ば強制的に貯蓄が行えます。ローリスク・ローリターンの商品であるため大きな利益を上げることはできませんが、将来受け取れる金額が決まっているので安心感があります。
メリット③貯蓄型生命保険の代用にもなる
個人年金保険は、学資保険などのような貯蓄型の保険ともいえます。そのため、被保険者が亡くなった場合は、死亡給付金として払込保険料に相当する金額が遺族に支払われます。貯蓄をしながら生命保険としても活用できることは、個人年金保険の大きなメリットです。
また、ほかの民間の医療保険とは異なり、疾病があっても入りやすいという特徴もあります。詳細は各保険会社の告知事項をご確認ください。
個人年金保険はどんなデメリットがあるの?
個人年金保険を契約する際は、以下のデメリットに注意しましょう。
それぞれ詳しく解説します。
デメリット①大きなリターンが期待できない
個人年金保険では株式投資などと比べて、大きなリターンは望めません。その分リスクも小さいのですが、資金を大きく増やしていきたい人には向いてないでしょう。
また、超低金利状況下で利率が固定されてしまうという側面もあるため、あまり大きなリターンは期待できません。今の金利が続くのであれば、「銀行に預金するよりはマシ」という程度で考えておくのがいいでしょう。
デメリット②インフレ時に資産価値が目減りする
将来受け取る年金額があらかじめ定められている個人年金保険は、インフレによって資産が目減りする可能性があります。インフレで物価が上がっても受け取れる金額が増えないからです。
なお、インフレのリスクに備えるなら、変額保険がおすすめです。変額保険なら、運用成績がインフレ率を上回れば資産価値が下がりません。
東京海上日動あんしん生命保険の変額保険「マーケットリンク」なら、万が一の保障を確保しながら、将来の資産形成を行うことができます。より効率的に資産形成をしたい人は、ぜひチェックしてみましょう。
デメリット③iDeCoより節税優遇のメリットが小さい
個人年金保険はiDeCoに比べて税制面での優遇が少ないのが難点です。以下の表に、両者の税制優遇についてまとめました1)2)。
〈表〉個人年金保険とiDeCoの税制優遇
個人年金保険 | iDeCo |
---|---|
最大4万円/年の所得控除 | 最大27万6,000円/年 ※企業年金がない場合 掛金が全額控除の対象 運用利益が非課税 |
個人年金保険が年間で最大4万円の控除が受けられるのに対して、iDeCoの場合は年間で最大27万6,000円の控除が受けられます。
ただし、iDeCoには積み立てた掛金は原則60歳まで引き出せないというデメリットがあります。両方のメリット・デメリットを理解しながら自分に合ったものを選ぶようにしましょう。
なお、個人年金保険とiDeCoの違いは以下の記事で解説しています。気になる人は併せて確認してみてください。
【関連記事】個人年金保険とiDeCoの違いについて、詳しくはコチラ
参考資料
個人年金保険を選ぶ時のポイント
個人年金保険を選ぶ際は、以下のポイントを確認するようにしましょう。
それぞれ詳しく解説します。
ポイント①返戻率を確認する
個人年金保険を選ぶ際は返戻率をチェックしておきましょう。返戻率とは、支払った保険料総額に対して、将来受け取る金額の割合のことです。特に貯蓄型保険である個人年金保険の場合、返戻率の高さはとても重要な要素となります。
返戻率が100%を超えていれば支払った保険料より増えていることになりますが、100%を切っていると支払った保険料より減っていることになります。そのため、個人年金保険を選ぶ際は返戻率が100%を超えているかをしっかりと確認する必要があります。
個人年金保険は様々な保険会社が用意しており、商品ごとに返戻率は微妙に異なっているのが現状です。そのため、できるだけ同じ条件で比較をしてみて、どの商品の返戻率が高いのか把握しておくことが重要となります。
ポイント②余計な特約を付けない
個人年金保険の中には、医療保険特約や定期保険特約などの特約を付けられる場合もあります。
特約とは、主契約でカバーできていない部分を保障してくれるもので、付けるかどうかは個人の自由です。
一般的に、医療保険や生命保険などはライフステージによって見直したほうがいい場合が多く、時代に合わせて保険商品もアップデートされています。しかし、加入が長期間にわたる個人年金保険に特約を付けてしまうと、解約をしない限り途中で保険が見直せなくなる可能性があるのです。
医療保険特約や定期保険特約などを特約でカバーするのではなく、足りない保障部分は必要に応じて個別に保険に加入するのがおすすめです。
個人年金保険を上手に活用して老後に備えよう
個人年金保険は私的年金のひとつで、老後の生活資金を補填するために活用できます。商品によって受取期間や受取金額が異なるため、それぞれ特徴を把握して、ライフスタイルに合った保険を選びましょう。