ここ数カ月ですっかり慣れてしまったおこもり生活。外出の機会が減り、気づいたら“おこもり太り”をしてしまったという人が多いのではないでしょうか。

「短期間で体重が一気に増えてしまった」「なんだか体がだる重い」「体がむくみやすくなってしまった」……。そんな体の不調を感じている方にこそ注目してもらいたいのが、食べるだけで体がリセットされるだけでなく、美味しくてお手頃に作れる食事「食薬ごはん」。

今回は食薬アドバイザーである大久保愛さんに、食薬ごはんの効果とおすすめのメニュー教えてもらいました。

お話を聞いた人

大久保 愛(おおくぼ あい)

アイカ製薬株式会社代表取締役・漢方薬剤師。昭和大学薬学部生薬学研究室で漢方を学び薬剤師免許を取得。その後、北京中医薬大学で漢方・薬膳・東洋の美容などを学び、日本人ではじめて国際中医美容師資格を取得。漢方相談、調剤薬局、エステなどの経営を経て商品開発・ライティング・企業コンサルティングなどに携わる。著書に『不調がどんどん消えてゆく 食薬ごはん便利帖(世界文化社)』『心と体が強くなる! 食薬ごはん(TJMOOK)』など。
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「食薬ごはん」とは心と体を整える食事のこと

画像: 「食薬ごはん」とは心と体を整える食事のこと

そもそも、食薬とは一体何なのでしょうか。

「食薬とは、漢方・腸活・栄養学の考え方をもとにした心と体を整える食事のことです。『未来の自分のために今の心と体と向き合い、その時に適した食事を選ぶのと同時に、体に悪影響を与える食材は控えるようにする』という考え方をベースとしています。

例えば、お腹の調子が悪い時にはネバネバ食材をとるようにして、油物を控える。メンタルが落ち着かない時にはお肉などアミノ酸や鉄、ビタミンB群が豊富な食材をとるようにして、甘い飲食物を控えるといったように、食事で体のバランスを整えていくことができます」(大久保さん、以下同)

では具体的に、食薬にはどういった効果があるのでしょうか。

「わかりやすく体を車でたとえて解説してみましょう。体を動かす燃料を、漢方では『気・血・水』と表します。燃料がなければどんなに部品を直しても車はうまく動かないですよね。つまり、私たちにとって燃料である『気・血・水』が無ければ、いくら他の養生を試してもなかなか結果は出ないのです。

そのため、必要最低限の『気・血・水』を補うことが最優先事項。そのうえで、胃腸への負担を軽減し、炎症を抑え、老廃物の排泄を促し、血流を改善することを段階的に目指していきましょう。下の4つのポイントをベースに、その時々に合った食材や調理方法などを選んでいくことで、体調がスムーズに整いやすくなるのです」

【食材選びや調理方法で意識するべき4つのポイント】

① エネルギーを作る栄養を補充する
→体の燃料「気・血・水」を補う
ビタミンB群・鉄・亜鉛・マグネシウム・タンパク質・オメガ3脂肪酸
② 腸内細菌が健やかに過ごせるように、腸内環境を整える
→燃料「気・血・水」をうまく取り込めるような車(=体)を作る
食物繊維・発酵食品
③ 炎症を起こす食事を控える
→車の故障の原因となる質の悪い燃料を取り入れないように気を付ける
糖質・脂質過多・アルコール・カフェイン・乳製品・トランス脂肪酸・高温調理
④ 炎症を抑える食事をとる
→質の悪い燃料(『痰湿・湿熱』)をリセットするものを取り入れるようにする
ファイトケミカル・オメガ3脂肪酸・ビタミンACE・ビタミンD・亜鉛・マグネシウム・ハーブ・旬の野菜など

おこもり生活で変化した体は、食薬ごはんで整える

画像: おこもり生活で変化した体は、食薬ごはんで整える

「食薬とは何か?」を知ったところで気になるのが、おこもり生活が続いたことで、今、自分の体はどんな状態にあるのかということ。

「今回の新型コロナウイルスの影響で、多くの人はおこもり期間が1年ほど続くことになりました。運動不足や偏った食事、夜更かし、動画やネットサーフィンによる眼精疲労など、健康的な生活とは真逆の日々を過ごし、悪い習慣が身についてしまった人が多いはずです。

特に運動量が減ったことで消費エネルギーも減ってしまったのに、食事量がそれを超えてしまう。さらに筋肉量が減ることで基礎代謝も下がるという状態となり、結果的におこもり太りになってしまっているのです。

また、マスク生活で呼吸が浅くなり、外出を控えることで太陽を浴びなくなって免疫と血流が低下。自律神経も乱れ、PMS(女性の月経前に起こる不調)が悪化したり、過食気味になったり、依存性のある食べ物や味の濃いこってりとした食べ物を欲しやすくなったりしている人も多いようです。

人が身についてしまった悪い習慣を変えるには、最低3カ月は必要。しかし多くの人は日常生活を忙しく過ごしているため、今すぐにその習慣を急に変えることはなかなか難しいでしょう。だからこそ、毎日行う『食事』という習慣の中からアプローチできる食薬ごはんを生活に取り入れることを推奨しているのです。

これから紹介するような食薬ごはん生活を送れば、自然と腹八分目で抑えられるようになったり味覚が整うようになったりするほか、体の中の老廃物が排泄され代謝アップも期待できます。食薬ごはんは体内環境を整えてくれるリセット食なので、ぜひ取り入れてみてください」

食薬ごはん生活初心者におすすめしたい、3つの習慣

画像: 食薬ごはん生活初心者におすすめしたい、3つの習慣

ただ、いきなり食薬ごはん生活を始めようにも、何から手をつければいいのかわからないという人が多いでしょう。そこで、誰でも簡単に取り入れやすい習慣を教えてくれました。

【食薬ごはん生活で始めてみる3つの習慣】

①食事の初めに片手分くらいのキャベツの千切りを食べる
食事の初めに食べることで食べ過ぎの防止や、消化を助けることにつながります。また、便秘解消、抗酸化・抗糖化作用、生活習慣病の予防、むくみの解消などの効果も得られます。
②味噌汁を食事に取り入れる
味噌汁を取り入れるのには、食事を和食に近づけるという狙いがあります。食事を和食にすることで、脂っこい食べ物や大味な食事に偏らず、野菜やお出汁なども取り入れたバランスの良い食事に整いやすくなります。また、内臓から体を温めて代謝の低下を抑える機能や、腸内環境を整える機能もあります。汁物で満足感を得られるのも、味噌汁の魅力です。
③おかずに迷ったら鶏肉を食べる
鶏肉はタンパク質だけでなく、鉄・ビタミンB群の不足などによっても代謝をアップさせ、痩せやすい体にしてくれます。ダイエット時には、豆腐や納豆など植物性の食材に偏りがちになる人が多いですが、動物性の食材の方が栄養を吸収しやすいので、鶏肉を積極的に摂取するようにしましょう。

「今回は『キャベツ』『味噌汁』『鶏肉』の3つの食材を使ったテクニックをご紹介します。ちなみにこれらの食材を作った料理は、月初や週末などにまとめて作り置きしておくと便利です。キャベツは乳酸発酵させると1カ月くらい、鶏肉はささみや脂身を取った胸肉などを使って鶏ハムにしておくと1週間は保存が効きます。忙しい人は保存食を作る要領で休日などにまとめて作っておけば、食薬ごはん生活を続けやすくなりますよ」

1食300円以内で作れる! おすすめ食薬ごはんメニュー3選

それではここからは、先ほどの掟に沿ったレシピを3つ紹介していきます。どのレシピも材料費は1食300円以内、さらに、作り方も簡単なので、いつもの食事に1品プラスしてみてはいかがでしょうか。

①キャベツとハーブの乳酸発酵

画像: ①キャベツとハーブの乳酸発酵

「キャベツは胃腸の働きを整え、さらに乳酸発酵することで腸内環境をより整えてくれる食材です。腸内から体をクリーンにしたい時におすすめです」

【材料】
・キャベツ1玉(1kg)
・塩 小さじ4
・オリゴ糖 大さじ1
・鷹の爪 1個
・ローリエ 1枚

【作り方】
1. キャベツを千切りにします。
2. 大きめのジップ袋にキャベツを入れます。入りきらない場合には、2袋に分けてください。
3. 残りの材料をすべて入れ、揉んでなじませます。
4. そのまま常温で2Lのペットボトルなどで重しをして、2〜3日放置します。
5. 酸っぱい香りがしてきたら完成。保存容器に移し冷蔵保存します。

②なめことオクラのスパイシー味噌汁

画像: ②なめことオクラのスパイシー味噌汁

「なめこやオクラのぬめりは、消化管の粘膜を強化してくれます。さらに、発酵調味料であるお味噌で腸内環境を整えることができます。そこにブラックペッパーやシナモンなどのスパイスをプラスすることで、抗菌作用、抗糖化作用、抗酸化作用、血行促進、腸内環境の改善などが期待できるのです」

【材料】
・なめこ100g
・オクラ8本
・味噌
・水500ml
・刻んだ昆布 3cm
・胡椒 たっぷり
・シナモン 適量(2振り程度)

【作り方】
1. なめこはザルにあけ、ぬめりを取るように流水で洗います。水洗いをしすぎると栄養素が落ちてしまうので、洗いすぎないように気をつけましょう。
2. オクラを大きめにカットします。
3. 鍋に水と刻んだ昆布を入れて火にかけます。
4. 沸騰したらオクラ、なめこを入れ柔らかくなるまで煮立てます。
5. 味噌を溶き入れ、胡椒とシナモンをたっぷりと加えたら完成です。

③塩麹のしっとり鶏ハム

画像: ③塩麹のしっとり鶏ハム

「このレシピでは、鶏ハムの形にこだわらず作ってしまって問題ないです。気になる臭みも生姜をたっぷり入れることでほぼ消え、オリーブオイルを使用することでしっとりとした食感になります。代謝が向上して体に良いだけでなく、冷たいままでも美味しく、簡単で保存が効く便利さもポイントです」

【材料】
・鶏胸肉(ささみも可)300g
・塩麹 大さじ2
・オリーブオイル 大さじ1
・おろし生姜 大さじ1

【作り方】
1. 鶏胸肉の皮を取り除きます。
2. フォークで鶏胸肉の両面に穴をあけます。
3. ビニール袋にすべての材料を入れ、揉みこんでなじませます。
4. 冷蔵庫で一晩寝かせます(4時間程度)。
5. ビニール袋を結び、さらにジップ袋に入れます(形を補正する必要はありません)。
6. たっぷりのお湯をお鍋で沸騰させ、その中に5を入れ蓋を閉めそのまま加熱。5分後に火を消し、放置します。
7. 粗熱が取れたら完成。食べやすい大きさにカットして保存しましょう。

食薬ごはん生活で、おこもり太りにサヨナラ

外的環境の大きな変化に伴い、体の不調を訴える人が増加したおこもり期間。おこもり太りを解消したい、体の調子を整えたいと考えている方は、まずは「食事」という身近なところから、習慣を変えてみてはいかがでしょうか。今回大久保さんに教えてもらったレシピや食材を参考に、食薬ごはんで心と体の調子を整えていきましょう。

撮影/田中信也

この記事の著者

ながた さや

ウェブライター。1993年生まれ。新卒でIT企業のエンジニアとして勤務後、2018年9月からフリーランスのウェブライターとして活動を開始。SEO・取材を中心に、美容・旅行・ITなど様々なジャンルの執筆を行っている。
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