※この記事は2022年11月4日に公開した内容を最新情報に更新しています。
年末調整ではふるさと納税の控除を受けられない! その理由とは?
会社員の人が税金に関する手続きを行う場合、「年末調整」を利用することがあります。しかし、ふるさと納税の控除については、年末調整では手続きができません1)。その理由を説明します。
ふるさと納税の控除を年末調整で行えない理由とは?
ふるさと納税によって受けられる控除額は、1年間(1月1日から12月31日まで)にふるさと納税で寄附した金額の総額で決まります。
一方、年末調整については、多くの会社で12月の給料日に実施します。従業員は、それまでに控除に関する書類を提出しなければなりません。
つまり、ふるさと納税の期間がまだ残っている段階で年末調整が行われることになります。年末調整のあとにふるさと納税を申し込むということも起こりかねないため、ふるさと納税の手続きは年末調整ではできないのです。
なお、医療費についても同じ理由で年末調整では手続きが行えません。12月31日を過ぎて、1年間の総額が確定してから翌年に手続きを行います。
年末調整の時期に間に合わなくても大丈夫! 書類も必要なし
ふるさと納税の税金に関する手続きは、すべて寄附した年の翌年に行います。
そのため、年末調整の時期が迫っても「ふるさと納税の手続きをしなければ…!」と焦る必要はありません。年末調整の際に、ふるさと納税に関しての手続きは不要です。
必要な手続きは「ワンストップ特例制度」or「確定申告」
それでは、ふるさと納税で税金の還付・控除を受けるためにはどのような手続きをすればいいのでしょうか。
ふるさと納税による税金の還付・控除を受ける場合、一般的には「確定申告」の手続きが必要になります。ただし、確定申告をせずに、ふるさと納税による控除を受ける方法として「ワンストップ特例制度」があります2)。
税金の手続きを進める場合は、確定申告とワンストップ特例制度のどちらかを利用することとなります。しかし、確定申告とワンストップ特例制度のどちらを選べばいいのでしょうか。それぞれの制度の概要やメリット・デメリットについては後述します。
なお、ふるさと納税の申込期限については、以下の記事で詳しく解説しています。併せて読んでみてください。
【関連記事】ふるさと納税の申込期限はいつまで? 手順・必要書類の詳細はコチラ
そもそもふるさと納税とは、応援したい自治体に寄附できる制度
ふるさと納税は、生まれ故郷や応援したい自治体など、好きな自治体に寄附ができる制度です3)。寄附先の自治体を自由に選べるため、必ずしも出身地や居住したことのある地域である必要はありません。
最低限の条件として「自己負担金の2,000円」を支払う必要がありますが、ふるさと納税の寄附金のうち、その2,000円を超える部分については、所得税の還付や住民税の控除を受けられます。
つまり「寄附金額−2000円」分の税金が軽減されます。
〈図〉ふるさと納税のしくみ
また、寄附金の使い道を寄附する側が指定できたり、寄附先からの返礼品として自治体の名産品などをもらえたりするのも、ふるさと納税ならではの大きな特徴です。
なお、2023年10月のルール変更・改正より、自治体の必要経費に含まれる項目が増え、返礼品は地場産品に限ることになりました。また、インターネットなどでの広告に関して、“割引”や“増量”など、返礼品を誇張したり、寄附者を誘引したりするような宣伝の仕方に対する規制がさらに厳しくなります。ふるさと納税はあくまで自治体に寄附を行う制度であることを今一度認識させることがルール変更・改正の主旨です。
ふるさと納税のメリットや、ふるさと納税をしないほうがいい人などについては、以下の記事で解説しています。併せて読んでみてください。
【関連記事】ふるさと納税の5つのメリットを解説! 詳しくはコチラ
【関連記事】ふるさと納税をしないほうがいい人とは? 年収の条件を解説。詳しくはコチラ
ふるさと納税で控除を受ける方法①「ワンストップ特例制度」
「ワンストップ特例制度」は確定申告に比べて簡単に手続きが済むのが特徴です。寄附した自治体へ指定の申請書を直接送るだけで手続きが完了します4)。なお、申請書は翌年の1月10日までに各自治体に送る必要があります。
「ワンストップ特例制度」のメリットとデメリット
簡単に手続きができるのがワンストップ特例制度のメリットです。基本的に、書類作成作業などはありません。ただし、ワンストップ特例制度の利用は、年間で最大5つの自治体への寄附に限られます。6つ以上の自治体に寄附する場合、確定申告で手続きする必要があります。また、自治体ごとに申請書を送る必要があるため、寄附先が多いほど手間がかかる点もデメリットといえます。
「ワンストップ特例制度」を選んだほうがいい人の特徴
ワンストップ特例制度を選んだほうがいいのはどんな人でしょうか。当てはまる人の特徴を確認しておきましょう。
- 寄附した自治体が5つ以内の人
- もともと確定申告を行う必要がなく、より簡易的な方法を好む人
寄附する自治体数が少ない人は、手間のかからない「ワンストップ特例制度」がおすすめです。また、通常なら確定申告を行わない人、またはこれまで確定申告をしたことのない人も、ワンストップ特例制度を選んだほうが手続きは簡単に感じるはずです。
なお、ワンストップ特例制度で申請したあと、医療費控除などのために確定申告をすると、ワンストップ特例制度の申請が無効になってしまうので、注意しましょう5)。
参考資料
ふるさと納税で控除を受ける方法②「確定申告」
確定申告でもふるさと納税の控除を受けることができます。確定申告を選ぶ場合のメリットとデメリットなどを以下で説明します。
「確定申告」のメリットとデメリット
確定申告では、寄附先の数の制限なく自治体に寄附ができるのがメリットでしょう。年間でいくつの自治体に寄附しても手続きには変化がありません。ただし、ワンストップ特例制度に比べて、書類作成などの作業が多くなります。会社員などで普段は確定申告をしていない場合は、特にデメリットと感じるでしょう。
「確定申告」を選んだほうがいい人の特徴
では、ここまでを踏まえて「確定申告」を選んだほうがいいのはどんな人でしょうか。確定申告を選んだほうがいい人の特徴を確認してみましょう。
- 6つ以上の自治体に寄附した人
- 手続きを年1回にまとめて済ませたい人
- もともと確定申告が必要で、ふるさと納税の手続きも併せて行いたい人
前述のとおり、6つ以上の自治体に寄附した場合、ワンストップ特例制度は利用できません。また、ワンストップ特例制度の手続きは簡単ですが、自治体ごとに申請書を送る必要があるので、1度で手続きを済ませたい人は確定申告のほうが向いているでしょう。なお、ふるさと納税のほかにも確定申告が必要な人は、併せて行ったほうが手間はかかりません。
「ワンストップ特例制度」でふるさと納税の控除を受ける時の手順
ふるさと納税の控除に関する手続きをワンストップ特例制度で行う場合、どのような手順で進めればいいのでしょうか。以下に流れをまとめました2)。
①必要書類を揃える
まずはワンストップ特例制度の手続きに必要な書類を揃えます。必要な書類は以下のとおりです。
- 寄附金税額控除に係る申告特例申請書
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」は、寄附先の自治体から郵送で届くことが多いですが、自治体や総務省、ふるさと納税のウェブサイトなどからも入手できます。
②申請書に必要事項を記入する
「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入します。
③書類を各自治体に郵送する
「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」と本人確認書類の写しを、ふるさと納税の寄附をした各自治体に郵送します。寄附をした翌年の1月10日までに送らなければなりません。
その後、ふるさと納税をした翌年6月から翌々年5月までの住民税の一部が免除されます。
「確定申告」でふるさと納税の控除を受ける時の手順
ふるさと納税の控除に関する手続きを確定申告で行う場合、どのような手順で進めればいいのでしょうか。以下に流れをまとめました2)。
①必要書類を揃える
まずは確定申告に必要な書類を揃えます。必要な書類は以下のとおりです。
- 寄附先の自治体から届く「寄附金受領証明書」
- 対象期間(寄附をした年)の源泉徴収票
- 本人確認書類(マイナンバーカードなど)
- 還付金受け取り用の口座番号(本人名義に限る)
上記のうち、特に注意してほしいのが寄附金受領証明書です。すべての寄附について、自治体ごと証明書が届くので、失くさないよう大切に保管しましょう。そのほか、手続きに応じてこれ以外の書類が必要になるケースもあります。
②確定申告書を作成する
申請に必要な確定申告書を作成します。国税庁の確定申告特集のページにある「確定申告書等作成コーナー」から作成できます。
③確定申告書を提出する
確定申告書を作成し終えたら、2月16日から3月15日に申告書を含めた必要書類を提出します。提出方法は、前述の確定申告書等作成コーナーからそのままオンラインで送信できる「e-Tax」のほか、税務署への郵送、直接の持参という3つの方法があります。
提出された確定申告書を税務署が受領すると、1~2カ月後に所得税が還付され、その後、翌年度の6月から住民税の控除も行われます。
住宅ローン控除と併用する場合の注意点
ふるさと納税を利用する場合、「住宅ローン控除と併用はできるの?」「併用すると、経済的に損をする可能性はあるの?」と考える人もいるかもしれません。そこで、ここからはふるさと納税と住宅ローン控除について解説します。
なお、原則として、ふるさと納税と住宅ローン控除の併用は可能です。ただし、注意点があるため確認しておきましょう。
「住宅ローン控除」とは
住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用した個人が、主に所得税の控除を受けられる措置です。2022年の改正で控除率と控除期間がつぎのように変更となりました6)。
〈表〉住宅ローン控除について
2021年以前の 住宅ローン控除 | 2022年以降の 住宅ローン控除 | |
---|---|---|
控除率 | 1% | 0.7% |
控除期間 | 10年間 (特例措置で13年間) | 13年間 (既存住宅および 増改築は10年間) |
従来よりも控除率は下がりましたが、控除期間が最長13年間に延びたため、住宅ローンを利用する人にとって恩恵が大きいといえるでしょう。
前述したように、ふるさと納税と住宅ローン控除は併用することができます。ただし、一点注意が必要です。詳しくは後述します。
「ワンストップ特例制度」と併用する場合は?
ワンストップ特例制度を利用する場合は、ふるさと納税と住宅ローン控除を併用しても控除額が減る心配はありません。
ふるさと納税は、基本的に所得税の還付と住民税控除を受けられる制度ですが、ワンストップ特例制度を利用する場合は、所得税を考慮せず、ふるさと納税の控除対象が住民税のみとなります。
寄附金はふるさと納税をした翌年の住民税から減額されるかたちで控除され、所得税からは控除されません。したがって、所得税から引かれる住宅ローン控除への影響もないのです。
「確定申告」と併用する場合は?
確定申告する場合、ワンストップ特例制度とは異なり、ふるさと納税の寄附金は所得税と住民税の両方が控除対象になります6)。
所得税の計算では「ふるさと納税→住宅ローン」の順番で行われます。所得税の計算をする上では、ふるさと納税の寄附金の控除が優先されるため、ふるさと納税を利用することで所得税から引かれる控除が少なくなってしまうことがあります。
住宅ローン控除は、ふるさと納税の控除分を引いた所得税から控除金額を差し引きます。住宅ローン控除のうち、所得税から控除しきれない分は、住民税から控除されます。つまり、住民税の控除額上限を超過してしまうと、その超過分は切り捨てとなってしまうのです。
住民税の控除限度額を超えてしまった場合、トータルで見ると税金の負担額が増えてしまう可能性があります。住宅ローン控除を利用している人は、あらかじめ上限額のシミュレーションを行った上で、寄附金を決定しましょう。
ふるさと納税の手続きは年末調整ではなく「ワンストップ特例制度」か「確定申告」で
ふるさと納税をしたあと、税金の手続きをする際に年末調整を使う必要はありません。「確定申告」か「ワンストップ特例制度」のどちらかで行います。2つの方法それぞれの手続き内容や必要書類をチェックしてから、自分に合った方法を選ぶといいでしょう。