マネコミ!をご覧の皆様、こんにちは。映画ライターのSYOと申します。コロナ禍のなかで、個々人の仕事観や金銭感覚にも変化が起きている今日この頃。自宅で過ごす時間が多くなり、映画を観る機会も増えたのではないでしょうか?

そこで短期連載「M&B Movie Collection」では、“お金(Money)と仕事(Business)に効く映画”をコンセプトにオススメ作品をご紹介していきます。第3回目の今回は、なぜ仕事をするのか?なぜお金を稼ぐのか?という本質に迫った作品を取り上げます。

これまでにテーマに据えてきた「お金」と「仕事」の受け皿となるのは、生活です。理想的なライフスタイルを確立するために、頑張って働いて、お金を稼ぐ。そうはいっても、何のために頑張っているのか悩んでしまうこともあるでしょう。そこで、「老後」や「家庭」などに関連した3つのトピックで、それぞれの悩みに答えてくれるオススメ作品を2本ずつセレクトしました。

この記事の著者

画像1: M&B Movie Collection #3頑張って稼ぐ意味って?悩んだ時に見たい映画6選

SYO

1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション、映画WEBメディアでの勤務を経て、独立。映画・アニメ・ドラマを中心に、小説や漫画、音楽などエンタメ系全般のインタビュー、レビュー、コラム等を各メディアにて執筆。映画作品の推薦コメント・劇場パンフレットの寄稿や、トークイベント・映画情報番組への出演も行う。カフェ巡りと猫をこよなく愛する。
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[Chapter1]仕事の不調、実は家庭が原因かも。両方との向き合い方を教えてくれる映画は?

画像: [Chapter1]仕事の不調、実は家庭が原因かも。両方との向き合い方を教えてくれる映画は?

日々仕事に追われていると忘れがちですが、家族が支えてくれているからこそ、頑張ることができるという方も多いでしょう。自分も家族にとって必要な存在であって、お互いに支え合っているからこそ、心地よい関係でいられるのだと思います。

夫婦や家庭円満の秘訣として「仕事を家に持ち込まない」とはよく言われますが、完全に切り分けて考えるのは難しいですよね。そこで今回は、家族との関係を見つめなおすことで、仕事に好影響が生まれるかも?というヒントを与えてくれる作品をご紹介します。

1本目は、「社会人に突き刺さる」と話題になった、『プーと大人になった僕』。世界的に有名な「くまのプーさん」を実写化した映画です。

家族の大切さを改めて気付かせてくれる『プーと大人になった僕』

あらすじ

かつては想像力豊かな少年だったクリストファー・ロビン(ユアン・マクレガー)。大人になった彼は仕事に追われる毎日を送り、家族との間に溝を生んでしまっていた。そんな彼の元に、かつて親友だったクマのぬいぐるみ、プーが訪ねてくる。最初はプーを拒んでいたロビンだったが、次第に、失ってしまった純朴さと活気を取り戻す。

自分が純粋だったころを知っている旧友と再会することで、人生における大事なものを思い出す。思考が凝り固まっているロビンに、プーの「どうして?」という本質を突いた、シンプルな言葉が刺さります。そんなプーと過ごすうちに、ロビンは家族への想いを再確認し、世間が決めた「常識」にとらわれてしまっていた自分に気づきます。そして、家族に歩み寄ることで、仕事にも転機が訪れるのです。

私たちは本来、生活を豊かにしたいから働いていたはず。仕事はそのための手段であり、それが原因で生活の質が下がっては本末転倒です。この映画は、仕事をする理由の一つである「家族」の大切さに気づくところから、働くことの原点を思い出させてくれます。

「『なにもしない』をする」など、グッとくる名言がちりばめられているので、観ると気分が晴れますよ。

プーと大人になった僕
ディズニープラスで配信中
©2021 Disney

※ディズニープラスは、ディズニーがお届けする公式動画配信サービスです。

仕事一辺倒の人生を見つめなおすきっかけをくれる『ファミリー・ツリー』

あらすじ

ハワイで生まれ育った弁護士のマット(ジョージ・クルーニー)。仕事に明け暮れる生活を送っていた彼の人生は、妻が事故でこん睡状態に陥ったことで一変。しかも、妻が浮気していて、離婚を考えていたことを知り、マットは愕然とする。自分が感じていた幸せは、独りよがりなものだったのか? 彼は落ち込みながらも、真の意味での家族の絆を取り戻そうと奮闘する。

もう1本、ご紹介するのは、ハワイを舞台にしたユニークな家族ドラマ『ファミリー・ツリー』。

家庭円満だと思っていたのは、自分だけ……。なかなかに耳の痛い話です。読者の皆さんにも、同じような経験をしたことのある方がいらっしゃるかもしれません。その真実を知ったときはものすごく落ち込みますが、人生はまだ終わりじゃない。私たちは再生できるはずだ、という優しいメッセージをくれるのが、本作なのです。

家計を支えるために、仕事に打ち込むのは大切なこと。でも同じくらい、家族と過ごす時間も大事なものです。悲しいアクシデントから始まる本作ですが、サジェスチョンを与えてくれつつ、そっと背中を押してくれるハートウォーミングな仕上がりになっています。ラストシーンがとても美しいので、ぜひ楽しみに見ていただければと思います。

ファミリー・ツリー
ブルーレイ発売中/デジタル配信中
発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©2018 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC.

[Chapter2]好きなことを仕事にするべきか、悩んだ時に見るべき映画は?

画像: [Chapter2]好きなことを仕事にするべきか、悩んだ時に見るべき映画は?

仕事にひたすらまい進するのもありですが、趣味や好きな物があると、より仕事にハリが出ますよね。さらにはそれが副業になったり、あるいは転職のきっかけになったり……。そこからビジネスチャンスが広がることって、実はけっこう多いように思います。

趣味を仕事にしちゃった系の映画はいくつかありますが、今回は心温まる、それでいてじんわり泣ける良作をご紹介します。

動物園を購入した家族の実話を元にした映画『幸せへのキセキ』です。

好きなものに本気で打ち込むことの素晴らしさを教えてくれる『幸せへのキセキ』

写真:Photofest/アフロ

あらすじ

最愛の妻を亡くしたコラムニストのベンジャミン(マット・デイモン)は、人生の再出発のために2人の子どもを連れて家探しに赴く。さまざまな物件を見る中で「ここに住もう!」と決めた家は、なんと閉園中の動物園付きだった! ベンジャミンは最初こそ趣味の延長で動物たちと触れ合っていたが、やがて動物園のオーナーを務めることを決断。本気で再オープンを目指していく。

ウソのような奇跡の実話を描いた本作。人生の指針を見失った主人公が打ち込める仕事を見つけて、それをきっかけに家族の絆を取り戻していく姿を陽だまりのような温かさで描いています。「動物が好き」と言っても、仕事にするのは大変。主人公は資金も知識もない状態からスタートを切りますが、本気で挑むことで動物園の経営を生涯の仕事にしていきます。

画像: 写真:Target Press/アフロ

写真:Target Press/アフロ

長い人生、働く意味に悩んで立ち止まってしまうこともあるでしょう。この映画は、そんなタイミングで「自分が本当に何をしたいのか」を問いかけてくれます。意外なところから人生は拓けていくし、「好き」という気持ちに勝るものはないのだということを、優しく教えてくれる作品です。

好きなこととの向き合い方を示してくれる『キセキ ―あの日のソビト―』

あらすじ

厳格な医師である父に反発し、ミュージシャンになった兄ジン(松坂桃李)と、歯科大学に通う弟ヒデ(菅田将暉)。兄は仕事として、弟は趣味として音楽と向き合っていたが、ある日ジンは弟の非凡な才能を確信。弟と仲間たち(横浜流星、成田凌、杉野遥亮)の音楽活動を支援していく。

2作目は、同じ「キセキ」つながりで、GReeeeNのデビュー秘話を描いた『キセキ ―あの日のソビト―』をご紹介します。

こちらは、「趣味を仕事にする」「趣味を趣味のまま楽しむ」という2つの生き方を比較できる作品です。これは、趣味に熱中したことのある誰しもが悩む問題ですよね。僕自身も、「映画」という趣味を仕事にしたいな、という思を抱いてから映画ライターになれるまでは数年かかりました。その間ずっと、この2つの気持ちの狭間で揺れていました。

画像: 好きなこととの向き合い方を示してくれる『キセキ ―あの日のソビト―』

趣味として上手くいっても、お金が稼げるとは限らない。映画では、音楽活動と歯科医の二足のわらじという‟副業“的な新たな選択肢が提示されますが、「この手もあったのか!」とうならされることでしょう。趣味を仕事にしたいけどどうなんだろう……と悩んだ時などは、この作品が“光”になってくれるはずです。

キセキ ―あの日のソビト―
DVD&Blu-ray好評発売中
スペシャルプライス版Bru-ray:2,200円(税込)
スペシャルプライス版DVD:1,650円(税込)
発売元:ハピネット/ハイスピードボーイズ
販売元:ハピネット
©2017「キセキ ーあの日のソビトー」製作委員会

[Chapter3]今から不安な老後について考えさせてくれる映画は?

画像: [Chapter3]今から不安な老後について考えさせてくれる映画は?

毎日忙しく働いていると、ふと「遠い将来」を考えることがありますよね。老後を迎えたときを想像して「お金に苦労したくないけど、大丈夫かな……」と不安を抱く方もいれば、「そもそもイメージが沸かないなぁ」と思う方もいらっしゃるかと思います。

『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009)や『最高の人生の見つけ方』(2007)など、老後を描いた良作は数々ありますが、今回は2本の映画をご紹介します。

1本目は、引退した音楽家を描いた『グランドフィナーレ』です。

優雅な老後にうっとり。現役時代のモチベーションまで上げてくれる『グランドフィナーレ』

あらすじ

世界的に有名な音楽家のフレッド(マイケル・ケイン)は、仕事を引退し、スイスの高級リゾートホテルで悠々自適な老後の生活を送っている。親友の映画監督ミック(ハーヴェイ・カイテル)や、ホテルを訪れるセレブとの交流を楽しむ彼だったが、そんな折、英国女王から出演依頼が舞い込む。

一生懸命働いてお金を稼ぎ、貯金を使って余生を存分に楽しむ。まさに理想の老後生活ですよね。本作に登場するリゾートホテルは、大浴場にスパ、豪華な食事、風光明媚な大パノラマの眺望などなど、まさに現役時代に頑張った自分へのご褒美的な理想郷です。

画像: 優雅な老後にうっとり。現役時代のモチベーションまで上げてくれる『グランドフィナーレ』

圧倒的な映像美と、米アカデミー賞にもノミネートされた音楽に身をゆだねれば、自分も宿泊客になったような感覚を味わえます。そして、「こんな施設で老後を過ごせるように、仕事に打ち込もう!」「しっかりお金を貯めていこう」とモチベーションが上がるのではないでしょうか。

もちろん、『グランドフィナーレ』の魅力は、映像美だけではありません。様々な余生の過ごし方を見せてくれるところも高ポイント。フレッドが隠遁生活を楽しむのに対し、ミックは「生涯現役」を貫くシニア。一生をかけて、仕事を楽しむ。これもまた素敵な生き方ですよね。

対照的なライフスタイルの2人を比較して、自分だったらどっちだろう?どんな老後なら実現できるかな?と考えるのも良しです。

グランドフィナーレ
DVD発売中
価格:¥1,257(税込)
発売・販売元:ギャガ
© 2015 INDIGO FILM, BARBARY FILMS, PATHÉ PRODUCTION, FRANCE 2 CINÉMA,NUMBER 9 FILMS, C -FILMS, FILM4

心の病との戦いも?思い通りにいかない老後を描いた『それでも、愛してる』

写真:Everett Collection/アフロ

あらすじ

うつ病になってしまったおもちゃ会社の社長ウォルター(メル・ギブソン)に、ある変化が訪れる。彼が手にしたビーバーのぬいぐるみが突然しゃべりだし、彼の心を救ったのだ。陽気な性格のぬいぐるみに勇気づけられ、ウォルターは再起を図るのだが……。

2本目は、180度異なる映画をご紹介します。うつ病に陥ったおもちゃ会社の社長を描いた『それでも、愛してる』です。

『羊たちの沈黙』(1991)のジョディ・フォスターが監督・出演した本作は、正直に言ってちょっとキツいシーンが多い映画です。精神的、肉体的に追い込まれていく主人公を観ると、こちらも「うう……つらい」となりますし、衝撃的な「痛い」シーンもあります。

この作品は、老後に起こり得る様々な出来事の「予習」として、効果を発揮するものでもあるかと思います。体力が衰えたり、病気になってしまったり……。悠々自適でない老後が待っている可能性について、「そうなったら、どうするか」と思いを巡らせるきっかけになることでしょう。

仕事一筋の企業戦士がキャリアを積み、老後が見えてきた時点で病気になってしまう。自分の将来にも、ないとはいえないシチュエーションですよね。痛々しい描写も盛り込んだ、生易しくはない作品だからこそ、見えてくるものがある。そんな作品です。

まだまだ尽きない、人生を豊かにしてくれる映画の数々

今回は6作品を紹介しましたが、いかがだったでしょうか? 長い現役時代、どうしても「働く意味・意義」について考えこんでしまうタイミングはあるもの。でも、悩むことは決して悪いことではありません。現状を整理し、次のステージへと進むための準備をするタイミングなのだと思います。頑張る人の栄養に――。なにか1本でも、皆さんの琴線に触れる映画があれば、うれしい限りです。

変わったチョイスから王道のものまで、30本近くをご紹介してきた「M&BMovie Collection」は、これにて終了。映画が誕生してから、120年あまり。まだまだ、私たちの悩みにフィットする作品は、無限にあります。本連載でご紹介した作品をきっかけに、さまざまな映画にぜひ、触れてみてください。きっと、これまで以上に人生が豊かになるはずです。

イラスト/石井あかね

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