「カッコいい体に仕上げたい」「理想のスタイルを実現したい」といった憧れから、筋トレを始める人が増えています。でも、せっかくの筋トレも正しい食事を摂らないとあまり効果は得られません。とはいえ、高い栄養素を備えるサプリメントや高品質な食事を日常的に食べるのは、若い世代には難しいですよね。そこで筋トレの効果を高めてくれるコスパのいい食事を、管理栄養士の佐藤樹里が紹介します。

筋トレ後に摂取すべき栄養素とは?

画像: 画像:iStock.com/GeorgeRudy

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レシピを紹介する前に、まずは筋トレと食事の関係を理解することが大切です。筋肉をつくるメカニズムと、筋トレ後に摂取すべき栄養素について説明しましょう。

トレーニング後の栄養摂取が必要な理由

そもそもなぜ、筋トレ後に食事が必要なのでしょうか?

大前提として筋トレなどのトレーニングは筋肉を損傷させる作業です。そして、その筋肉を修復した時に、より強い筋肉がつくられます。ですが、その際に筋肉の材料となる栄養素が足りなければ、筋肉をスムーズに作ることはできません。

食事量が少なすぎると、筋肉量が増えないだけでなく、筋肉が痩せてしまい、筋トレが逆効果になるケースもあります。

ダイエット目的の方の場合、食事制限は一見体重減少に効果的に思えますが、エネルギーが足りない状態で一番最初に分解されるのが、脂肪ではなく筋肉なのです。筋肉量が増えないと基礎代謝量やエネルギー消費量が上がらないので、結果的に痩せづらい身体になってしまいます。

だからこそ、どのような目的のトレーニングであっても、筋トレ後には十分な食事を行うことが大切なのです。

最も必要な栄養素「タンパク質」

画像: 画像:iStock.com/a_namenko

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では、どのような栄養素を摂るべきなのでしょうか?

まず注目すべきなのは、筋肉の主な材料となるタンパク質です。肉類、魚介類、卵類、大豆製品、乳製品に多く含まれています。

運動をしていないデスクワークの人の場合、1日に必要なタンパク質量は「体重[㎏]×1g」が目安。あなたの体重が60kgなら、60gのタンパク質が必要です。

〈表〉運動をしていない人の場合

1日あたりに必要なタンパク質量
体重[㎏]×1g

この60gという数字は、食材でたとえると卵10個分。コンビニに売っている100gのサラダチキンでも、タンパク質は約20gしか含まれていないので、3個分です。これだけ摂取できている人はそう多くないのではないでしょうか?

そして、トレーニングをする人の場合、必要なタンパク質量はさらに多くなり、「体重[kg]×1.3g〜1.5g」が目安。体重60kgの人なら75gがボーダーラインとなります。

〈表〉トレーニングをした人の場合

1日あたりに必要なタンパク質量
体重[㎏]×1.3〜1.5g

さらに毎日トレーニングをするような人なら、「体重[kg]×2g」が適当でしょう。この数字を維持するには、計画的に食事を摂ることが欠かせないことは言うまでもありません。

〈表〉タンパク質の含有量が多い食品

種類食べもの100g当たりのタンパク質含有量
肉類生ハム24.0g
鶏ささみ23.9g
牛もも肉21.2g
豚ロース18.3g
鶏砂肝18.3g
魚介類イワシ丸干し32.8g
いくら32.6g
するめ69.2g
かにかまぼこ12.1g
魚肉ソーセージ11.5g
卵類卵黄16.5g
ゆで卵12.9g
生卵12.3g
大豆製品きな粉36.7g
油揚げ23.4g
納豆16.5g
木綿豆腐7.0g
絹豆腐5.3g
豆乳3.6g
乳製品パルメザンチーズ44.0g
脱脂粉乳34.0g
プロセスチーズ22.7g
ヨーグルト4.3g
牛乳3.3g
文部科学省「食品成分データベース」より

「炭水化物」「脂質」「ビタミン」「ミネラル」も欠かせない

画像: 画像:iStock.com/AlexRaths

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また、筋トレ後はタンパク質のみならず、様々な栄養素を摂取することも心がけましょう。大量のタンパク質を摂っただけでは、それを体内でスムーズに代謝することができないからです。

具体的には、タンパク質と合わせて「5大栄養素」と呼ばれる炭水化物、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよく摂取してください。

〈表〉各栄養素が豊富な食品

炭水化物米、小麦、バナナ、さつまいもなど
脂質オリーブ油、バター、牛脂、肉の脂身など
ビタミン魚の赤身(ビタミンB6)、柑橘類(ビタミンC)、モロヘイヤ(ビタミンE)など
ミネラルアーモンド(カルシウム)、ほうれん草(鉄分)、赤身の肉(マグネシウム)など

炭水化物は、疲れた体に必要なエネルギー源。脂質も効率の良いエネルギー源になるほか、筋肉の外側を包む細胞膜の素になります。ビタミン類も重要で、タンパク質の代謝を強く促すビタミンB6のほか、筋トレで受けた体へのストレスを低減するのもビタミンの役目です。

ミネラルには鉄分、マグネシウム、亜鉛、カルシウムなどがあり、たとえばカルシウムやマグネシウムは筋肉の収縮に関わっています。不足すると筋トレ後の痙攣を引き起こすケースもあるので、しっかりと確保しないといけません。

栄養素は歯車のようなもので、どの栄養素が欠けていても体は万全に動きません。タンパク質が大きな歯車だとすれば、それを支える中小の歯車を回すことも同じくらい重要なのです。

あなたの目的は?筋トレ後のおすすめ食事メニュー

一口に筋トレといっても、取り組む動機は人によって様々でしょう。「筋力を高めてメリハリのある体を手に入れたい」という人もいれば、「しなやかなで持久力のある体を手に入れたい」という人もいるはずです。

トレーニングの効果を最大限に引き出すなら、目的に応じて食事の内容も変えるのがベストです。ここからは目的別に、筋トレ後に摂ると良いコスパのいい食事を紹介します。

「筋力向上」を目的とした場合

筋力向上や筋肥大を目指している人は、負荷の高いトレーニングによって筋肉が大きく損傷しています。それを補修して強くするには、より多くのタンパク質を摂取することが重要です。まずはメニュー例を紹介しましょう。

画像: 「筋力向上」を目的とした場合

〈表〉メニュー/材料費の目安

白米(150g)73円
鶏のむね肉のネギ塩麹155円
ブロッコリーとミニトマトのゴマ和え102円
わかめと豆腐の味噌汁36円
330円
※価格は2020年2月時点の購入額より算出

〈表〉栄養価の目安

エネルギー549kcal
タンパク質47.6g
脂質7.8g
炭水化物75g
食塩相当量4.4g

メインメニューの作り方

(1)密閉保存袋に鶏のむね肉と塩麹を入れ、1〜2時間漬け込む。
(2)鶏のむね肉を取り出し、中まで火が通るように両面からしっかりと焼く。
(3)最後にお好みの量の小ねぎをまぶし、ブラックペッパーを振って完成。

(1)食事メニューのポイント

画像: 画像:iStock.com/fcafotodigital

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筋力アップをサポートする“最強の食材”とも言えるのが、鶏のむね肉です。高タンパク・低脂質でありながら、牛肉などと比べてコスパも抜群。さらに「イミダペプチド」という成分も豊富で、抗疲労効果や抗酸化作用によって筋トレ後のダメージ軽減も期待できます。また、お味噌汁に含まれる豆腐も、じつは高タンパク・高コスパの食材のひとつです。

ごはんをしっかりと摂るのもポイント。タンパク質に含まれる糖質を摂取すると血糖値が上がり、体内で血糖値を下げる働きのある「インスリン」と呼ばれるホルモンが分泌されます。インスリンには、筋肉で糖の取り込むチャネルを呼び起こす作用もあるため、筋肉をつくるうえで糖質も欠かせません。

一方で、タンパク質を多く摂っている人は便秘に陥りがち。これはお肉ばかり食べて腸内環境が乱れているのが原因で、消化が滞るとタンパク質の吸収も妨げられてしまいます。ブロッコリーやワカメに含まれる食物繊維を摂取し、腸内環境を整えましょう。なお、ブロッコリーやトマトはビタミンCも豊富なので、抗酸化作用による疲労回復も期待できます。

(2)コスパを良くするポイント

牛肉よりも鶏肉の方がコスパが良いことは上述の通りですが、鶏のむね肉以外の選択肢として、ささみ肉もおすすめです。元々、価格が安いのはもちろん、購入のしやすさもポイントとなります。より安く購入するなら、業務用スーパーなどで一括購入し、冷凍保存しておきましょう。

「持久力アップ」を目的とした場合

ランニングなどに取り組んでいて筋持久力を高めたい人には、魚中心の食事をおすすめします。タンパク質が豊富なのはもちろんのこと、ポイントは「良質な油」を摂取できることです。

良質な油を摂取することで、悪玉コレステロールを減らし善玉コレステロールを増やすなどの効用があり、血管をしなやかにします。特に酸素を多く運ぶランナーにとって血管をしなやかにして酸素や栄養を通りやすくすることは大切です。また、細胞ひとつひとつの細胞膜は脂質で作られており、これが不足すると体全体のパフォーマンスも落ちてしまいます。

また、ランナーは走っている時に酸素を多く使っているため、体内が酸化された状態になります。そのため、抗酸化ビタミンのビタミンA・C・Eを摂ることも同時に大切になります。

有酸素運動などで持久力アップを目指している皆さんは、筋力アップための無酸素運動のトレーニングをしている人よりも筋肉が損傷していません。使った分の筋肉を補ってあげるイメージで、体をメンテナンスするという視点を持ちましょう。

画像: 「持久力アップ」を目的とした場合

〈表〉メニュー/材料費の目安

鯖のネバネバ丼224円
ほうれん草のおひたし35円
あおさの味噌汁25円
284円
※価格は2020年2月時点の購入額より算出

〈表〉栄養価の目安

エネルギー690kcal
タンパク質36g
脂質25.1g
炭水化物78.3g
食塩相当量4.4g

メインメニューの作り方

(1)納豆とサバ味噌缶、みじん切りしたネギをよく混ぜる。
(2)納豆の付属のタレをかける。
(3)ごはんの上に盛りつけ、最後に卵黄を乗せたら完成。

(1)食事メニューのポイント

画像: 画像:iStock.com/ Hana-Photo

画像:iStock.com/ Hana-Photo

鯖に含まれる油は、不飽和脂肪酸のDHAやEPAなどが含まれており、動脈硬化などの生活習慣病の予防にも役立つ良質な油です。なかでもEPAには血液をサラサラにしたり、善玉コレステロールを増やしたりする作用があるので、体内の循環を高めて持久力をつけることに役立ちます。

鯖は骨まで食べられるため、カルシウムを摂取できるのもポイント。カルシウムの吸収を手助けするビタミンDも含まれており、強い骨を作ってくれます。さらには納豆に入っているビタミンKも骨の形成を促すため、鯖と納豆の“黄金コンビ”は、骨への刺激が多いマラソンランナーの方などにぴったりです。

そのほか、ほうれん草のおひたしからは、持久力アップに欠かせない鉄分を。あおさの味噌汁から摂取できるマグネシウムは、足のつりや痙攣の防止に役立ちます。

(2)コスパを良くするポイント

赤身魚から、良質な魚の油を摂ることができます。ただ、赤身魚の代表であるマグロやカツオなどの刺身は安上がりとは言えません。

コスパを求めるなら、手軽に取り入れられる缶詰がオススメです。サバ缶に飽きたら、ツナ缶に代えてもいいでしょう。上述のとおり、骨と一緒にカルシウムなどのミネラルも摂れるので、効果的と言えるでしょう。

「ダイエット」を目的とした場合

ダイエットに励む人は、食事量を減らして食生活のバランスを崩しがち。ですが、エクササイズの効果を最大限に引き出すためには、必要な栄養素をバランスよく摂取することが大切です。食事を極端に減らすのではなく、食べながら痩せられるダイエット食を紹介しましょう。

画像: 「ダイエット」を目的とした場合

〈表〉メニュー/材料費の目安

白米(100g)49円
豚ロースの生姜焼き204円
キャベツの千切りとミニトマト70円
卵と小松菜の味噌汁47円
370円
※価格は2020年2月時点の購入額より算出

〈表〉栄養価の目安

エネルギー529kcal
タンパク質33.7g
脂質20.3g
炭水化物48.5g
食塩相当量3.5g

メインメニューの作り方

(1)豚ロース(100g)に醤油(小さじ1)とおろし生姜(小さじ1)を10分ほど漬け込む。
(2)フライパンで(1)をタレごと入れて両面を焼く。
(3)キャベツの千切りとミニトマトを添えて完成。

(1)食事メニューのポイント

画像: 画像:iStock.com/Basilios1

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主役は安くてカンタン、栄養が豊富な生姜焼き。生姜にはシンゲンロールという辛味成分が含まれており、交感神経を刺激して脂肪燃焼を促してくれます。また、豚肉は糖質の代謝を助けるビタミンB1が豊富なうえ、脂質の代謝に使われるL-カルニチンという物質も入っているため、ダイエットの心強い味方になります。

炭水化物の量は少し控えめにしており、その分、タンパク質不足にならないよう味噌汁の具材を卵や豆腐に。メニュー全体で30g以上のタンパク質を確保しました。豚肉は脂身の少ないロースを選び、余計な脂質をカットしています。

また、ダイエット中の人で多いのが、体を形成したり代謝を良くしたりしてくれるミネラルの不足。可能であれば、動物性ミネラルと植物性ミネラルをバランスよく摂取しましょう。動物性ならレバー、植物性ならほうれん草やプルーン、ひじきなどがリーズナブルでおすすめです。

(2)コスパを良くするポイント

豚ロースは豚肉の中でも手軽に手に入り、豚バラよりも脂質が少ない食材です。ただし、その日の特売で他に安い部位があったら、脂身をカットして豚ロース代わりにしてもOK。まとめて購入し、冷凍して保存することなどもおすすめです。

また、お肉の量を1枚少なくする代わりに、玉ねぎなど野菜を一緒にいれてカサ増しをしてもいいですね。その時に減らしたお肉の分を、味噌汁に豆腐をいれたりすることで代替することがポイントです。

トレーニング後の食事の注意点

最後に筋トレ後の食事の注意点も紹介しましょう。

プロテインは筋トレから30分後、食事は60〜90分後に摂ろう

筋肉は壊れた瞬間から修復を始めます。理想としては、筋トレ後30分以内にプロテイン、60分〜90分後に食事を摂りましょう。

近年では、筋トレ後の24時間は、タンパク質の合成感度が高まるという研究もあります。筋トレをしてからの1日は、積極的にタンパク質を摂ることを意識してみてください。

“消化力”を鍛えるために咀嚼をしよう

タンパク質を効果的に吸収するために重要なのが消化力です。“痩せの大食いの人”がいますが、その原因は食事をきちんと摂取できていないから。スタイル維持という観点ではいいかもしれませんが、栄養の取りこぼしを少しでも減らすために、消化力を高めることが大切です。

消化力アップの近道は、咀嚼の回数を増やすことです。食事をよく噛んで分解すれば、体内にも吸収されやすくなります。

理想は飲み込むまでに20〜30回と言われていますが、それが難しい人は、ゆっくりと時間をかけて食事することを意識しましょう。普段の食事が10分から15分になるだけでも、咀嚼の回数は自ずと増えているものです。

ただし、“ダラダラ食い”は太りやすくなるため、食事の時間は20〜30分ほどに抑えてください。

そのほか、食物繊維が豊富な食べ物を摂取したり、自分の身体に合ったヨーグルトを探したりと、腸内環境を整えることも有効です。

体を動かすだけでなく、食事もトレーニングの一部です。必要な栄養素を摂取しなければ、どんなに激しい負荷をかけても筋肉は増えません。

私たちの体を形作っているのは、毎日の食事の積み重ね。それを理解してトレーニングに励めば、理想の体型はもちろんのこと、お金で買えない健康も守られていくはずですよ。

参考資料
1)International Society of Sports Nutrition Position Stand: protein and exercise. J Int Soc Sports Nutr. 2017 Jun 20;14:20.

この記事の著者

佐藤樹里

アスドリファクトリー代表 管理栄養士。水泳インストラクターとして勤務後、フィリピン・カナダへ約1年渡航。現地のレストランでカナダ人のシェフと共に働く。帰国後はアスリート向けの食堂と老人ホーム厨房の経験を経て独立。現在はライター、スポーツイベント開催、栄養講座、ダイエットサポート、高タンパク質のヘルシーレシピ作成などを行う。
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